トルコのクーデターから数日がたち、とんでもない方向に向かっているようです。

 

以前から国内での圧政が批判されていましたが、現在のトルコは、ヒトラーも真っ青な独裁国家を彷彿とさせるものがあります。

 

前回のまとめ記事から後に見かけた、気になるニュースをまとめました。クーデター前のエルドアン政権による国内の圧政に関する情報は、下の記事(2)の最後に関連記事としてまとめてあります。

 

この記事の内容

 ★クーデター中、直後のエルドアンの動向 ★一部の兵士は、クーデターではなく軍事演習だと思っていた ★死刑制度の復活を示唆 ★フェトッラー・ギュレン氏との攻防 ★エルドアンの「粛清」 ★トルコとNATOの分裂? ★誰がクーデターを企んだのか ★ロシアはトルコ国内のロシア人をロシアへ避難させる命令を ★トルコ軍の軍船、軍事ヘリ、複数の兵士が今も行方不明 ★ウィキリークスがトルコ政府のEメールを大量に公開する・トルコ政府を擁護するようなサイバー攻撃がRTやウィキリークスへ

 

 

記事(1)トルコ軍がTV局を占拠し平和評議会の樹立を宣言

 

記事(2)クーデターはロシアに近づきすぎたトルコに対する報復か【最新情報】2800人以上が逮捕

 

 

★クーデター中、直後のエルドアンの動向

 

記事(2)では、エルドアンの大統領専用機が欧州上空を飛行していることが確認され、亡命を求めているのではないか、という情報がありました。

 

しかしクーデター直後にエルドアン大統領はホリデーで滞在していたリゾート地から、イスタンブールに飛行していたことが明らかになっています。

 

さらにエルドアンを載せイスタンブールに向かっていた専用機が謎のF16戦闘機2機以上から追跡を受けていたと元軍部職員がロイターに伝えています(RT)。しかし大統領専用機が土曜日早朝に目的地に無事に到着していました。

 

元軍部職員:「なぜそのF16が専用機を追撃しなかったのか、まったく不可解です」

 

エルドガン大統領はイスタンブールの空港で、スピーチを行いました。クーデター中はSKYPEを通じて国民に呼びかけていましたが、初めて公に姿を現したことになります。

 

スピーチの要点:

・トルコ国民と政治家の協力に感謝

・クーデターはアメリカに亡命中の フェトッラー・ギュレン氏が計画し、彼を支持する「少数派グループ」が行ったもので国に対する国家反逆にあたり、関係者はすべて相応の報いを受ける

・クーデターの試みによって軍内の「ギャング集団」の粛清を促すことになったので、クーデターは「神からの恩恵」であった

 

 

 

★一部の兵士は、クーデターではなく軍事演習だと思っていた

 

クーデター直後、678人の兵士と10人の職員が逮捕されていました。

逮捕された兵士らに対する事情聴取が始まりましたが、一部の兵士らはクーデターに参加しているのではなく、軍事演習を行っていたと思っていたと話しています(RT)。

 

一人の兵士の証言:「人々が戦車に登り始めた時に、私たちはすべてを理解しました」

 

クーデターが起こった翌日の朝、クーデター側の士気が下がり収束しましたが、その理由が気になっていました。私自身はクーデター勃発時には様々な動画を観ていましたが、記事(1)の「平和評議会」側の発言とと彼らの破壊的な行動とのギャップに混乱していたので、一時は「平和を謳っていたクーデター軍が、実は暴力的であった」という事実に気がついた兵士の士気が下がったのかとも思っていました。

 

しかし兵士の言っていることが本当であるとすれば、実際に戦車が市民をひき殺していたなどの様子を見て士気が下がった、という報道も理解ができます。

 

 

★首相が死刑制度の復活を示唆

 

エルドアン大統領は「クーデターに関与したものには最大の報いを受けてもらう」と発言し、その直後にはトルコの首相は死刑制度の復活を示唆していました(RT)。

 

