当該者の歴史は幻想である。
当該者の歴史は一つでも、世界は一つでもない。
当該各々が歴史も世界も一つにしようとするのはよい。
しかし、一つになる事を他者に強制してはならない。
俺の酒が飲めねえのかと海老様の言ひは、
一つになる事を強要する言ひ様。
強要しやうとする時にだけ温度差は生じる。
一つになることの本意は他者への愛とか尊重のやうなもの…
詰まる処、二つ以上ないと一つにはなれない。
一つのものは一つになろうとは思はない。
むしろ、二つになろうと反発する。
詰まる所、バラバラであればバラバラなほど、
一つになれる。
気遣いがない社会に多様性はない。
…唯其れだけの解析である。
けふも絵空事のからつぽ加減で…
インディアン達は自分達の土地で仲間と変わらない日々を営んでいた。
多少白人が周囲をうろうろしていても、それだけなら何も変わらない日々である。
一方、白人達はどうだらうか…
白人は慣れない土地で開墾するところから始めなければならなかつた。
気候も違えば上手に作物を栽培するのも困難だし、農業経験もなかつたら…
狩猟しやうに鉄砲を持つていても、腕がなけりや役に立たない。
いっそのこと、彼らの農地を奪つてしまおうと…
考えたのかもしれない。
手つ取り早い訳である。
そして、白人はインディアンたちに言ふのだ。
「おいおい、お前さん達よ、少し私に畑を貸してくれないか…」
「えがつぺ、おめえさんたち困つてるのに其の位なら協力してやつぺ」 (栃木弁)
「よがつぺ、おめえさんたちにあの畑はあげつから…」 (茨城弁)
注)現在、茨城や栃木県地方でネイティブな訛りは通じない事も多い。
しかし、白人はインディアンの農地を奪つても土地の扱いを知らなければ…
とうもろこしは簡単に育たない。
雇い主からはせかされるし、作物も開墾もしなければならない。
白人の移民たちは相当苦労したに違いない。
さうしてインディアン達の豊かな暮らしに嫉妬してもおかしくないだらう。
白人は自分達の境遇を怨み、ますます平和でなくなつていくのだらう。
そして、今気付くのである。
アメリカの入植した白人達は不幸な運命を辿つたのだと…
それをインディアンに背負わせたのだ。
つまり、元来不幸だつたのは西欧からの入植者(白人)であつた。
もしかすると…
もしかして…
十字架を背負わせた心算が…
今でも一番不幸なのは彼らかも知れない。
インディアンを擁護するより、白人を擁護しなければならないのか。
嗚呼…想像力をたくましゆうした空想也。
謹言