「光る君へ」第二回、絵師の描いた絵 | 奈良大好き主婦日記☕

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鎌倉在住
奈良や仏像が好きで子育て終了と共に学び直し大学院博士課程修了、研究員になりました。
テーマは平安後期仏教美術。

明日香村、山の辺の道等万葉集の故地が好きです。
ライブドアにも書いていました(はなこの仏像大好きブログ)http://naranouchi.blog.jp

 

第二回目の「光る君へ」、次なる波乱を予測させる展開になりましたね

 

第一回目の道兼の「行動」への衝撃がまだ残っていますが、今後の展開に期待したいと思っています

何しろ、平安時代を取り上げた意欲的な大河ドラマですから、大いに楽しみたいと思います

 

…とは言いつつ、

私は、現在二つの懸念点(というほどでもないけど)を感じています

一つ目は、(あくまでも個人的な意見なんですけど)紫式部と道長に恋愛感情が芽生えるのが、ちょっと嫌だなあと思ったりしています

それから、もう一つは、(こちらもあくまで個人的な感覚なんですけど)当時の一大史料である『小右記』を書いた藤原実資がロバート秋山っていうのが、今のところしっくりこないかなあ…

 

 

 

で、第二回ですが、時代は984年まで一気に飛びました

 

歴史的な背景なども書きたいのですが、

今回はそれはやめておいて

ちょっとだけ気づいたことを書いてみます

 

それは、ドラマの中の絵師と背景の絵です

 

 

 絵師・小遊三師匠

 

絵師↓

この親しみやすいオジサマ、どこかで見たことのある、ひょっとしてとてもよく知っているオジサマなのだけど、

果たして誰なのか?

さっぱりわかりませんでした

 

 

で、ドラマを見直してクレジットをみたところ、なんと小遊三師匠ではないですか!!

↓小遊三師匠

『笑点』でしか存じ上げなかったのですが、

自然な演技で、とても優しそうな絵師でしたね

 

この時代の絵師さんは、まだまだ身分が低い「工人」で、

「仏師」も同様に「工人」でした

しかし、仏師では康尚がちょうどこのころ「講師」という位をもらい、社会的地位が上昇したと考えられています

同様に、仏師以外の「工人」でも「講師」の位をもらったものがいるため、もしかすると小遊三師匠もまもなく講師になるかもしれませんね(?)

 

 

 

 背景の絵

 

ところで、絵師・小遊三師匠(ドラマと現実がごちゃごちゃだ)の背景をご覧になりましたか?

絵師だけあって、出来上がった絵がたくさん干してあります

絵師の背景には、何か「いかつい」仏像と、「ひらひらした」飛天のような像×2が見えます

 

 

 

↓お客さんの背後の黒い壁の向こう側には、男のふりをしてバイトするまひろちゃんがいます

ラブレターの代筆を引き受けています

 

お客さんの背中側の壁(絵師の背後に映った壁と向い合せと思われる)に貼ってあるのは、

↓こちらの2枚の絵

↑上は毘沙門天でしょうか、

下は絵師の背後にあったのと同じ「いかつい」仏像

 

 

このお客様は、それなりに身分が高いのか、「紙」を差し出して代筆してもらっています

 

↓わたしはくずし字が読めませんのでなんて書いてあるのかわからん…(誰か教えてください)

 

 

 

↓次のお客さんは、「かわらけ」を出した(当時、紙は高価だったということを暗に示しているのでしょうか)

 

 

↓そして、こちらのお客さんはポッチャリ「細工師」

彼は、紙でも「かわらけ」でもなく、木の板を持ってきた

 

彼の背景に貼られた絵

あれ?

一人目のお客さんの時と、貼ってある絵がちがいますよ

一人目の時に貼られていた毘沙門天は脇にずらされて、代わりに「ひらひらした」飛天みたいな像が貼られています

その下には「いかつい」仏像かな?

一人目から三人目までの間に、「ひらひらした」飛天が加えられ、毘沙門天が貼りなおされたようですよ

 

 

 

後日、ポッチャリ細工師が失恋報告をしに来ましたえーん

なんと、まひろが代筆した歌の内容が「別の女性との思い出を詠んだ」歌という疑惑で失恋したそうだ

(そもそも代筆の内容を確認しないのが悪いんだぞ)

 

↓で、傷心の彼はほっておいて、

その背景をみると、

なんと、毘沙門天と「ひらひら」飛天が入れ替わっている!

 

 

↓まひろちゃん、仕方なく、ポッチャリ細工師のために別の歌を詠む

 

 

チューリップオレンジチューリップピンクチューリップ紫チューリップ赤

 

↓ちょっと話が脱線しますが、こちらは素敵な紙(料紙)に歌を書こうとしている場面

当時、紙はとても貴重品だったそうです

(『源氏物語』は大量の紙を必要としたため、道長が紫式部に紙の供給をしました)

 

↓上の場面の書き手は、詮子

まるでお雛様のようだわ(吉田羊さんて、岩下志麻に似てると思った)

彼女は、のちに一条天皇(66代)となる懐仁親王の母ですが、

この場面は、自分に見向きもせずに別の女(小野宮流・頼忠の娘)遵子にべったりの円融天皇(64代)に手紙をしたためているところです(涙)

 

 

チューリップオレンジチューリップピンクチューリップ紫チューリップ赤

 

話を戻すと

またまた、2度目の失恋をして、駆け込んできたポッチャリ細工師(ドラえもんに似てる!)ですが、

ボーゼンとする彼の背景をみると、4枚の絵が貼ってあってあります

このうち、上二枚は以前と同じ絵のようです

(下二枚は見えません)

 

…とまあ、それだけの話なんですが、

時間の経過と、貼ってある絵の内容が、なんだかちょっとチグハグだなあと思いました(結局、ドラマに文句言ってるだけでした…汗)

 

 

 

 

絵師・小遊三師匠は、落書きもお上手でした

 

 

 

 

この落書きは、鳥獣戯画あたりから採ったのでしょうか?

 

 

 

 背景の絵の元絵

ところで、絵師さんの家の壁に貼ってあった「ひらひらした」飛天みたいな絵には、

元となった絵があることに気づかれましたか?

 

↓ポッチャリ細工師さんの肩越しに見えるこの絵です

 

 

↓この絵の元となった絵は、

正倉院御物「墨画仏像(麻布菩薩)」

髪の毛を塗りつぶしたかどうかの違いがありますが、そのほかは丸写しですねニコニコ

ドラマ制作にあたって、この絵が選ばれて、背景の絵の一枚になったんでしょうね

きっと、そのほかの絵も元の絵があると思いますよ

 

 

正倉院御物「墨画仏像(麻布菩薩)」の説明を貼っておきますね

(『御即位記念特別展 正倉院の世界』図録)」