しかしトルコ国内の情勢の不安定さにEU加盟を疑問視する声が上がる中、EU側は数日後には、死刑制度を復活させた場合には、EUへの加盟は不可能だとトルコに警告を発しています。

 

この辺りから「ひょっとしたらエルドアン自身がクーデターを企んだのではないか」という意見が目立ち始めました。

 

オーストリア外相:「失敗したクーデターは強く非難されるべきであるが、これを理由に自由裁量権を使うことは認められない。自由裁量による粛清、憲法の枠組みや司法制度の外部の犯罪に対する制裁措置は認められない。

 

国家権力はどのような場合であっても法に基づいて行使されるべきで、人権は保護されるべきである」(18日付け)

 

 

しかし国際社会からの圧力にも関わらず、エルドアン政権は死刑制度復活にやる気満々のようです(RT)。

 

エルドアン:「(クーデター中に)街頭にいた国民が(死刑制度復活という)要求をしたのです」

 

「彼らの意見は、このようなテロリストは殺害されるべきだというものです。・・・なぜクーデター犯を何年も刑務所に投獄して食糧を与えなければならないのでしょう。それが国民の意見なのです」(19日)

 

 

クーデター中は生放送などで様子を見ていましたが、エルドアンがなぜ国民に対して「路上にでて、私たちの強さを見せ付けてやろう!」と言っていたのかがずっと気になっていました。

 

クーデター側は、安全のために自宅待機するように告げていました。

 

路上に出たら、「何者かにしかけられたクーデター」を軍事演習だと思っていた「クーデター側」の兵士が戦闘モードで、実際に攻撃をしていました。警察官はクルド人の多い地域に行って、無差別に市民を攻撃し始めたとRTのレポーターは報道していました。

 

・・・家でソーシャルメディアでも見ていた方がよほど安全ですが、過去に数度クーデターを経験し、その後のクーデター側の暴力的な支配を経験していたトルコ国民がクーデター成功に危機感を感じて路上に出ていたのでしょう。

 

この点がまだ気になっています。

 

 

★フェトッラー・ギュレン氏との攻防

 

クーデター直後の会見で、エルドガンはフェトッラー・ギュレン氏がクーデターの首謀者だと断定し、首相は「このテロリスト集団の首謀者である男を支援する国は、特に昨夜の後にはありえないだろう。この男を擁護する国はトルコの友好国ではない」と発表しています。

 

イスラム主義者のフェトッラー・ギュレン氏(75)は、以前はエルドガンと友好関係にあったものの敵対関係に一転し、その後にクーデターを試みていました。そのクーデターが失敗した後、彼はアメリカに自ら亡命して15年が経過しています(RT)。

 

トルコ政府(エルドアン)はクーデター直後からギュレン氏の身柄引き渡しを要求していますが、アメリカはトルコ政府に対し、「法的な手続きがされない場合には身柄の引渡しはない」と返しています。

 

ケリー国務長官:そのような公のアメリカに対する批判は「完全な誤りで、両国間の関係にとって有害です」

 

フェトッラー・ギュレン氏自身は今回のクーデターに関するエルドアンに対し、クーデターは死に物狂いの偽旗作戦で、エルドアン大統領をヒトラーと比較しています。

 

ギュレン氏 :「このクーデターは、エルドアン氏の公正発展党(AKP)が仕込んだクーデターである可能性があり、これからさらに私の信念に賛同する人や軍部に対する糾弾がなされる可能性があります」

 

「エルドアン大統領が私に対し糾弾していますが、彼の主張を、世界がまともに受け止めるとはとても思えません」

 

「与党政権および大統領の不寛容さは明白です。彼らは私有財産やメディア組織を差し押さえ、ドアを破ってはヒトラーの親衛隊と同じスタイルで人々に嫌がらせをしています」

 

 

 

(画像 https://ejbron.wordpress.com/2016/01/01/erdogan-neemt-voorbeeld-aan-hitler-duitsland/

 

 

 

 

★エルドアンの「粛清」

 

