2018年6月19日 桜桃忌 太宰治「人間失格〜朗読劇」 その① | おおともゆうのブログ

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こんにちは! シンガーソングライター、おおともゆうです。
このブログでは日々の生活の中で遭遇する摩訶不思議中で超常現象をご紹介致します。



はしがき 

今年の325日にふと三鷹にあるライブカフエ「おんがくのじかん」へ出演したことが、凡ての始まりであった。

その日のイベントの演者は皆どこかしら文学的な香りがしたのである。

そして、ショーがはねてカウンターでウイスキをロックで飲んでいたところ、目に留まったのが、

太宰治の単行本の百鬼夜行であった。


「マスター、これ。たくさんありますけれど

太宰治お好きなのですか?」と問うと。


「はい。僕は好きですよ。だから三鷹でやってるというのもあるんです。」


言わずと知れた三鷹は太宰治が愛した町である。

1939年から1948年玉川上水にて入水自殺を起こすまで、住んでいた町で、作品にも数々のゆかりの場所が登場する。


「マスター。僕も大好きなんですよ。」


気がつくと小一時間は話し込んでしまっていたやうである。

その時心の中で固く決めたのが

「文学イベントをやる。」ということであった。

そしてその他の演者とも意気投合して、

さっそくグルウプラインを作ったのである。

実はその後高円寺にあるライブハウス

「無力無善寺」に遊びに行き、そこでも文学臭のする仲間を集めてメンバーは10人ほどになる。


そして何をやるかいつやるかを具体的に決めようとグループ内で意見を交わすもまとまらず、

言い出しぺの私がひとまず何かしらを決めないとという意見もあり、以前より訪れていた三鷹の名物行事「桜桃忌」にやろうと決めたのである。

この「桜桃忌」とは、太宰治の誕生日でもあり、

愛人の山崎富栄と共に死体で見つかった日である。これを太宰を偲ぶ日ということで、同郷で太宰と親交の深かった直木賞作家の今官一が、太宰の短編小説「桜桃」の名にちなんで命名した。


この日は全国から、いや世界中から太宰治フアンが三鷹に駆け込み、太宰の墓のある禅林寺にお参りをし、太宰治文学サロンや太宰治フアンの夫婦の営むカフェ「フォスフォレッセンス」などを訪れ、其々が太宰へ想いを馳せるのである。


そして私は気になっていた。

なぜ誰も三鷹で太宰治イベントをやらないのかと。いや私の知らないだけで実はたくさんあるのかもしれない。

しかし調べども調べども、それは市の行うギャラリーや特設展であり、一般のフアンが行うものがないのである。仮にあったとしてもそれは、高円寺や吉祥寺、渋谷や下北沢などで、はっきり申し上げて、


