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通信機能から見たNGPと3DS (2)


両者のコンセプトが全く異なっているため、成功するための必要条件もまた異なる。


【NGP】
NGPの通信が真価を発揮できるかどうかは、主に、WIFIと3Gをシームレスな接続が実現できるかどうかによる。

通信の点では、NGPは自身をネットワークの一端末と位置づけているため、ネットワークとスムーズな接続がないと十分に機能しない。しかしネットワークに接続することさえできれば、プレイを時間と場所の制約から解き放ち、真の意味でモバイルなゲーミング環境を提供することができる。

これは、PCがモバイル化し、更にモバイルとして機能が洗練されたスマホに進化していったのと全く同じ構図だ。ネットワークへのスムーズな接続を実現できさえすれば、成功は半ば保障されている。
ただしスムーズな接続とは、単に切替が煩雑でないということだけを意味しない。より幅広い工夫とサービスが必要だ。整理すると、条件は以下のようなものになるのではないか。

・回線が広いカバーエリアをもつこと
・回線が広く、レイテンシを低く抑えられる高品質なものであること
・回線のコストが安いこと
・ユーザの負担が分かりやすく、納得できるものであること
・WIFI・3Gの切替が煩雑でないこと。可能であれば自動切換えが望ましい

これらの点が解決できれば、NGPは、真の意味でモバイルな、正しく次世代の携帯機となるだろう。


【3DS】
3DSの通信が真価を発揮する上で、インフラはあまり重要ではない。非同期処理的な通信、人が実際にあつまった場所での機器同士の直接通信がメインとなり、ネットへの接続は重視されないためだ。(任天堂岩田氏が3Gを自社のマシンに搭載することにネガティブなのはその意味で当然かもしれない)

3DSにとって何よりも重要なのは、通信をつかってワクワク感を演出するための工夫である。例えば、ドラクエ9での宝の地図のように、これまでいくつかの優れたアイディアがあったが、そのような工夫が求められる。
技術でもインフラでもなく、アイディアと演出が命であるところがいかにも任天堂らしい。

この機能をうまく使ったものではポケモン、トモコレレベルの大ヒットも出ている一方、そういった成功例が少ないことから、簡単には面白いものができないということも、また言えるかもしれない。
過去、WiiのFit、DSのペン等の例を挙げるまでもなく、このようなアイディアが求められる領域は、任天堂の独壇場になってきた。任天堂ハードにおける3rdの不振は、度々指摘されてきた経緯もあるため、この点をどのように解決していくかは大変重要だ。また、3rdが優れたアイディアをどれだけ持ち込めるかが最重要なのは当然であるととしても、任天堂がどこまで3rdをサポートできるかも注目したい。

NGP・3DSともハードルは低くはないため、現時点ではどちらが成功するかを明言することは難しいが、この点をクリアすることが次世代を制するための重要な条件の一つとなるものと考える。前世代を任天堂が制した最大の理由は、コンテクストという点で訴求力のある提案を行った、まさにその点にあったためだ。


そしてこの点の重要性は、今世代でも変わっていない。

通信機能から見たNGPと3DS (1)


現在メジャーな携帯ゲーム機は、いうまでもなくPSPとDSの2機だ。
絶対王者GBAの後を次いだDSと、その座を奪おうとする挑戦者PSPは、激しい競争を戦ってきた。
その後継機である、NGPと3DSが、ライバルだとみなされるのは無理もないことだ。

しかし実際には、この両機はコンセプトが大きく異なるため、単純な競合関係にはない。
これはSCE平井氏、任天堂岩田氏が共にコメントしている通りだ。
本ブログは、次世代機で最も重要な機能は通信にあると考えているが、例えばその通信機能にもコンセプトの違いが明確に現れている。

【NGP】
・ネットワークとの接続を前提とし、ネットと接続する端末との性格が色濃くく出ている
 (もともとPSN/PSN+があり、3G機能搭載で更に踏み込んだ)
・リアルタイム性を重視したConnectivity
・能動的な接続/プル型のコミュニケーション
・スマホ、PC、据え置き機に近い利用方法。オンライン/ネットワーク対戦が主なコンテンツ
・接続チャネルはネット経由。実店舗は基本的に利用しない。
・アプリケーションのDLやアップデートも接続を通じて行う
・主なターゲットとして、スマホ、PC、据え置き機の利用に親しんだ、比較的ITリテラシーの高い層を想定

