『宇宙ショーへようこそ』 | リュウセイグン

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脇が甘いけど嫌いになれないスペオペロードムービー



遅くなりましたが『宇宙ショーへようこそ』の感想をば。
この映画は『サマーウォーズ』辺りと比較しながら考えると面白いんじゃないかと思います。
あっちのが真面目な作品ですし、やや高年齢向けに作ってあることも関係して一般的な評価は高そう。
でも個人的には良いところを認めつつも、引っ掛かるところの多い作品だったんですよね。

サマウォ感想記事

こっちは逆に脇の甘さが目立つのに、どこか嫌いになれない作品でした。
これはもう世界観レベルの話になってきます。
サマウォの世界観は現実世界の延長にあります。
もちろんSFっちゃSFなのですが比較的空想科学設定が押さえられている、言うなれば「ロウSF」です。
なのでそこにはリアリティが求められてきます。

一方、宇宙ショーにはスペオペの系譜を見ることが出来ます。
一番象徴的シーンは月に連れて行かれる部分で、月の裏側はなんか物凄いことになっています。
……が、どうしてこんな建物が建っているのか、何故人類から見付からないのか、全く説明はありません。

ここはこういう世界なんで、ひとつよろしく。

という感じで押し通します。
入港審査みたいなのもありますが、やっぱかなりいい加減で、それこそ子供でも答えられるような質問だけで終わり(その割に翻訳ツールとかはちゃんとあるww
つまりここらでフィクションレベルが設定されているんですね。
反物質の雲っていうのが何なのかよく分からないけど「兎に角危ない場所なんだな」で済む。
このいい加減さが物語のいい加減さを適度に押さえて目立たなくしている印象がありました。

また、登場人物の人間らしさ……というか、いい加減なダメ人間が居るのも大きいw
主人公のナツキはダメ人間だし、メンバーで一番宇宙に精通しているはずのポチも、普段はかなりしょうもない奴だという事が分かってきます。
こういう奴らが中心なので、行動がグダグダでも全然おかしくない!
むしろ必然とすら言えます。
つまり、作品のいい加減さが作中のいい加減さを減衰せしめている事によって、あまり違和感や厭な印象が薄くなっているんですね。

またテーマの簡素さもポイントかな。
ジュヴナイルの一面も持つこの作品では、テーマは子供向けに明確に描かれます。

一、自分のことは自分でやる
一、ひとりはみんなのために みんなはひとりのために


この一見して矛盾しそうな学級目標がテーマです。
それこそ言葉尻だけを捉えて矛盾してるじゃんというのは聊か短絡的で、
「人事を尽くして天命を待つ」というようなものです。

自分で出来ることは他人には頼らない。
でも一人だけじゃどうにもならないこともある。
だから一人で出来ることをした後はみんなで助け合う、みんなも一人にためにかくあるべし。

というのがその意味。
非常にシンプルな形で、しかも言葉として出てきてしまうので大人としてはやや無粋な印象もありますが、等身大に当て嵌められますし広い年齢層に訴求力を持つにはこれくらい分かり易くて良いかと思います。

サマウォは比較的リアリティのある世界観なのでアカウントと実際の職業が連結しているとか、数学オリンピック落ちのガキ他数十人がやろうと思えばパスワード解けちゃうとかお婆ちゃんが電話で応援した後、ひとまず事態が沈静してしまったり、天才の作ったプログラムに普通の女の子が普通に勝ててしまうのも気になってくるんですが、この作品では最初ッから整合性みたいなものをあまり重視していないのがよく分かるので気にならないwww(その割にはズガーンとか妙に細かい伏線あるんですけどね)


そしてサマウォが大家族をテーマにしている為に女性陣がナツキ(よく考えたら名前同じだ)以外活躍しなかったり、戻ってきたワビスケが空気になったり、武家の葬式なのにあんなことやっちゃって良いの? という疑問が浮かぶところを宇宙ショーではやっぱり始めッからバーンと結論を出してしまうので、「なるほどね~」と流せる強みがあります。

そんな訳でサマウォよりも好印象だった宇宙ショーなんですけれども、やはりツッコミたい部分はある。
ズガーンの効能が明確にされないうちにベヒモスが出て来ちゃったり、ペットスターの伏線が薄かったり、ポチとネッポの確執の原因があまりハッキリしないまま戦い、その最中に語り出したりするところですね。

で、そういう曖昧だった部分をかなり台詞で説明するので「ふ~ん、そっか」という感慨しか浮かばないところ。

特に二人がガンダムの最終回みたいに説教しながら斬り合うところは、なんか言葉が上滑りしている印象が強くなってしまいました。

逆にポチとナツキがアマネとの喧嘩の原因について語ってるところ辺りは言葉に実感が出てて良かったし、「わたしはヒーローじゃないけど、このままじゃ帰れないよ!」っていうのもやや唐突な感はあったものの好きなシーンです。

作画も良くて、宇宙の色んな現象や生き物やギミックがゴチャゴチャ動くという楽しさは「SFは絵だねぇ」と語った故・野田大元帥 も満足させられるんじゃないかと。
「SFは絵だねぇ」ってのは字義通りの意味と言うよりも、SF的発想から描かれる壮大な景色や物語をいっているのでしょうが、そういう意味からでも合格点はあげられるかと思います。


内容はユルいですが、見ていて楽しくなる作品です。
子供からお年寄りまで勧められますね。