こんにちは、心理セラピストのたなだかつひこです。
“つらい子ども時代”について話をする際、虐待について触れないわけにはいきません。
私のところでセラピーを受けたり、心理学の勉強をされている方の中で、決して少数とは言えない割合の方が子ども時代に身体的な虐待や性的虐待を経験しています。
ネグレクト(無視・無関心、育児放棄)を経験された方もいます。
小さい子どもにとって、親による虐待はあまりにも耐えがたい体験です。
なぜならば、子どもの立場からすると、親というのは本来であれば自分のことをさまざまな危険や不安などから守ってくれるはずの存在だからです。
その親から暴力を受けるのが虐待です。
それは信じがたい「恐怖」であり、「怒り」であり、「悲しみ」です。
自分の親から虐待を受けた子どもは、他者への安心と信頼を失い、自分の生きている世界に対して安心と信頼を失い、自分自身への安心と信頼を失います。
それはあまりにも大きなショックなので、通常、子どもがそのような大きなショックを適切に取り扱うことはできません。
そのため、ココロやカラダを凍り付かせて、虐待の体験そのものを冷凍保存して記憶の底へと追いやり、固く封印します。
自分が虐待を受けていた体験を最初からセラピストに話したり、虐待の問題を最初からカウンセリングで取り上げて解決しようとする人が少ないのはそのためです。
そこには、抑圧や否認といった防衛機制のメカニズムが働くという理由だけでなく、「自分の親を悪者にしたくない」という親をかばう気持ちもあります。
親から虐待を受けていたことを認めてしまうと、自分を育ててくれた親の人格や人間性を否定してしまうことになるのではないかと恐れるのです。
「家族の中で起きていることは、絶対に誰にも話してはならない」という「無言のファミリー・ビリーフ(暗黙の家族内ルール)」も影響しています。
たとえ暴力を振るう親であったとしても、小さい子どもが親のもとから逃げ出して、自分一人の力で生きていくことはできません。
何があっても親は親、子どもにとっては自分が生きていくための命のよりどころであり、何としても親を頼って生きていくより他ありません。
そのために、親から虐待を受けている子どもが、「私(僕)が悪い子だから、こんな目にあうのだ」と思い込んで、自分のことを悪く思う場合があります。
「親が自分に暴力を振るうのは、自分が悪い子だから」
「私がいい子じゃないから、お母さんは私を叩くんだ。お母さんは悪くない。悪いのは私」
「だから、自分がもっといい子にさえなれば、もうこんなひどい目にあわないはず。お母(父)さんはもっと私のことを愛してくれるはず」
と考えるのです。
実際に親が子どもに対して、「お母(父)さんは、お前が悪い子だから叩くのだ」「これはお前のためなんだ」と言い聞かせている場合もあります。
子どもの頃に親から虐待を受けていたという方に、知っておいて欲しいことがあります。
それは、
「あなたは悪くない!」
という紛れもない事実です。
あなたがひどい目にあったのは、決して、あなたが悪い子だからではありません。
あなたが、「悪い子かどうか(誰にとって?)」ということと、あなたの身に起きたこととの間には、何ら正当な因果関係はありません。
では、客観的な事実は何かというと、
・ あなたのお母(父)さんは、人生を生きる上で何らかの悩みや苦しみを抱えていた(例えば、「お父さんとの夫婦仲が良くない」「誰も私に優しくしてくれない」など)。
・ あなたのお母(父)さんは、自分の衝動をコントロールできない人だった(おそらく、お母さんの成育歴に原因がある)。
・ だから、あなたのお母(父)さんは、子どものあなたを叩くことで、あなたをストレスのはけ口にした(なぜなら、「子どもが親の自分を見捨てるわけがない」のを知っているから)。
・ 当時の子どものあなたは、そんなお母(父)さんを悩みや苦しみから何とかして救い出してあげたかった。
・ だから、あなたは自分が犠牲になることで少しでもお母(父)さんが救われるのであれば、喜んで暴力を受け入れようとさえ思った(「神さま、私はどうなってもいいから、どうかお母さんを助けてください(祈)」)。
・ しかし、小さい子どものあなたに大人のお母(父)さんを救うことはできなかった(そもそも、やる前から不可能だとわかっていたこと。お母さんを救えるのは、お母さん自身だけ)。
以上が、子どもの頃のあなたとあなたの家族の身に起きていたことの真相です。
続く・・・・・
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心理セラピスト 棚田克彦