子どもが影響を受ける離婚をめぐる調停や審判などの司法手続きで、弁護士が子どもの意見表明を援助する「子どもの手続(てつづき)代理人」。2013年の制度施行後、裁判官が代理人を選任した子どもの数が346人にとどまることが、最高裁判所の調査でわかった。離婚後も共同親権を認める法改正で、子どもの人格の尊重が求められる中、制度の普及が鍵になりそうだ。
朝日新聞記者の取材を受けて、最高裁が過去の事例を調べた。制度が始まった13年は8人。徐々に増えて21年には70人に達したが、22年は51人に減少。最高裁によると、22年に家庭裁判所で受け付けた新規の面会交流調停だけでも1万2876件あり、「子どもの手続代理人」が選任された割合は1%にも満たない。親権者の指定・変更の審判や調停、離婚訴訟など「子どもの手続代理人」をつけられる家事事件全体ではさらに低くなる。今年は1月末時点で1人だという。
子どもの手続代理人制度は、家事事件手続法に定められ、13年1月に施行された。親権者や監護者をどちらにするか、別居親と面会交流するかどうかなど、未成年の子どもが影響を受ける司法手続きでは、父母とは別に子どもの代理人となる弁護士を手続代理人として、裁判官が選任できる。
代理人は、できるだけ子どもの本当の気持ちを聞き取り、子どもの意見を文書にまとめたり、子ども自身が意見を陳述する手助けをしたりする。子どもと面接ができる家裁の調査官よりも継続的に子どもに関わり、子どもの利害関係のために動けるという特徴がある。
ただ、制度は普及していない。制度に詳しい名古屋大学大学院の原田綾子教授(法社会学)によると、事件が複雑になる可能性や、代理人への費用負担が発生する懸念から、裁判官が選任に消極的な傾向があるという。
原田教授は、「今回の民法改正案には、親の責務として『子の人格の尊重』が改めて規定され、子どもの意見表明権を保障する必要性が高まった。司法関係者全体が、これまで以上に、子どもの司法参加を促す態勢の整備をしてほしい」と話している。(杉原里美)
面会交流支援では、「子どもの最善の利益」について、
子どもの意見は「尊重」しますが、
その(個人の感情や偏見などによって色づけられた)意見が、
子どもの「最善」であるのかを常に考えています。