トルコ政府がクーデター後に行った捜査では、約7,500人の市民が身柄を拘束されており、中にはトルコ軍の将校など上級官103人、兵士数百人が含まれているとのこと(RT)。

 

またソーシャルメディアなどを経由して、エルドアン勢力に捉えられた兵士がかなり惨い扱いを受けていると訴えられています。この写真は、身柄を拘束されたトルコ軍兵士らが裸で手首を束縛され、床に並べられている様子だということです。

 

(画像 http://www.independent.co.uk/news/world/europe/turkey-coup-attempt-photo-turkish-soldiers-president-erdogan-crackdown-a7142126.html

 

 

以前にロシア機SU-24を墜落させたとされるパイロットも、今回のクーデターに関与していたとして身柄を拘束されていると首相が発表しています(RT)。

 

 

また裁判官や検察官の約3,000人が任務から外され、2,700人の裁判官が逮捕されたとのこと。

 

 

免職された警察官の数は9,000人になっています。

 

 

さらに20日付の情報では、トルコ国内の知識層が国外へ移動することを禁止したと伝えられています(RT)。

 

 

 

トルコ政府によると、これはクーデターの首謀者が国内にいる場合に逃亡を措置するための一時的な対策だとしています。

 

この知識層の移動の禁止の直前には、トルコ当局は国内の大学の学部長全員1577名の辞職を命令し、国内の私立学校の21,000人の教員に対する免許を剥奪していました。

 

ブルームバーグ紙の報道によると、クーデター後に解雇された専門職の人の数は60,000人前後になると伝えられています。

 

 

 

★トルコとNATOの分裂?

 

クーデター直後にはまた、トルコ国内でクーデターが起きていた間に、NATOがトルコ政府に対してなんの支援も行わなかったのは異例のことだと言われていました(RT)。トルコ政府もNATOの不関与には不満を感じているようです。

 

さらにトルコのクーデターや、その後のトルコ政府の対応はNATO内での緊張感を高める結果になっています。

 

トルコ政府はクーデター中に政府ビルを空爆していた軍用ヘリが問題のインジルリク空軍基地で給油されていた、として空軍基地を閉鎖し、16日付のアメリカ紙ではトルコ政府が同基地内の1,500人のアメリカ人兵士の身柄を拘束していたと報道されています。さらに同基地への電力が遮断されています。トルコ政府は一時、周辺地域の上空の飛行までも禁止していました(現在の状況は不明)。

 

またこの空軍基地はアメリカ軍の核兵器を保管しており、米軍はこの基地を拠点にシリア国内のISIS制圧に使っています。

 

 

 

エルドアンがギュレン氏の身柄引き渡しをアメリカ政府に要求していることを考慮すると、人質のようなものだと考えられているようです。

 

国家間の平和に関する調査の専門家:(トルコ首相の発言に対して)「NATO加盟国からの発言としては、彼の発言は非常に強いものでした」「しかし、ロシアに対する圧力を維持したい米政府は、エルドアンをとの協力関係を維持する必要があります」RT

 

アメリカ国務省広報官:「(ケリー長官は)アメリカ合衆国はトルコ政府による捜査に協力をすることは望んでいるものの、皮肉な発言を公にすること、あるいはアメリカ合衆国が今回のクーデターに関与しているという主張は完全に誤っており、両国間の関係に著しい悪影響をもたらすものだ、と明らかにしています」RT)

 

 

★誰がクーデターを企んだのか

 

・(トルコ政府の主張):ギュレン氏と彼のシンパが行った

・ロシアとトルコの関係が緊密になっていたことから、アメリカがその報復として行った

・ロシアとアメリカが直前に会談を行っていたことから、アメリカとロシアが結託してクーデターを起こした。

・エルドアン政権による自作自演

など今のところ、様々な可能性が考えられています。

 

国防分析家 Ivan Eland氏:「私はアメリカはこの男性(ギュレン氏)の身柄を引き渡すとは思えません。彼は今回のクーデターにあまり関与していなかった可能性があると」

 