【3DS】
・ネットワークとの接続ではなく、端末同士が直接通信しあう
・リアルタイム性を必要としない、非同期のConnectivity
・受動的な接続/プッシュ型のコミュニケーション
・すれ違い通信を通じた、しらない間になにか楽しいことが起こっている「楽しいおもちゃばこ」として利用
・接続チャネルとして実店舗(ゲームショップやマクドナルド等)を重視
・アプリケーションのDLやパッチは限定的なもの
  (DSiウェアや体験版。基本的にはネット接続を前提としておらず、パッチ/アプデも少ない)
・主なターゲットとして、子供や、スマホ、PC、ネットをあまり利用しない、ITリテラシーの低い層を想定


(細かく見れば、NGPがすれ違い通信やFaceブック的なコミュニケーションを実装していたり、PSPで最も重要な通信はアドパであったりする。また3DSもDSiウェアのDL販売は普通に行っていたりするし、現実にはそこまでに明確な線は引くことはできない。
またNGPのコンセプト=初のネット前提携帯ゲーム機というもの自体が未知の存在で、最終的な姿が固まっていないことも現実のあいまいさに拍車をかけている。あくまでコンセプトを比較すればこうなる、というものだと思っていただきたい)

EB浜村氏は、NGPはむしろスマホと競合するとコメントしているが、それは正しい認識だと思われる。
NGPと3DSには、外部との接続という課題に対するアプローチに大きな違いがある。NGPはIT機器としてネットワークとの関係をとらえ、3DSはおもちゃとしての立場からネットワークの活用を模索している。そしてスマホはNGPと同じアプローチであるためだ。
NGPは、通話ができず、更に3Gを経由したブラウジングすらできない可能性があり、本来スマホとは全く異なる存在であるにも係らず、外部との接続という一点で、スマホと同じコンセプトに立っている。

逆に3DSはNGPと同じ携帯ゲーム機であるものの、全く異なるアプローチをとっている。
3DSにとって外部との接続は、「おもちゃばこ」を楽しい盛り上げるスパイスのようなものだ。また3DSにとっては、ネットワークを通じたバーチャルな世界は重要ではない。重要なのは、あくまでも実際に集まれる場所と考えられている。専用端末を大金かけて配布したり、マクドナルドとの提携に力をいれたりしているのも、そのようなコンセプトによるのだろう。

予想の検証

NGP発表前にした予測を検証してみる。
予測/結果は以下。

可能性=高。
 ?通信料は無料/回線契約不要。全員が利用可能
    →情報なし
 ?テザリング、Skypeの利用不可。SIMは組み込みで交換不可。
    →情報なし
 △メモステmicroでソフト供給、UMDなし
    →ROMでの供給。UMDなし。但しメモステmicroではなかった
 ○PS1との互換性(アーカイブ配信)
    →あり。(PSPとの互換、PSsuiteがあるので、当然あるものと考えられる)

可能性=中。
 △PS2、PSPとの互換性(アーカイブ配信)
    →PSPとは上位互換あり。PS2は情報なし。
 ○マイク有り、ボイチャ可
    →マイクあり
 ○ツインスティック
    →BINGO
 ○背面タッチ
    →BINGO
 △ロンチにモンハン3G
    →まあ、あれだけデモってれば、宣言も同然でしょう
 △バッテリーは3時間でモバブ必須
    →4時間程度、とのこと
 ○デジカメ
    →正面・背面2つもあった
可能性=低。
 ○PSPとのUMD互換性
    →BINGO
 ○3D
    →BINGO
 ?ロンチにWOW、スタクラ
    →あったらいいな♪

まあまああたってるかな。
でも、肝心の通信関連の情報が全然なかったのは、ちょっと残念。

NGP(仮)の3G通信 (3)

SCE平井氏はインタビューで、次の点を明らかにしている。
 ・商品展開は、地域により異なる
 ・各地のキャリアと、レートプラン、料金展開について議論中
 ・レートプランに対しての3Gの魅力が重要
 ・クリエイターの利用度合で、3Gモデルの比率や3Gモデルだけで行けるかを判断する

