る十四章 ~猫の魔力~
私は猫を可愛がっているうちに「想い」がある一線を超えてしまい、何か急に胸がキューンと熱くなってしまうことがよくあります。
何か猫の不思議な魔力にかかってしまったのでしょうか。
それとも私は何か悪い病気にでもかかっているのでしょうか。
他に言いようがないので困るのですが、本当に猫の魔力にでもかかったとしか思えないのです。
物心ついた頃からずっと犬と一緒に暮らしてきて完璧な犬派だった私は、今までに多くの犬と接してきました。
そして犬は今でも可愛くて大好きです。
犬は飼い主をよく見ています。見ていなくても耳はこちらを意識しており、少なくとも飼い主の方向に神経を集中していることが多いのが犬だと思います。
うちのムクもそうです。
これが犬という動物の特徴でもあり、犬の忠実さ、可愛さの一つでもあります。
しかし猫はどうでしょうか。
飼い主のことをある時は無表情でじっと見つめたり、全くと言っていいほど飼い主に興味を示さないかと思えば、何かをねだる時などは、これ以上ない可愛い甘い鳴き声で擦り寄ってきます。
ただし、顔に表情筋がないため、これを全てポーカーフェイスでやるのです。
猫は甘えてくることが非常に多い動物ですが、反面己を強く持ち、人に迎合しません。
気に入らないものは気に入らないで、あまり我慢をしません。
飼い主を無視する時がちょくちょくありますが、きっと自分のことにでも没頭しているのでしょう。
こんな時に「遊ぼう」などと誘っても、いくら飼い主と言えど、決して いい対応などありません。
とにかく、7年前に猫と初めて出会い、猫に抱くようになったこの種の想いはかつて経験したことがありませんでした。
犬には常にこちらが主導で、リードしていたのに、猫には、まるで主導が取れない。というか取る気にもなれない。
尽くすことで気が収まるとでもいうのでしょうか。
まあ、こんな猫の魔力にかかる人間も人間とは思うのですが、聞いてみると、猫派の人たちは不思議なことに、揃いも揃ってその魔力にやられてしまっている方が多いようなのです。
いや、もしかしたら猫派と呼ばれている人たちは猫の魔力にやられてしまった人を言うのかもしれません。
私を例にすると、まるで性悪な女に引っかかった、既に修正のきかないダメ男の状況でしょうか。
しかし不思議なのは、それでも全てを許せるのです。
猫を知らない方たちからすると、
猫のこの気まぐれさについて、
『一体どういう神経を持った動物なのか』
と、理解に苦しむのではないでしょうか。
今年の2月27日から “ボチボチ” と続けてきた
『犬と猫の可愛さの違いは何だろう』(全15章)
は次回の 〈 総 論 〉でやっと終結します。