TRICK劇場版3 と、堤幸彦について | リュウセイグン

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映画サイトを観ていると堤幸彦監督作品というのは非常に貶されている印象がある。
まぁ近年の事に関して言えばそれはむべなるかなで、僕も殆ど見に行ってない。
彼はそれなりにはヒットメーカーではあるのだが、それはTVドラマの話で大作の映画監督に向いているかと言えば首を傾げる向きもある。

それでも『サイレン』なんか鄙びた島の感じとかオリジナルをスクリーンにして引っ掛ける辺り案外嫌いでもないんだけれどwww

秋元康の仕事仲間という経歴もあって、特に町山さん辺りからは忌み嫌われているのだけれど、これについても僕の見解は少しばかり違う。

まぁ取り敢えずは、TRICKの話だ。
映画だから多少大掛かりになっていたりはするけれども、TRICKは良くも悪くもいつもながらの雰囲気でした。
シリーズ自体がけっこうな話題作になった為か勘違いされる向きもあるが、TRICKの面白味はある意味どうでも良さとかしょうもなさにある(人それぞれにしても)
くだらないギャグ、怪しい村の雰囲気、しょうもないトリック……全作ほぼ全てを揃えている自分としてはそういう物に対して失笑するのがTRICK的な笑いだと思っている。
その質もシリーズで上下する部分はあって、劇場版3は最上でも無いが最下でもない……というところかな。

順番にすると

シリーズ2>シリーズ1>>>劇場版1>>>シリーズ3>スペシャル2>劇場版3>スペシャル1>劇場版2

こんなところか。
トリックはやや単純で、ペイズリーもそこまで面白くはなかった。
けど、やっぱマツケンが白馬に乗って走っていく所なんかはそのトリックのいい加減さと相まって吹いちゃうんだよなぁ。

双子の脱出トリックに関しては手首の描写を見落としてしまったのと、そういう使い方をするという頭がなかった。
ただ普通で有ればそれにしたって「誰もが思うやっちゃいけないトリック」なので怒っても致し方ないところではあるのですが、僕個人としては「お、このネタで来たか。懐かしいなぁ」みたいな感覚だった。

それはシリーズ1に於いて佐伯日菜子が双子トリックで出演していたから。

他にも話の筋は劇場版1に近いし、貞子ネタを振ってくるのは劇場版2、冒頭の妖術使いはシリーズ2の最後、フーディーニのエピソードが引用されるのもシリーズ1、ガッツイシマッチューはシリーズ3からと、今までの要素がふんだんに盛り込まれている。

更にはマツケンの動機をフーディーニに加えて福来&御船千鶴子の千里眼事件にも絡めてきたのは印象深い。
フーディーニは奈緒子の父親・山田剛三のモデルであり(つまり奈緒子からすればマツケンは父親の鏡像でもある)千里眼事件は『リング』のモデルだ。

そこへ山田の貞子ネタに、佐伯日菜子出演時の双子ネタとくればもうこれは確信犯だろう!

と言いたくなる訳だ。

更にマツケンが死ぬ時に妻の幻影を観た相手が山田里見で、これは里見が本当に霊能力を持っていたと解釈出来る描写であると同時に、マツケンは里見に亡き妻の幻影を見て、里見は亡き夫と酷似した男を最後に救ったという描写にも取れる。

また母の泉の「おかあさま」との因縁を明かすなど、ファンにはなかなか嬉しい部分も多かった。

が、コレはあくまでファンだからこそ反応出来る所で、他の人はある程度TRICKを知っていてもあまり意味が分からないはず。と言う訳で、大勢の人にはあまり向かないだろうって気がする。

そもそもTRICKなんてのは大作嗜好からはかけ離れた作品で、それが下手に話題作になってしまったもんだから勘違いされているような印象がある。

トリックがショボい?

そんなの昔からですよ!!!
いつもみたいに無駄に複雑と言うより、単純な物を使う傾向にあったから「よくもまぁ手間の掛かることを」みたいな部分もないのはちと残念だったかも。

ただこういう部分で批判されると「変な雰囲気のもんじゃ焼き専門店が有名になったから色んな人が高級料理店と思って訪れた挙げ句にダメ出しする」 みたいな悲しさがある。

ここは変なもんじゃ屋であってそれ以上じゃないんだよ!!
しっかり勉強してから出直してこい!

みたいな。
いや……局自体が大々的に宣伝してるからそう言われても仕方ないし、確かにシリーズ通してもそこまで出来は良くないんだけどさ。そこら辺が昔ながらのファンとしてはですね、色々思うんだな。




で、そこら辺に至って堤論に戻ろう。
この人はトレンディ系の首魁の一人と思われているが、実は全然それとは違うんじゃないかと思っている。

『ケイゾク』にしたって植田Pの「社内をビックリさせてやりたい」という要望を聞いて作ろうと思った作品で、ギャグを含みつつもかなりバイオレンスで暗い話だし、『TRICK』なんかキャスト・主題歌含め新人や旬を過ぎた人間が中心で注目作品としては扱って貰っていなかった。
また2002年W杯は『最強伝説黒沢』ばりのかなり厭な視点で見ていたようだ。

そして原作付きの作品を観ても分かるが、色々な物を「壊したい」という欲望も見え隠れする。
だからスペシャルで秋元康を出しても持ち上げる訳じゃなくて酷い扱いをするwww
またケイゾクでもTRICKでも、オチはかなり暗くてシビアな話が多い。他の作品もバイオレンス描写は結構ショッキングだったりするしね。

どうも堤監督の破壊願望みたいな物が過剰な演出として表現され、付随するギャグ・バイオレンスには(極論として)明確な意味が存在しないので、そこら辺が嫌がられる(または好かれる)一因なのかもしれない。

総括すると、TRICKとしても質はあまり高くなかったが、今までをちゃんと押さえている人には面白い部分も多い、と。ついでに堤さんには大作映画じゃなくて、初期のTRICKみたいなしょうもなくてパッとしない感じのTVドラマを作って頂きたいなぁと思うんですね。そっちのが向いているんじゃないかと。