サティシュ・クマールさん | YOGA Sahaja ~be nature, be a spontaneous~

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オテツダイ

【3月末に来日するサティシュ・クマールさんの講演録から】
「私はイギリスに住んでいますが、生まれはインドです。若い頃、この世界を見ようと決意してインドを後にし、友人とふたりで二年半かけて1万3000キロを歩きました。歩き始めるとき心に決めたのは、平和のために歩くのだということ。だから、モスクワ、パリ、ロンドン、ワシントンなど、核兵器を持った国の首都を目的地にしました。

出発にあたってグル(師)のところへ行き、旅に出ることを話すと、グルは「ポケットに一切のお金を持たずに歩きなさい」と言いました。私は驚きました。お金を持たずに世界を歩くなんて。お腹が減った時、食べるものはどうする? 喉が渇けばお茶の一杯も飲まなければならない。しかし、グルは一銭も持たないで歩け、と言うのです。グルが言ったことにはただ従うしかありません。だから私は、用意していた少しばかりのお金を置いて、歩き始めたのです。

一カ月歩いて、インドとパキスタンの国境まで来ました。ある友人がそこまでやってきて、「サティシュ、お前は気でも狂ったのか。パキスタンは敵国だぞ。そこに一銭も持たずに入るなんて」。彼は非常に心配してくれました。

宗教が異なるパキスタンとインドの間には、3回も戦争が起こっていました。友人は心配して、「せめて食べものくらい持って行け」と、用意してきたお弁当を差し出すのです。でも、私はそれをもらうわけにはいきませんでした。私は彼に言いました。

「それはたんなる一包みの食べものではなく、一包みの不信だ」

友人は涙を流し、私を抱きしめました。

「サティシュ、これが最後かもしれない。君が生きて帰れなくても不思議ではないのだから」

私は言いました。

「これは私とグルとの約束なんだ。だから私は何も持たずに行く。もし平和のために死ぬのなら、それはよい死かもしれない」

国境を越えパキスタンに入ってまもなく、ひとりの人がやって来て、私の名前を呼ぶのです。私は不思議に思いました。私はパキスタンに知人などいないのに、なぜ私の名前を知っているのか。その人はこう言いました。

「新聞で君のことを読んだよ。平和のために歩いているんだってね。私も平和を信じている。パキスタンとインドの戦争はまったくばかげている」

そして彼は、私たちを自分の家に招いてくれ、食事をふるまってくれました。この人が現れるほんの少し前に、私は友人から、「君は敵国に足を踏み入れようとしているんだ」と言われたばかりなのに。これは私にとって大切な学びでした。私は心に刻みました。

もし私がここにインド人としてやってくれば、パキスタン人に出会うだろう。もしヒンドゥー教徒としてやってくるなら、ムスリムと出会う。そして、ただの人間としてやってくれば、人間と出会うのだ、と。

(辻信一著「GNH もうひとつの<豊かさ>へ、10人の提案」から)

【サティシュの全国ツアースケジュール】
現代エコロジーの巨匠、サティシュ・クマールさん、来日情報更新!
http://www.sloth.gr.jp/movements/satish-tour2013/