∞イケメン・ジョニーはスーパースター? #34 | ワールズエンド・ツアー

ワールズエンド・ツアー

田中ビリー、完全自作自演。

完全自作、アンチダウンロード主義の劇場型ブログ。
ロックンロールと放浪の旅、ロマンとリアルの発火点、
マシンガンをぶっ放せ!!

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「ジョニーと晩夏のブギーとウギー。」


「よう、バカバンドっ!」
 タクシーを降りるなり彼女はそう言った、ひと月以上ぶりの再会だが変わらずの辛辣なる挨拶であった。
 まどか嬢。
 彼女はジョニー率いるパンク・バンド、ザ・シガレッツのマネージャーであり、新興インディー・レーベル「ジョーカー・レコード」の社長秘書でもある。そして、進行形か過去形か、ジョニーの恋人でもあるらしい。
 美貌の辣腕マネージャーを自称する彼女だが、まだ実績らしい実績はない。戦歴としては酔ってライブ会場で暴れ、有望バンドとの契約を台無しにしたことくらいである。

「うわ、超イナカじゃん」
 颯爽と降り立ち即座に言い放つ。
 確かに田舎だった、見渡す周囲は田畑のみ、夏に育った稲穂たちが緑色に風に輝く、そしてイベント会場にもヒトらしいヒトはいない。村の納涼花火大会のゲストとして無名のパンク・バンドをブッキングするという無謀さ。まどか嬢の手腕によるものだったが、当の本人には幾多のイベントのひとつに過ぎず、会場の規模や催しの内容まではチェックしきれていなかった。

「ね、ジョニーは? あんたたち、もうリハは済んだの?」
 横暴な王女さながら、腕を組んだまどか嬢はお迎えのふたりに言う。その姿はまるで主君とそれに仕える従者のようである。
「あ、ま、まどかさん……今日も美しくござりまして……」
 天野くんは妙な敬語でまどか嬢に挨拶した、彼はまどか嬢が苦手なあまり、太鼓持ちとして接することにしたお調子者である。
「おべんちゃらはいいから。ジョニーはなぜいないの?」
 そういえばジョニーの姿がない、村に着いてからと言うもの、どこかに消えてしまったきりだった。
「ジョニーは……ほら、あの森に……」
 ヒラサワくんは重々しく口を開く、彼が指す方向には鬱蒼と茂る森が見えた。
「は? ……なんで?」
「いや……まだカブトムシがいるかもって……」
「……ガキかよ。ったくもう……だいたい、あんたたちも止めなさいっての」
「止めても……きかないし……」
「ライブまでには帰ってきますよ……お腹も減るだろうし」
「ますますガキじゃん。つか、動物じゃん。あんたら、ちゃんと躾けなさいよ」
 むちゃくちゃ言うなぁ、天野くんは思う。
 カブトムシ……花火大会の余興……演台は盆踊りの提灯がついたまま……どんなパンクなんだ……ヒラサワくんは思う。

「おーい!」
 遠くから聞き慣れた声が銃弾のように飛んでくる、Tシャツにハーフパンツ、金髪の青年が駆けてくる、彼の背後には村に住む子供たちがついてくる。
 皆、笑顔だった。それを見た誰もが少年期のノスタルジーに浸れそうなほどに美しい光景だった。

 まどか嬢らのもとに走り寄ってきたジョニーは開口一番、こう言った。
「採れたよ、カブトムシ」
「……そうか」
「良かったな、ジョニー……」
 その瞬間だった、ミニスカートを気にもせず、細く長い脚を振り上げた、ヒールを履いた踵がジョニーの後頭部に炸裂する。
 かかと落とし。まどか嬢の必殺技がクリーンヒットし、ジョニーは3カウントを取られあとも地に伏し痙攣していた。
 ノックアウトである。


<ロックンロールはつづく>

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前回までも失笑ロックンロール

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the sunshine underground/〝after life〟

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#3
#4

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あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)

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あの人への想いに綴るうた

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