予感 | オカミのナカミ

オカミのナカミ

気の利いたぽんこつです。メルシー。

ヤバイ。
ヤバイことが起きてしまった。



今のマンションに住んでちょうど20年。
数年前からいろんな箇所がこわれているのは知っていた。
知ってはいたのだが、まぁ命に関わることでもないからと、のべ十数件もの案件を数年放置していたら、その中でも不具合ランキング最下位の「トイレのドアいちばん下蝶番」が昨日、満を持してトップランキングに躍り出てきたのである。
事象自体はしごく簡単で、トイレのドアを開けたら蝶番が外れ、ドアがオカミに倒れ掛かってきたのだ。



うぉぉぉぉぉ!!と、とっさに叫ぶオカミ。
(うぉぉぉぉなんて叫ぶのはラオウか聖闘士星矢ぐらい)
しかし舐めてもらっては困る。
宴会で一度に18本の瓶ビールを運んだ記録を持っているオカミ。
10kgの米袋をエルメスのバーキンのように腕に2個がけし、スマートに電話をかけることもできる。
ドア一枚に襲いかかられたぐらいで、たちすくんでいる私ではないのだ。



とっさに腰を落とし、両肩を内側にいれ、ピーカブースタイルを取る。
重心を足の親指に移動し、襲いかかってきたドアに右肩から体当たりをくらわせるオカミ。
デンプシーロールを発動するべき千載一遇の機会に、体当たりしかできなかったのは不本意だが、倒れてきたドアはゴンッ!バリッ!!という音とともに見事トイレ横の壁にはじき返された。




むろんオカミ、超無傷。




これも日々のオーナーとの闘いで培われた反射神経の賜物であろう。
ちょっと誇らしげな気分になったものの、ドアを跳ね飛ばしたときの「バリッ!」という音が気になり、壁に無残に打ちすえられているドアの裏をのぞいてみると、オカミが体当たりしたときの衝撃でドアノブが壁にめりこみ、大きな穴があいていた。




直径15センチくらいはあるだろうか。
これがいわゆる、災害時における人的パニックによる二次災害かと感慨にふけるも、次第に冷静になってくると、この巨大な穴の出現をどうやってオーナーに説明したものかと、変な汗がにじみ出てくる。
万歩譲って、トイレのドアが外れた件は理解してもらえるかもしれないがらさすがにこの穴は無理だろう。
まさか、倒れてきたドアにデンプシーロールを試みた結果穴があきましたなど、言えるわけがない。





オーナーはあと30分もしないうちに帰宅するだろう。
残された時間でドアを取りつけ、壁の穴を補修するのはさすがのオカミにも至難の業である。
そうはいってもなんとかして、オーナーに怒られるのを最小限に食い止めたい。
今のままでは「ドア」+「穴」で計2件のおとがめをくらってしまう。
心の秒針がチッチと時を刻む中、閃いたオカミは、A4のコピー用紙にマジックで大きく「トイレドア故障中」と殴り書き、その紙で穴をふさぐと、めくられないようにガムテープで四方をぐるりと貼り付けた。




なんたる機転。
すばらしきかなアタシ。
これで当座のところ、ドアの故障のみの説明に注力できるというものだ。
本家のドアがなおったところで、実は周辺にも不具合が見つかりましたという営繕業界お決まりのパターンで、穴の存在を告知するのもどうよ。
今夜の私は冴えている。




自分の対応に悦にいっていたら、帰ってきたオーナー。
早速トイレのドアの見事な外れっぷりに目を丸くしている。
いいぞ、その調子。
そのままドアに引き付けられるがよい。
顔では神妙な表情をつくりながら、腹の中ではほくそえみつつ、一連の事情を説明しようと口を開いた時だ。
オーナーがふりむき、貼り紙を指さした。




「おまえなあ、なんで見たらわかることを、わざわざ書いて貼るんかいの。しかもサラ(新品)のコピー用紙つこて、ガムテープもこんなもったいない使い方しやがって。ワシ、こういう意味のないことにモノ使うヤツがホンマ嫌いなんじゃーや。貼り紙する前に、蝶番買うてくるとか、業者に電話するとか、やること他にもあるじゃろうが!!」





吐き捨てるようにオカミを叱責したあと、貼り紙のガムテープをはがしだすオーナー。





「ドア」+「穴」+「貼り紙」という怒号のミルフィーユに向けて、事態は最悪の展開か。




絶体絶命の予感。







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