ヨミドクターで漫画を連載させていただいています。
8コマ完結の漫画です。
よかったら見てくれると嬉しいです
ヨミドクター連載「看取りのチカラ」
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こちらの連載は、毎回主人公が変わります。
主人公は、その回の患者さんの家族になります。
第3話は、【母を看取る娘】が主人公でした。
7月に掲載予定の第4話は、【父を看取る娘】が主人公になります。
ちなみに連載は第1週の木曜日
7月の掲載は2日(木)
アメブロでは、「看取りのチカラ」に出てくる看護師2人をメインにしたサイドストーリーを載せていきます。
それでは、第3話「臨終で感じる大切なもの」のサイドストーリーをご覧ください
を読んでもらえると嬉しいです。
サイドーストーリー
第3話
「感じること」
愛:結香(ゆうか)さん、もう栄養負担なんじゃない? 娘が栄養が足りないってうるさいから、無理して経管栄養増やしたけど、むくんできたし、痰は多いし、苦しそう…。先生も、もうちょっとちゃんと言ってくれたらいいのに。
結香(ゆうか)は心不全が悪化した際に、低酸素になって寝たきりの患者である。目を開けることはあるが、意思疎通はできない。家族は、娘の結衣(ゆい)35歳と結斗(ゆうと)29歳。夫は5年前に他界していた。
恋:そうだね。だけど、先生は否定してないし、終末期とは思ってないんだよ。まだ結香さん、60代だし。
どちらかというと患者に肩を入れがちな愛。それに比べ、可愛げな名前ではあるが、冷静でクールなイケメンの恋。愛と恋は同期の看護師だ。
愛:年齢の問題じゃないと思うけどね。本人の思いはどこにあるのか…
恋:愛は患者さん寄りの思いが強いね。俺、愛のそういうとこいいと思うよ。
愛:はぁ?!なに言ってんの?はずいわ!
まんざらでもない様子で頬を赤らめる愛。
恋:そういうことを考えない、あるいは考えようとしない看護師多いでしょ。そんなこと考えない方が、仕事は楽だしね。それは不幸なこと。痛みや苦しいことが不幸なのではなく、その苦しみのなかにも光明な輝きや希望はあるんだよ。僕らががんばっていることも輝きだと思う。あの娘さんにとって、弟さんも希望だよ。一緒に悩んでくれる人がいるって言うことが大切なんだ。
愛:恋って、難しいこと言うよね。理屈っぽいと言うか…
恋:俺はもともとあまり考えないタイプなんだけど、そういう意味で愛は僕の希望だな。
愛:だからはずいって!?
突然、ナースコールが鳴った。結香のベッドサイドからだ。愛は慌てて、ナースステーションから出て行った。
愛:どうしました?
結衣(ゆい):モニターの数値が下がりました!痰がごろごろしてるし、吸引してください!
愛:わっ、わかりましたっ!いま、引きますね。
愛は結香の鼻に、チューブを入れる。それまで、穏やかな顔をしていた結香は眉間にシワを寄せ、苦しそうな表情になった。粘稠な痰がたくさん引けてくるが、下がった酸素飽和度の数値がなかなか上がってこない。結衣はじっとモニターの数値を眺めている。愛が酸素を少しあげると、数値も上がってきた。
結衣:よかった。私、もう帰りますけど、あとよろしくお願いしますね。
愛:はい。お気をつけておかえりくださいね。
ナースステーションに戻ってきた愛は、恋にさっきまでの様子を報告した。
愛:もう、あの娘さん、ずっとモニターの数値見てるのよね。そりゃ苦しんでる親の姿は見たくない気持ちもわかるけど、なら無理させなきゃいいのに。
恋:それだけ母親への愛が深いのさ。今日は来てないけど、息子さんは冷静に話を聞いてくれるよね。いい兄弟だよ。娘さんも、入院当初よりは穏やかになってきたじゃん。僕らと信頼関係ができてきたっていうのもあるけど、弟さんが赴任先から戻ってきてからだよね。
愛:うん。娘さん身体壊しそうで心配だったし、結香さんが亡くなった後、介護後うつとかも心配だった。けど、あの弟さんがいるから、少し安心できる。
恋:大丈夫。まだ時間あるから。結香さんの死を伴走しながら、娘さんもちゃんと覚悟がついてくるよ。
愛:そうだね。最初から覚悟なんてあるわけないね。もう少し、娘さんの話も聞いてみようと思う。
「絶望に慣れることは、絶望そのものよりもさらに悪いのである」
以前、恋が教えてくれた「ペスト」という本に書かれていた。
いちいち落ち込んだり、悩んだり、苦しんだりするのはつらいから、感じないようになるって…
それはきっと嬉しさや楽しさ、そういう幸せな感情も感じなくなる。
結香さんは苦しんでる。でも結衣さんも苦しんでいる。
そのこと自体が悪いわけではない。
それに慣れて、そのままにしておくことが悪いことなのだ。
何ができるだろうか、その苦しみを少しでも取り除くこと、緩和するために自分にできることはなんだろうか。
愛は感じることをやめない。そう決意するのだった。
サイドストーリー3話「感じること」 おわり
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いかがでしたでしょうか?
お読みいただき感謝です。
<今回のポイント>
たとえ苦しくても、感じることをやめないこと
それではまた。
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イラストでお世話になっているマルチクリエーターゆきちゃん
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後閑愛実(ごかん めぐみ)
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