「すべし」とするべきなのか「するべし」とするべきなのか(発表・面接のための日本語No.10) | Prof_Hiroyukiの語学・検定・歴史談義

Prof_Hiroyukiの語学・検定・歴史談義

・歴史旅行記や言葉(日本語・フランス語・ドイツ語など)へのこだわりや検定・歴史散策などの実践録を書き綴ろうと考えています!    
                      
<本記事を引用された場合、その旨を御連絡頂けると有り難いです。>

10/28「れ入れ言葉」と「可能動詞」(No.9)http://ameblo.jp/prof-hiroyuki/entry-10680465609.html 以来、実に1か月半ぶりの「発表・面接のための日本語」です。


「~すべき・・・」という文言をTVニュースで耳にいたします。耳にするばかりではなく、省庁からの通達のなかにも「すべき」などという表現が有ったりもするのです。


これは「すべき」ではなくて「するべき」ではないか?・・・この疑問について言及いたします。


(1)ここでの「べき」は助動詞「べし」の連体形。そして「べし」は終止形接続。

現代日本語文法において、助動詞「べし」は終止形接続。そして、動詞「する」は日本語では2つしかない不規則動詞の1つでした。

※これに関しましては「ロマンス語の規則動詞とは何か,イタリア語編」http://ameblo.jp/prof-hiroyuki/entry-10591700945.html も是非御参照下さい。

現代語「する」の活用は次の通り:

未然 せ/し

連用 し

終止 する

連体 する

仮定 すれ

命令 せよ/しろ


これから分かります様に、現代語の文法上は「するべし」と「するべき」ものなのです。


(2)それでは、「すべし」はどこから?

古語・文語体においても助動詞「べし」は原則として終止形接続でした。

ここで「原則として」と申しますのは、ラ行変格活用の「有り」だけは連体形接続(有る-べし)となるからです。


・・・それは本論とは関係が有りませんので、ここでは動詞「す」の活用のみを列挙いたします:


未然 せ

連用 し

終止 す

連体 する

已然 すれ

命令 せよ


これから分かります様に、古語・文語体では「すべし」が正しかったのです。


(3)それならば、「すべし」は現代では誤りなのか?

いえ、誤りとまでは言えません。現代文においても、「古めかしい表現」を用いて強調などの効果を持たせる事は頻りです。但し、前後の言葉遣いとのバランスは必要でしょう

いかにも現代風の文章中で「~すべき・・・」というのは、場合によっては滑稽です。


そういう意味では、文語調である必要のない口頭発表・プレゼンテーションでは「~すべき・・・」ではなく「~するべき・・・」が妥当です。

もちろん、演説や抗議ならば口頭でも「すべき」の方が妥当というよりも「効果的」かもしれません。