完成度の高い作り笑いと、わかりやすいお愛想がオートで出るオカミであるが、どうにも苦手なお客様というのはいる。
私は「お取り皿女子」が苦手だ。
お取り皿女子は、男子:女子比率=8:2みたいな構成の飲み会に潜伏していることが多い。
年齢は20代後半から上限はない。
傾向として、マンダヒサコとイズミピンコを足して2で割らない雰囲気の女性が多いように思う。
刺身の盛り合わせや鍋料理など、取り分けのある料理が供された時、必要以上に取り皿や取り箸を要求するのが「お取り皿女子」だ。
マンダピンコは飲み物の残量にも敏感だ。
特に飲み放題ともなると、メンバーのグラスに目を走らせ、本人より先に「ちょっとおねえさん、こっちに生を3つとウーロン1つお願いしま~す」と注文することも多い。
一見気配りのできるもてなし上手のように見えるが、私はこのタイプが本当に苦手である。
何がイヤって、いちばんは、気配りの方向が身内にしか向いてないところであろう。
取り皿や取り箸というものは、必要な数は必ずスタッフが、テーブルにお持ちする。
少なくともうちの店ではそうである。
だがお取り皿女子は、とにかく無駄に皿を汚し、取替を要求する。そして取り分けをする際も、何膳もの取り箸を使うのだ。
それを洗うスタッフがいることには想像が及ばないらしい。
何回も呼びつけられるので、サービスのリズムを崩される所も頂けない。
居酒屋やレストランという場所は、その日その日でお客様のリズムがある。
女将やスタッフは、テーブルごとの会食の目的、食事の早さ、飲むペースなどを把握して、それを元にホールサービスを組み立てるのだ。
あのテーブルはお酒のペースが遅いから、先にカウンターのオーダーをお通して、こっちの若いお兄さんは接待でガチガチになってるから、飲み物はこちらから聞いてあげなきゃね、という風な具合である。
このリズムの主導権を取ることができれば、一人で30人前後まではざっくり切り盛りできる。
いや、ホールスタッフたるもの、できて当たり前なのである。
ところが件のお取り皿女子はそんなリズムは関係ない。
ホールスタッフより、かなりアレグロで飲料オーダーのペースを上げてくるのだ。
マンダピンコは声もよく通るタイプが多いので、聞こえなかったとも言えない。
オーバーペースでフルマラソンを走らされている宗兄弟のごとく、オカミの顔は歪まされる。
まぁ、怠慢オカミのただの愚痴でしかないのだが、せっかくの飲み会である。
女性たるもの、気配りせねばという気持ちもわからないではないが、気配りはプロのスタッフに任せて、お料理やお酒や仲間との会話を心から楽しんでほしい。
そして楽しんでいることを、笑顔や言葉で表現してあげてほしい。
男性というものは、嬉しそうに笑顔で食事を楽しんでいる女性を見るのが基本大好きだ。
取り皿に料理をわけてくれたり、飲み物に気遣ってくれるより、よっぽど嬉しい。
これは絶対だ。
取るより笑え。
そしてよく食べろ。
お店にとっても女性の笑顔はなによりの華なのである。
じゃぁ、オカミはどんな客が好きなのかと言われれば
「大勢で来て、客単価が高くて、すぐ帰るお客さん」
である。
華どころかミもフタもない。