名作の前に、我々はただ黙して座るのみ
とまぁ分別くさい事を言いましたが勿論語ります。
『トイ・ストーリー3』
もうね、確か去年辺りに設定聞いた時から「これは来るな」という感じでした。
当初シリーズ自体も嫌いじゃなかったんですけど、正直今更みたいな気持ちもあったんです。
設定聞くまではね。
「アンディが大人になってしまう」
もうコレですよ! コレ聞いただけで
「この作品は傑作のニオイがプンプンするぜぇ~~~ッ!!!!」
って感じですよ。
こういう作品って、「終わらない時間」を描こうと思えば出来るんですよね。
それを敢えて終わらせてきた! もうその時点で期待度MAXになってました。
そして正しく傑作というべきでした。
いつもながらピクサーはギミックの使い方が非常に優れている(この辺りのセンスは短編作品を観ると凄く分かる)ので、そういう盤石さもあるんですが、今回はやっぱりテーマがねぇ……。
冒頭の楽しいシーンと、直後の現在と、そして悲しい誤解と。
この時点で結構来る物がありましたね、はい。
中盤はシリアスながらもいつものノリ。
でも全体的に笑い入れながらも重いし、おもちゃだから笑ってみられるだけで、かなり残酷な部分も多い。
ロッツォやビッグベビーの過去も、単に捨てられたって見方だけじゃなくて、愛する人から「必要とされなかった人」「代わりが効く人」とされることで、自身の存在意義が無くなってしまう体験です。
これは何もおもちゃだけの話じゃなくて、人間にしてみても凄く悲しくて共感出来る部分。
多分ロッツォの場合は、本当のところ女の子が無くしちゃったのを酷く悲しんでたから代わりを買って貰えたってだけで、戻ってきたらきたで喜んで貰えた気がするんですけどね。
やっぱり新しいけど同じ商品って、持ち主にしてみたって何処か違うもんですから。
で、ここからはロッツォに結構厳しい話になったりもする。
ウッディが「代わりが居たのはお前だけだ」と突き放されて、ビッグベビーは反逆する。
『カールじいさん』の敵役も可哀想な人で、EDに救済措置入れてあげれば良かったんじゃないか……って書いて、『トイ・ストーリー3』のロッツォも似た傾向にはあるんですけど、でもロッツォの場合は仕方なかったかな。
ロッツォは結局自分から持ち主の愛情を否定してしまい、その結果ビッグベビーの怒りを買う。
また、一度はウッディに助けられて、今度は自分がみんなを助ける番になっても、裏切ってしまう。
悲しい過去があるのは仕方ない。でも、だからって今の悪行の言い訳にはならない。
ウッディなんかは「あんな奴、追い掛ける価値もない」みたいな事を言います。
そういうちょっと毅然とした部分があったのも面白かったかなぁ。
ロッツォにしても死んじゃうとかじゃないですしね。
ある意味愛されてるし、仲間も居るwww
そして一番のキモは終盤ですね!
ここまでで
「泣けるって意味では序盤の悲しさのが強かったかなぁ、溶鉱炉のシーンも誰が助けてくれるか読めたからなぁ」
なんて思っていた俺もありました……
アンディ!
今回の裏主役はアンディですよ!!!
冒頭で親におもちゃを「ガラクタだよ」と言ったアンディ。
実は強がりだったことが、屋根裏にしまおうとする行動から見え隠れしています。
でもみんな帰ってきたとして遊んで貰えない事には変わりないし、結局どうするのか。
ここでもウッディが漢を魅せる!
ウッディのメモを見たことで、ボニーに譲る事を決意したアンディ。
ボニーに対して、おもちゃを一つ一つ取り出しながら物語るシーンが冒頭の想い出を思い起こさせます。
アンディの中に、やっぱり彼らは残ってるんですね。
や、ヤバイ……ちょっと来るわコレ……
そう思っているうちに、
大切にするって約束してくれるかな?
僕の……宝物なんだ
ちくしょう……きた、キタコレ!! 冒頭との対比!
狡い、この台詞は狡いぞ!!!
はい、ここで一度負けました。3Dメガネに涙が溜まるわ……。
そして直後にはもっと大きいのが一発。
箱の底にはウッディが居た。
ウッディだけは引っ越し先に持っていくつもりだったのに、何故……
前のシーンでのカメラワークも、まるでウッディが引っ越し先に行くことを匂わせる使い方(段ボールの取っ手口から見ているような構図がある)をしていて、引っ掛けになっています。この時点では「ひょっとしたら引っ越しの荷物に隠れようとして遅れたのかな?」と思えなくもない。
でも、ウッディを見詰めたあと、アンディはボニーに言います。
ウッディは賢くて、優しくて、勇敢で…………
でも、彼の一番凄いのはね
決して仲間を見捨てないことなんだ
ア、アカン、もう駄目や……もう駄目やーーーっ!!!!!
これが泣かずにいられるかぁ!
3Dメガネなんだか水中ゴーグルなんだかわからんようになってもうた……
つーか、今書きながらでも思い出し泣きが出来るよ俺!!!
今まで迷いつつもずっと仲間を大切にして、救ってきたウッディ。
今回も保育園からみんなを助けた。でも、それだけじゃない。
自分一人だけがアンディについていって、仲間を置き去りにすること自体が出来なかった。
そして、アンディはウッディ自身が意志を持って勝手に動くことなんて知らないのに、彼自身との会話はいつも一方通行だった筈なのに、それでもウッディの全てを知っていた。
空想の中が現実と繋がっていた。
もうホント今まで書いて、まだまだ魅力は沢山あるけど、このシーン、この台詞がある限りこれ以上は余計な気がする。
素晴らしい。
ただそれだけ。