『キックアス』からの流れで、ちょうどいいから『TIGER&BUNNY』も書いちゃうぜ!
ここ数年、ハリウッドのヒーロー物も単なる子供向け作品から大人まで楽しめる作品になってきていた。
一方で日本だと特撮はまだしもアニメ界隈になるとちょっと「うーん」という感じで不完全燃焼な観が否めなかった。
そこに飛び込んでファイヤーエンブレムよろしく僕のモヤモヤを灰燼に帰してくれそうな作品が現れた。
それが
『TIGER&BUNNY』
だ。
ビックリするのがヒーローの体に実在企業のロゴが入ってる!
この作品を観てまずみんなが注目するのはここだろう。
ユーストリーム・ペプシネックス・カルビー・DMM・FMV・バンダイ・ソフトバンク・ドットアニメ
そして牛角www
こういう物語中に企業名を登場させたり商品を見せつける手法はプロダクト・プレイスメント
と呼ばれるが、この作品は厳密に言えばちょっと違う。
『ヒーローTV』というTV番組の中の協賛企業……という名目で登場しているからで、いわばメタ・プロダクト・プレイスメントとでも言うべき性質のものだ。
「この中ではTV番組としてやってるからスポンサーが必要なんですよ」
という物語上の理由を立てて、堂々と現実の企業宣伝をしてしまおうという訳。
ここからもこの作品がメタ構造を意識していることが分かる。
『キックアス』もヒーロー作品が架空の娯楽作品として存在している前提で、それに憧れたヒーローというメタ要素を持っていたこととも繋がる。
近年に於いては、真っ当な意味でのヒーローものとは、ややキッチュになってしまったのかもしれない。
悲しいことでもあるが、同時にこういった作品を産み出す土壌として考えれば必ずしも悪くはない気もする。
そんな中で、主人公は鳴かず飛ばずのワイルドタイガー。
ヒーローとしてはベテランだが、直情径行で跳ねっ返りのためにヒーロー順位も人気も低く、スポンサーも撤退。
新しい所にお抱えになる。
モノレールのレールを壊して苦言を呈されたり、今までのスーツが良くないので変えろと強要されたり、現代社会のサラリーマン的な哀愁が漂って、なんだか凄く身につまされるようなキャラクターだ。
新しい相棒のバーナビーとの折り合いも悪そうで、足を引っ張るような状態。
しかし考えてもみれば、ヒーローとは本来社会とは相容れない物なのだ。
なぜなら、現代社会は超人の存在を前提としない構造を持っているから。
全ての人々に平等な権利があり、平等にルールが敷かれる。
これが基本的な民主主義国家。
もちろん資産の差などはあるけど、凄い人でも一定のルールには従うというのが建前。
ところが、ヒーローとは社会が対処出来ない状況でなければ存在し得ない。
社会が対処出来るなら、社会が対処すればいいんだから。
悪人が強すぎて捕まらないとか、
悪辣すぎて追い掛けられないとか、
事態が大きすぎて収束出来ないとか、
そういう事がなければヒーローなんて要らないんである。
また悪人を捕まえるにしても、現代社会を模した世界観に於いてはヒーローにその権限を持たせる場合は少ない。
社会が対処出来ないからとはいえ、ヒーローは勝手に悪人を捕まえ、時には裁いていることになる。
そう、ヒーローとは反社会性を内在しているものなのだ。
だから警察に追い掛けられたり、法的に抑制されているヒーローも居たりする。
翻って『TIGER&BUNNY』を観てみよう。
『ヒーローTV』に出演して、協賛企業名を載せて、ポイントを稼いで、人気取りして……
全っ然ヒーローらしくない。
スターやタレント、スポーツ選手ではあっても、これはヒーローではない。
また協賛企業がある、と言うことは金儲けをするという事でもある。
みんな、ではなく特定の人間が、だ。それは企業自体であり番組でありヒーロー自身もその範籌である可能性がある。
商売でやってる、
自分達の為にやってる、
喰う為にやってる。
それがこの作品でのヒーローの一面だ。
『TIGER&BUNNY』のヒーローたちは首輪に繋がれた、社会に捕らわれたヒーローなんである。
もちろんキャラクターとしてはみんな魅力的だし、今後の活躍には期待出来そうだ。
僕なんて早くもファイヤーエンブレム・ロックバイソン・折り紙サイクロンのファンになっちゃった。
けど、ヒーロー的なヒーローであるかどうかはまたちょっと別の話。
で。
一方、自分の思うままに行動しようとするワイルドタイガーは、その中では浮いている。
つまり彼は本来の純粋なヒーロー性を持ったままの男であり、それ故に『ヒーローTV』に上手く適合出来ないのだ。
これは第二話の内容からも分かる。
子供が犯人であろうとなかろうと「子供の危険」を第一に案じる。
自分の子供の発表会よりも人助けを優先させてしまう。
ネクストの少年に自省を促し得点にはならない自首をさせてしまう。
わざとピンチに陥ったふりをして少年の正しい行動、正しい力の使い方を促す。
これは全部利己主義では為し得ない行動だ。
そして彼がミスターレジェンドから教わった事でもあり、少年に伝えたことでもある。
ヒーローの魂は、受け継がれてこそ意味があるのだ。
以前、スパイダーマン2の記事
を書いた時に作中より引用した言葉がある。
子供達には、ヒーローが必要なの。
誰よりも勇敢で、自分を犠牲にしてまで、みんなのために手本になる人・・・
誰だってヒーローを愛してる。
人々は、その姿を見たがり、応援し、名前を呼び、そして何年も経った後で、語り継ぐでしょう。
『苦しくたってあきらめちゃいけない』と教えてくれたヒーローがいたことを。
誰の心の中にもヒーローがいるから正直に生きられる。
強くなれるし、気高くもなれる。そして最後には誇りを抱いて死ねる。
これがヒーローの生き様、ヒーローの存在意義だ。
ワイルドタイガーは、あの世界の中においても、この心を捨てていないヒーローなのだ(二話には『スパイダーマン』へのオマージュもある)
一話から面白かったものの、これを二話にして描いてくれた時点で、いよいよ期待は高まった。
バーナビーは、恐らく復讐心を抱いたヒーローで、その故に本名で行動していると思われる。
しかし『キック・アス』感想
でも書いたように、復讐者はヒーローではない。
きっとバーナビーはケンカしながらもワイルドタイガーに触発されて、
真のヒーローの何たるかを知っていくはずだ。
そう考えると、楽しみで毎週が待ち遠しくなっちゃうよ。