『インセプション』 | リュウセイグン

リュウセイグン

なんか色々趣味について書いています。

長文多し。

頭の中で大冒険


ノーランらしい外連味溢れる超大作


『インセプション』はなかなか面白いのですが、同時にややこしい作品でもあります。
それは物語の構造が入り組んでいて、人間関係も(一部)入り組んでいて、設定が色々あって、そこら辺が結構台詞で説明されていたりするからなんですね。パンフとか読みながら考えていけば案外分かり易いんですが、作品一回観るだけだと理解するのは骨かもしれません。

主題は比較的よくある「胡蝶の夢」テーマ。
ただ、ノ-ランが面白いのは普通は「夢か現実か」という二択である問題を入れ子構造にしてしまったこと。
二択なのは変わらないっちゃ変わらないんだけど、それが物語的なギミックとして働いているところはさすが。

ノーランの学生時代の作品に『DOODLEBUG』 ってのがあるんですが、それを思い出しました。
(わたなべりんたろうさんも同じ事言ってて少し嬉しい)

映画を観ながら、この多層構造を分かり易くする為にレイヤーと名付けることにしました。
現実世界がレイヤー0、夢の世界がレイヤー1、夢の中の夢がレイヤー2、夢の中の夢の中の夢がレイヤー3……という感じ。
ちなみに山本弘さんの『アイの物語』を参考にしていますw

多層構造が映画を盛り上げるギミックとして働いているのはおもに二つ。
零に近い上位レイヤーの「夢を見ている主体」の状態変化がそのまま夢そのものに影響を与える事。
だからレイヤー1の夢を見ている人の体が傾くと、レイヤー2では重量が変化するwww
考えようによっては結構マヌケなんだけど、こういう発想大好きなんですよね。

もう一つのキモがレイヤー0の5分がレイヤー1の一時間に該当するというもの。
同じ比率で上がっていくかは覚えていないけど、どんどん早くなっていくことは確かです。

この二つで上位下位レイヤーを連結させてただの舞台設定で終わらせていない。

あと「キック」ってのを難しく考えすぎてたんだけど、どうやら単純に夢から元に戻る(上位レイヤーに帰還する)キッカケ全般でよかったみたいだ。

話としては犯罪モノに近いのかな。
名うてのプロを集めて完全犯罪をしてやるぞ、という。
ただメッチャトラブル多いwww
しかもその原因の大半は主人公・コブ(ディカプリオ)のせいというwwww
コイツ居ない方が上手くいくんちゃうか……という訳でもないのがツボを押さえた作りです。

覚醒できないときに落ちる「虚無」って設定も今ひとつ理解しかねたが、どうやらレイヤー4(夢の中の夢の中の夢の中の夢)の事だと考えて良いみたい。
これを縦横無尽に生かした壮大な犯罪計画(でも実際は一人の人間にアイディアを植え付けるだけ)って対比も良い。

これまた終盤でノーランぽい価値転換場面があったり、最後も気になる終わり方(まぁ予想は出来ましたが)で、アクションの面白さ、世界観の独特さ、ヴィジュアルのヘンテコさと、色々楽しみどころが多い映画です。
また話が分かり難いので、見返すことで再発見も出来そう。

テーマやラストはちょいと普通っぽいけど、監督の個性と相まって良作になっているかと思います。