「光る君へ」第十回ー寛和の変あれこれ | 奈良大好き主婦日記☕

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鎌倉在住
奈良や仏像が好きで子育て終了と共に学び直し大学院博士課程修了、研究員になりました。
テーマは平安後期仏教美術。

明日香村、山の辺の道等万葉集の故地が好きです。
ライブドアにも書いていました(はなこの仏像大好きブログ)http://naranouchi.blog.jp

 

今回は、待ちに待った(?) 寛和の変 でしたね

 

寛和の変は986年6月23日、ドラマの2回目からまだ1年半くらいしか経過していなくて、この先どうなるの? と思いますが

とりあえず、寛和の変終了(ほっとした)

 

 

 寛和の変

一般的に、寛和の変について詳しく書かれた史料として、まずはじめに挙げられるのが『大鏡』かと思います

 

そこで、『大鏡』に書かれた寛和の変の流れに沿って、適宜、他の史料も補って、ドラマの筋を見てみようかと思います

ここでは、『大鏡』の引用を青色の文字で、『大鏡』以外の史料は茶色の文字で入れてみます

(『大鏡』の現代語訳の画像を最後に載せます)

 

 

 

『大鏡』一条天皇

二三 若き天皇藤原道兼に伴われて、宮中を脱出する

この天皇について、感慨無量なことがあります。それはご退位あそばした夜の出来事で、その夜は、天皇が藤壺の上の御局の小さな出入口を通って外へお出ましになったところ、有明んの月がたいそう明るかったので、

 

 

「あまりあらわで具合がわるいなあ。さあどうしたものだろう」と仰せられたのを、

 

 

 

「だからといって、いまさら中止なさるべき理由もございません。退位の御しるしの神爾も宝剣もすでに皇太子の御方にお渡りになってしまいました以上は」と粟田殿(道兼公)がおせき立て申し上げなさいましたが、それは、まだ天皇がお出ましにならなかった前に、道兼公がご自分の手で神爾と宝剣とを取って皇太子の御方へお渡し申し上げてしまわれたので、天皇が宮中へ還御なさるなんてことは、とんでもないことだと思案して、申しあげなされたのだということです。

 

 

『大鏡』では、道兼が神爾宝剣をみずから皇太子の側に渡したと書いてありますが、

『扶桑略記』『百錬抄』『公卿補任』では、兼家次男の道綱によって凝華舎にうつされ、東宮懐仁親王に献上されたとされています

また、

慈円『愚管抄』では、

道兼・厳久の連携により花山の道心を誘い縫殿陣から大内裏を出たものの、事の急な進行にためらう花山に対して、神爾宝剣はすでに東宮方へ移されたことを通告したこと、

道隆・道綱神爾宝剣を東宮の凝花舎に運び

兼家が参内して宮門を閉ざし

道長関白頼忠の元に遣わして政変の成就を通告させた

という兼家と子たちの周到な運びを記しています

(ドラマはこれを再現してましたね)

 

道隆・道綱により皇太子の前に運ばれた神爾と宝剣

 

なにも知らずに寝ている皇太子(7歳)は一条天皇に践祚する

 
任務を終えた、道隆と道綱

 

 

兼家は内裏に参入して諸門を固め、譲国の儀(東宮に皇位を譲ること)を行いましたが、これは、譲位宣命のない異例の譲位だったそうです(『中右記』)

また、『昔物語』によれば、一条天皇の即位儀の当日、大極殿の高御座の中に得体のしれないものの血がついた生首が投げ込まれたそうですガーン

 

 

さて、『大鏡』に戻ります

『大鏡』

天皇は、澄み渡った月光を気が引けるようにおぼしめして躊躇していらっしゃるうちに、月の面にむら雲がかかって、少し暗くなっていきましたので、

 

『大鏡』

「これで、私の出家の望みは成就するのだなあ」と仰せられてお歩き出しなされましたが、そのときに、つねづね、破りすてもせず残しておいて、お目も離さぬほど繰り返しごらんになっていた弘徽殿の女御(忯子)のお手紙のことを思い出しになって「ちょっと待て」とおっしゃって、それを取りにおはいりになりましたが、

 

花山天皇「あっ 忯子の文を持ってまいるのを忘れた」

(花山天皇のこの女装で、頼朝の女装を思い出す人がいるかもしれませんが、頼朝の女装はそもそも義高の女装(史実 )からの悪ふざけですからね(わかる人だけ))

 

 

 

 

忯子の手紙を取りに戻ろうとした花山天皇に対して、

 

『大鏡』

そのときですよ、粟田殿が「どうしてこんな未練なお心になられたのだろうか、いまこの機会をおはずしになったら、ひょっとしてご出家のじゃまの出てまいるであろう」と、そら泣きをなさいましたのはー。

 

ドラマではちょっと違うニュアンスで、道兼があからさまなウソをついています

 

 

 

 

え、そこ?って感じの反応の花山天皇

「お前が文箱を開けたのか?」

 

 


 

 

『大鏡』

さて、道兼公は宮中の御門を通って東の方へと天皇をおつれ出し申し上げなされましたが、

 