「トルコ自身がこのクーデターを、プロパガンダ目的で行ったもので、だから彼ら自身(ギュレン氏が黒幕だとは)あまり信じてもいませんし、誰でもいいから非難できる相手を非難しているのではないでしょうか」

 

ロシアが背後に、という説はないのでしょうか。

 

4月16日付けの報道では、トルコのエルドアンがシリア国内のISISの支援を止めない場合は、コンスタンティノープルをキリスト教世界にしてやる、と話していたそうです。これはトルコが急速にロシアに歩み寄る数ヶ月前のことです。シリア国内のISIS制圧にロシアが乗り出した際には、トルコとロシアの間の関係が非常に緊張したものになっており、プーチンはエルドアンに対する嫌悪感をあまり上手く隠しきれていませんでした。

 

インジルリク空軍基地でアメリカの核ミサイルが拘束されたことにより、ロシアとしては一つ危険性が減ったことにはなりますが、しかしエルドアンと首相の嬉々として粛清に勤しんでいる様子を見ていると、ロシアが単独でクーデターを仕込んだという可能性はあまりなさそうに思われます。

 

 

(画像 http://awdnews.com/top-news/putin-if-turkey-s-erdo%C4%9Fan-doesn-t-stop-supporting-terrorists-in-syria,-i-shall-restore-constantinople-istanbul-to-christendom

 

 

 

★ロシアはトルコ国内のロシア人をロシアへ避難させる命令を

 

クーデターのあった翌日には、ロシア政府の広報担当がロシア人を母国に移動させる航空機の手配をしていました(Sputanik)。トルコ国内には個人旅行中のロシア人は約4,000人、パッケージ旅行者は1,000人前後いたとされています。

 

 

★トルコ軍の軍船、軍事ヘリ、複数の兵士が今も行方不明

 

トルコの海軍に所属する軍船14艘、ヘリコプター2機、特殊兵士25人がクーデターが起こってから行方不明になったままだということです(19日付、RT)。

 

軍船はギリシャの港湾へ向かっていると考えられているというようですが、トルコの副首相は軍船が行方不明になっているという説を否定しつつ、現在どこにいるか詳しい情報は提示してないようす。クーデター翌日の土曜日には、トルコ軍職員8名がギリシャで逮捕され、亡命を申請しています。

 

在ギリシャのトルコ大使は、ギリシャに対し、亡命希望の兵士は、身柄をトルコに引き渡してくれれば「トルコで公正で透明な裁判を受けることになる」とし、身柄を引き渡さない場合は両国間にとって望ましくないと述べています。

 

 

★ウィキリークスがトルコ政府のEメールを大量に公開する・トルコ政府を擁護するようなサイバー攻撃がRTやウィキリークスへ

 

クーデター直後のトルコ政権による粛清に対する反対意志を表明するためとして、ウィキリークスがエルドアンの公正発展党に関与した30万件の資料を公開する、と発表した直後から、ウィキリークスは「謎の」サイバー攻撃を受けていました(RT)。

 

しかしそのような攻撃を受けてもウィキリークスは資料を公開。20日には、トルコ政府はウィキリークスに対するアクセスをブロックしています。

 

 

過去のニュースでは、エルドアン政権に反対する大規模なデモがトルコで行われていた際にはツイッターの使用がブロックされ、シリアとの関係が悪化していた際にはシリア国内などで情報を入手したジャーナリストなどが多数、変死、あるいは投獄されていたことを考えると、まだかわいい情報統制政策ですね。

 

 

(画像 当時のエルドアン大統領による言論統制時のデモ http://www.oregonlive.com/today/index.ssf/2014/03/turkey_tries_to_ban_twitter_pl.html

 

 

しかも、クーデターが起きた頃からすでにトルコ国内で命がけの取材を開始していたRTに対し、何者かが大規模なDDoS攻撃(サイバー攻撃の一種)を仕掛けていました(RT)。イスタンブールでクーデター中に取材をしていたRTのレポーターは、警察官が市民に無差別に行っていた攻撃に巻き込まれ、催涙ガスの攻撃を受けて負傷しています(RT)。