新型コロナウイルス 医療の現状報告 | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

重症者数が500を超えたのは12月の頭の頃ですが、それ以降増加ペースは穏やかになり、

10日程度かけて554人というのが現在の重症者数です。

 

この推移をみる限り、今後2000人、3000人と増加する可能性は極めて低く、

しばらく低緯度地域への寒波の波及と共に順次南の地域に重症者が増える地域が出てくることでなだらかな上昇を続けるか、

もしくは本当に500-600程度をピークとして下落に転じるかのいずれかという印象です。

 

この冬に関しても、やはり日本では西欧諸国のような劇的な感染者死者の増加は起きないと考えてよさそうです。

アメリカでの1日の新型コロナ死者数は確認されているもので9日時点で3000人を超えており、

日本の実に100倍程度です。人口は3‐4倍程度ですから、いかに桁の違う状況が欧米では続いているかが分かります。

これだけの規模の死者が出ているということは当然、重症者数についても2桁は違うでしょう。

 

 

 

余談ですが、連日のマスコミ報道がボディブローのように効きつつあり、

報道に洗脳扇動された世論におもねる形でGoToなどの政策にも影響が及びそうな状況になってきました。

 

現実にはGoToトラベルは5000万人以上が利用して、感染者が400人台というのを先月末あたりのデータでぼんやりと記憶しています。

細かいところまで数字が正確かどうかは別として、その感染率は10万人に1人程度かそれ以下です。

感染者増加に影響が全くの皆無かと言われればそうではないものの、影響は極めて小さく、社会にとってはメリットの方が多い政策だということが明らかです。

しかし、メディアや世論に押され、分科会提言もGoTo停止に向かい、政権も支持率などを気にして悩みだしているのが現状でしょう。

GoToはそもそも旅行する利用者をサポートする政策ではなく、感染対策をきちんとしている観光業や飲食業界、さらにそこに関連する様々な業種を下支えするはずの政策ですから、

政府憎しとこの政策を目の敵にするマスコミは実際には観光業や飲食などに携わる多くの業種の人々を苦しめることになります。

 

とはいえ、私は経済や政策の専門家ではありません。

私が発信できる情報のうち、最もこのブログを読む方にとって有用な情報となるのはやはり現場の医療の状況だと思いますので、

ここからは12月12日現在の時点で私が収集している首都圏、関東圏、あとは札幌周辺の計10か所以上の情報から医療の状況をお伝えしたいと思います。

 

先に結論から言いますと、特に医療崩壊と呼ぶような状況はありません。

どこも救急受け入れも予定手術も行っています。

一時期、1か所の総合病院で院内に患者数名看護師数名のクラスターが発生し、救急や予定手術を停止するという情報が友人からもたらされましたが、この病院も結局数日後には稼働再開しました。

元々、近隣に総合病院が乱立している地域のため、全く地域医療への影響はなかったようです。

 

札幌周辺のいくつかの医療機関からの情報では、ここも1か所現在救急などを停止している総合病院があるようなのですが、

周辺の他の病院が受け皿となり、特に問題なく機能しているとのことです。

 

大都市では1か所や2か所総合病院内でのクラスター発生などにより、部分的に機能が縮小したとしても、

他の病院が受け皿となるのでマスコミのよく言う医療崩壊は起きません。

彼らが報道しているのは医療崩壊ではなく、一病院の一部所の診療停止というレベルのものがほとんどです。

 

医療ひっ迫が連日報道される大阪についても、数多の総合病院がひしめておりますから、

一部医療センターなどの一部機能が停止したとしても、それで医療崩壊と呼ぶべきではないと私は思います。

 

一方、旭川のような小都市で総合病院が複数診療を停止してしまうと地域内での影響は大きいです。

私は直接旭川の病院関係者の情報ソースはありませんが、大規模なクラスターが発生した旭川厚生ではホームページを見る限り、

緊急性を要する入院や予約の外来以外の受付は原則止めているようです。

 

ただし、旭川についても同じく主要総合病院である旭川赤十字病院では、

入院診療、外来診療通常通り、分娩中止、一部予定手術を延期、のみとあり、分娩以外は概ね通常稼働しています。

 

分娩を予定していたお母さんらの不安は痛いほどよくわかります。

しかし、他にも旭川には大病院として旭川医科大学病院があり、こちらも通常稼働していますので、

この状況でマスコミの言うような医療崩壊と言うのかというと、私は否定的です。

 

旭川赤十字でも予定手術も再開され、分娩も今後再開されるようです。

 

 

 

最も報道されている旭川や大阪が上記の状況であることから、現時点で日本全国で医療崩壊している地域はないと言えます。

 