ドラマでは、こんなシーンが展開した(なにこれ)

 

 

 

『大鏡』安倍晴明の家の前をお通過になると、

 

 

『大鏡』

晴明自身の声がして、手をぱんぱんと拍っている様子、

「天皇がご退位になると占われる天変があったが、もうすでにご退位が実現してしまったと見えるぞ。参内して奏上しよう。車の仕度をせよ」という声をお聞きあそばしたときの天皇のお心持ちは、いくらご自身のご意志によるご出家とは申せ、感無量におぼしめされたことでしょう。

 

 

 

 

『大鏡』

晴明が「とりあえず、式神一人、内裏へ参れ」と申しますと、目に見えないなにものかが、戸をおしあけて出てきましたが、天皇の御後姿を仰ぎ申しあげたのでしょうか。「当の天皇がただいま門前をご通過なさっていらっしゃいます」と答えたとかいうことです。その晴明の家は、土御門通と町口通の交叉する地点にありますから、たしかに天皇ご退出の御道筋に当たっていたわけです。

 

 

午前二時過ぎの話ですが、

ドラマでは、晴明だけでなく、まひろも牛車の音に気づきましたね

 

さて、大鏡は次の章に写ります

花山寺での剃髪のシーンです

 

『大鏡』

二四 天皇、花山寺で、道兼らの謀略と知って慟哭する

 

目的地の花山寺にお着きになりまして、天皇がご剃髪なさいましたが、

 

 

 

『大鏡』

その後にはじめて粟田殿は、「退出いたしまして、父の大臣にも出家前の姿をもう一度見せ、天皇のご出家のお供をいたします事情を告げまして、きっと戻ってまいります」と申しあげなさって、家へ帰ったので、

 

『大鏡』では、道兼は理由をつけて剃髪しませんでしたが、

 

ドラマでのミチカネはもっと非情だった

 

ミチカネ「私は これにて失礼いたします」

 

ミチカネの非情な表情!

 

なんだか色っぽく撮れてしまったあせる花山天皇

「おい…待て 道兼!」

 

ミチカネ「おそばに お仕えできて 楽しゅうございました」

 

花山「お前は朕をたばかったのか!」

 

 

『大鏡』

天皇は、「さては私をだましたのであったなあ」とおっしゃってはお泣きになりました。なんともおいたわしいことでしたよ。これはつねづね、粟田殿が天皇ご出家の節は私も剃髪し、お弟子としてお仕えいたしましょうとお約束して、うまくおだまし申しなされたのだとかいいますが、なんとまあおそろしいことですよ。

 

 

花山「おい…待て!道兼!」

 

「おい 裏切り者!」

 

「道兼!戻ってこい!道兼!」

 

いやもう、花山天皇の顔芸がすごくて…

 

 

『大鏡』

父の東三条殿兼家公は、ひょっとしてわが子が剃髪する破目になりはしないかと、気づかった結果、ちゃんとした思慮分別ある人々や、誰それという武力のすぐれた源氏の武者たちを御警護としてそえられたのでした。(後略)

 

 

兼家「ハハハハハハハハ!」

平安京全体にかぶさる兼家の顔と高笑い

 

ここから、兼家の時代が始まりますね

 

なんだコノヤローな兼家ですが、彼もまた苦労をしてきた過去があるので、

このくらいの高笑いは仕方ないのかもね
 

このあと、義懐も頭を丸め、

まひろの父為時は再び冷や飯食いになるわけです

 

(『大鏡』は、京都の紫野にある雲林院(うりんいん)の菩提講に参詣した、大宅世継(おおやけのよつぎ)(109歳)が、昔なじみの夏山繁樹(なつやまのしげき)(180歳)と菩提講に集まった善男善女の前で昔話をする形で、藤原道長の栄華を語った史料です)


 

明子登場

 

ところで、ほんの一瞬でしたが、このあと道長と結婚する明子が出てきました

 

とてもきれいな方でしたね

 

 

倫子ちゃんと明子さんの結婚はどちらが先か諸説あるようですが、

2人の結婚は明暗分かれたみたいですね

 

どちらも源氏の血をひいています

(以前の記事に載せた系図です)

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まひろもついでに結婚しちゃえばよかったじゃん?

もうこの展開には、オバサンはついていけません

(せめてプラトニックにしておいてほしかったな…だって、倫子ちゃんのサロンにもう通えなくなっちゃうじゃん?)

 

 

 

 

音譜おまけ音譜

 

今回は、番組最後で平野神社がでてきましたが

 

 

 

ついこの前、北野天満宮に梅を見に行った時に私も行きました

 

桜は当然まだでしたが

 

水仙の花がきれいに咲いていて

大きなクスノキが印象的でした

 

参考資料

勝倉壽一「大鏡における花山院紀の位相」『福島大学教育学部論集第73号』2002年12月

倉本一宏『紫式部と藤原道長』講談社現代新書、2023年

保坂弘司『大鏡 全現代語訳』講談社学術文庫

 

 

 

『大鏡』現代語訳

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