単純に「レートプラン」という言葉に注目すると、docomoとユーザが回線契約を結ぶ形が想像される。だがこれはビジネス的に敷居が高い一方で、現在の3G独自のサービスには全く魅力がない。一部のマニアしか利用しないだろう。
また「全モデルに3G通信機能は乗せ」、nearやliveareaを作る以上、ある程度ボリュームを見込んでいるはずなのだが、docomoとユーザの回線契約が必要となるようなややこしいモデルで、それが実現されるかどうかは疑問だ。
結局、単にサービスと対価という点から考えると、docomoとユーザが回線契約を結ぶ形は考えにくい。
だいたい、そのようなマニアであれば、モバイルWifi+xlink-Kaiを既に運用しているだろう。

「レートプラン、料金展開について議論中」との記述からして、キャリア既存のメニューで契約させることはないようだ。しかし、このようなカスタムなメニューをdocomoが自身で運用するだろうか?
少なくとも既存の店舗でこれを取り扱うことはないだろう。今後増えるカスタムメニューを、全国の店舗に間違いなく周知し運用させるのは、とても難しいからだ。
逆にゲーム機の販売店がこの契約を扱うかとなると、それも疑問だ。そのためには全国のゲーム販売店ともれなく契約(代理店契約)を結ぶ必要があるが、それも大変な手間だ。とても苦労に見合う実入りがあるとも思われない。
結局、ユーザとの契約は、ソニーが行うことになるのではないか。


結局、ソニーがMVNOとなりdocomoと契約。その上でユーザとソニーが契約、という形の契約形態になるのではないかと思われる。ユーザとソニーの契約は、おそらくPSN+と組み合わされたものになる。NGP/3G向けPSN+があり、料金は、通常の500円+α、という設定になっているものと考えられる。

このαは、サービスによって異なり、基本的には、(1)通信量、(2)価格転嫁の可否、の2点から算出される。
例えばブラウザのように、通信量が大きく(特にリッチなコンテンツを許す場合)、価格転嫁が難しいものがサービス範囲あれば、最低でもdocomoのデータ通信の通常月額程度の費用は必要になる。逆に、認証のように通信量が少なかったり、ゲームの追加マップのように通信費の価格転嫁が容易であるようなサービスのみであれば、無料での運営も可能となるかもしれない。
このへんはビジネス判断だが、本体の価格設定とも関連するし、またそれこそクリエイターの考えによるところも大きい。ここではこれ以上検討しない。


結論。本ブログでは、NGPの3G通信の概要を以下のように予想する。
 ・ソニーがMVNOとなり、ユーザにサービスを提供
 ・ユーザはソニーと契約。契約の形態としてPSN+の利用契約の形をとる
 ・料金は通常のPSN+の料金。もしくはそれよりも多少高い程度
 ・音声通話やSkypeは利用できない
 ・ブラウザ、テザリングのようなリッチなサービスは利用できない可能性がある
 (月額料金を別途支払えば、これらのサービスが利用できるメニューもあるかもしれないが)
 ・3G対応機・Wifi限定機が並存

NGP(仮)の3G通信 (2)

検討にあたり、以前のゲーム一本あたりの通信費の試算を、新しい情報を元に修正しておく。


入手した情報は以下の点:
 ・NTTドコモは日本通信に対し、相互接続契約にて、10Mbit/sの帯域幅を月額1500万円で提供
 ・同様のサービスをe-mobileは、10Mbit/sの帯域幅を月額700万円で提供
上記の情報から、ゲーム1本あたりの通信費は、
 100時間 × 3Kbps × 10Mbit/s/月額 = 1,894円 (ミニマムで884円)

前回の試算結果2,824円を下回る結果となった。
これなら、かなりイケるんじゃないだろうか。


※注:
試算はもちろんごくごくシンプルなもので、データがないものは、かなり重要な要素もオミットしている。

例えば、時刻による通信発生量の推移は非常に重要な情報だが、オンゲの時刻別通信量の情報が入手できなかったので、ここでは割愛した。
またWifiと3Gいう、通信方法別の通信量の比もここでは試算には含めていない。これは、サービス提供者の匙加減で大幅に変化する、パラメータに近いものと考えられるためである。