「医療が崩壊しようというときに」というような言葉をよく耳にしますが、

一体何を根拠に「医療崩壊」と軽々しく言っているのだろうか、と私は思ってしまいます。

 

一方、先日、旭川赤十字病院でのクラスターのニュースの際にやや疑問に思ったことがあります。

先日の記事を読む限りで、濃厚接触としたスタッフをが自宅待機のため予定手術を延期とありました。

これに関して一体どの程度の期間の自宅待機を行っているのだろうか?と疑問になりました。

 

私の勤務する病院でも外来で検査を受けた患者がたまたま新型コロナ陽性だったため、

対応したスタッフを濃厚接触と判断し、PCR検査を受けるという事例は何度かありました。

この際、濃厚接触をした日をday1とすると、患者自身の陽性が判明したのがday2の夜でしたから、

濃厚接触したスタッフはday1、day2は普通にそのまま勤務しています。

 

day2の夜に患者が陽性だったということを聞いて、始めて「私接触しちゃった」ということが分かるのですね。

その後day3にそのスタッフはPCRを行うことになり、day4には結果が出ます。

day4の時点で結果が陰性で、且つ症状が何もなかったため、当院ではこのスタッフはday5から通常業務開始となりました。

 

つまり、このスタッフがこの騒動で職場に出られなかったのはday3と4の2日でした。

症状がない場合にはこの程度の離脱が一般的と思うのですが、そうであれば余程多くの人数が濃厚接触とならない限りは、

現場診療へ大きな影響はありません。

 

ただし、この自宅待機の期間は病院や保健所判断によって異なるため、この日数が長かったり、

PCRについても2回以上の陰性が必要となると、リタイア期間が2日から5日、7日と伸びることになるでしょう。

そうすると医療現場には大きな穴をあけることになります。

濃厚接触したスタッフが無症状でPCR陰性だった場合に、最短で復帰させるかどうかによって現場への影響が大きく変わってくることになります。

 

ここの所を慎重になりすぎると当然人員不足を招き、それこそ人為的に医療崩壊という状況に近づくことになります。

 

また、医療崩壊ついでにもう1点最近の報道で気になったことを挙げますが、手術に関するものです。

 

先日NHKのニュース7では重症者増という報道や旭川などでのクラスターによる医療ひっ迫報道に続けて、

全国での手術件数減少を報道しました。

 

見ている人のイメージはあたかも、医療がひっ迫されていて手術まで減っている、

必要な手術を受けられない、という印象になるような構成でした。

 

実際に手術件数が全国で減っているのはこれは歴然たる事実だと思います。

しかし、その原因のほぼ90%以上は、コロナ自粛による受診控え、検診控え、手術控えです。

医療崩壊によって手術が受けられなくなっているのではありません。

 

私の病院でも脳外科の手術は例年と比較して2-3割今年は少ないです。

しかし緊急手術はあまり減っていません。

減っているのは予定手術で、4-6月に外来受診が少なく、動脈瘤などの予定手術を行う病気があまり見つからなかったこと、

もしくは見つかっていたとしても患者さんのご希望で手術が延期されたことが理由です。

4月ー6月は特に入院して手術を受けるということ自体を不安がる人が多かったです。

そのため、また落ち着いた時期に手術をしましょうか、というようなことが待てる病気については頻繁にありました。

 

これらが手術が減少した主だった理由で、これはどこの病院の外科医も言っています。

不謹慎かもしれませんが、「コロナで手術も減ってしまって、暇だね」というのが多くの外科医の本音だったのです。

 

それを医療ひっ迫⇒手術数減少というように報道するのは、これは印象操作に他なりません。

自粛⇒手術数減少が概ね正しい構図です。

 

以前のブログにも書きましたが、この4-6月の自粛による受診控えは飲食店や観光業のみならず、

診療所や病院にも経営的な打撃を与えました。

これを機にクローズした診療所も実際に何件か私の地域でもあります。

 

医療崩壊を叫ぶ医師会によって自粛ムードが高まれば、

医師会の主な構成員である開業医のクリニックが苦しむという、これはまた滑稽でお粗末な話なのです。

 

感染対策こそ最大の経済対策、というのが現在の日本医師会長のスローガンのようですが、

これは感染対策(自粛)こそ経済対策という矛盾した誤ったメッセージとなってしまうので、非常によろしくないと私は思います。

 

そんなことよりもワクチン接種の道筋を迅速化する、

医療体制をより強靭かつフレキシブルにするという努力を真っ先にやってほしい。

 

ブログを読んでいただいてありがとうございます。

twitterでも少しずつblogより頻繁に発信していますが、文字制限があるので小出しにしています。

自粛論者、GoTo批判者には耐えず攻撃されておりますが、、、

 

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