え?それ三鷹関係ないじゃん。


と疑義の念を抱いた始末であった。

そして早速「おんがくのじかん」のマスター菊池氏に連絡を取り、6月19日空いているとのことで、会場をとりあえず押さえたのである。


三鷹 桜桃忌 太宰治 何かしらのイベントをやる

会場はとりあえず押さえた。


さてと、何をやりませう。

グルウプラインにも発案をしたがまとまらず。

またもや逃げの一手

ツイッタに投稿したのである。

6月19日 桜桃忌に太宰治イベントをやります。

ご興味のある方は是非御連絡を。


するとすぐに一通の手紙がやってきたのである。

イベンターの肩書きを持つ島袋氏である。

僕にも何か手伝わせて欲しいとのことで

三鷹で中野で合流し、高円寺の安酒場で数時間語り合った。話題は戦後の日本や海外の映画や音楽、文学など多岐に渡った。

そうして、別れた後グルウプラインで

またも意見を交わし合った。


太宰治の何をやるのか。

試しに他のイベントも見てみた。

そのほとんどが朗読や芝居であった。

私もなんとなくそれらの方向に行けば

間違いはないと確信していたのだが、

島袋氏はそれはつまらんと言い放った。

太宰治である必要性もない。

演技ならセリフを覚え、練習を重ね、

立ち回りやきっかけなど、相応な時間が必要となる。まず間に合わない。

朗読なら其々が自分の部屋で読んだ方が早い。

しかも下手くそなズブの素人が読み上げる太宰治に金を払って誰が聞きたいかと。


何か新しいことをと。

私もそれに賛同した。


そして兎にも角にもお題を決めようと思い

ふと「人間失格」を2〜3時間で表現するのは

如何でせうか?と問いかけたというより

グルウプラインへ投げかけた。

すると、思った以上の好反応があり、

ひとまずお題が決まったのである。


そして回を重ねる島袋氏との2人だけの打ち合わせの中で徐々にビジョンが決まっていった。


そして朗読の後ろに即興的な音楽を流すのはどうか?と私が発案をした。

島袋氏は首を縦に振った。

そこで様々な女性ゲストを迎え

エレキギター二本による即興音楽で活動している

cosmo confusionという二人組に声をかけた。

二つ返事で快く引き受けたのである。


そしてこの中に劇中

映像を入れるのはどうかと島袋氏。

「人間失格」という物語は

ロックスターが酒を飲み、女と寝て、薬にはまり堕落していくホラーショーのようなもの。

しかし最後に主人公は死なない。

死ぬどころか一筋の光さえ見えてくる。

それが未完の絶筆「グッド・バイ」へと走って行く青春劇になるのではと。

この時点でもう皆様はお気づきかもしれせぬが、

小説の中と現実とが織り混ざっているのである。

物語の中の主人公、大庭葉蔵は廃人になる。

現実の作家、太宰治はグッド・バイを書く。

すると、大庭葉蔵もその後本物の絵描きになったのではないか?という明るい青春劇へと走らせることが出来るのではないか?と。

これは日本版の「トレインスポッティング」なんだと。

物語は朗読劇で進めて

実際の作家の生活背景は映像で流そうと。

そうと決まれば、あとはキャストを集めよう。


ということでダブルキャストつまりは 

一人二役を募集した。


大庭葉蔵と太宰治

堀木正雄と井伏鱒二

竹一と檀一雄

ヨシ子と津島美知子

シズ子と太田静子

ツネ子と山崎富栄


この男女6人で脚本も大幅にカットし

変えてやってみようと。


しかし、現実は桜桃のやうにそう甘くはなかったのである。

まず演者全員での撮影の時間がない。

リハーサルを全員で行う時間もない。

そして主催者である私が少し安楽に構えていたのも祟った。全てが準備不足。

その負担は島袋氏へと向かっていったのである。

毎日徹夜で考え続けてきた島袋氏。

様々な案を投げかけられても

適当な返答や自分の読みの浅さもあり

徐々にすれ違ってきてしまったのである。


どこかで、今回のイベントは

太宰治フアンの方々への奉仕であり、

お金を取る以上は分かりやすく

なるべく原作を壊さず、安パイなものをと

少し臆病になっていた。

そしてキャスト陣が抜けてしまったり

また都合がつかずこちら側からお断りしてしまったりで、台本が一向に進まなかったということも

日々裏目に出ていたのである。


そして全くベストな改善策が見つからぬまま

前日を迎えてしまったのである。

映像はまだ撮っていない。

台本もまだ出来ていない。

この時点で6月18日の23時である。

ここで島袋氏との話し合いで

氏の当初考えていた様々な素晴らしい構想を

実現出来ないことが浮き彫りになり、

今回は朗読劇と劇中其々のキャストが役になりきって歌うミュージカルの二本立てでいこう。という私の発言を最後に氏はこの企画から降りてしまったのである。


この時点で日付は変わっていたのである。

グルウプラインへは


「私が明日までに必ず台本を完成させますので、

どうぞご安心を。」


という趣旨の文言を書き残し

近所のインターネット付きの漫画喫茶へと

駆け込んだのである。


そうして原作をキャストが出てくるところ以外

大幅に削除して、と同時に絶対に残さねば物語自体に影響が出てしまうポイントは残したままという添削作業を繰り返し、朝の7時を回ったところで、台本が完成したのである。


そのままシャワーを浴び、

着流しに着替え、颯爽と家を飛び出し

東西線で吉祥寺駅で下車した。


そして長い1日を迎えるのである。


皆さん

おはようございます。

当方徹夜です。これからおそらく打ち上げの続く、明日の朝まで(丸2日間徹夜確定)お付き合いくださいまし。

会場前にびっしりと貼られた告知用フライヤー

(島袋氏による作品)

今回の演者は
大庭葉蔵に、私おおともゆう。
竹一に、きつね君(きつねワゴン)。
堀木正雄に、laito君。
ヨシ子に、西田いづみさん。
シズ子に、ゆたにまきこさん。
ツネ子に、熊谷あすみさん。
全体の劇の伴奏に
cosmo confusionの朝日奈さんと、一瀬さん。

駅で集合してから、吉祥寺駅前のカフエへ。
そこで軽い打ち合わせをし、
その後、一同井の頭公園へ向かい
園内にて全体稽古をした。

燦々と降り注ぐ太陽と
足首をむしゃぶりつく蚊の大群と格闘しながらも、思ったより稽古の進み具合が良く、
16:30の会場入り時間に間に合ったのである。

早朝からの集合と炎天下での練習や徒歩での長距離移動が祟り、一同会場入りをした時には、
深淵を覗き込む悪鬼のごとしであった。

ステイジを見つめ台本を確認する
同じく徹夜組のシンガーソングライターlaito君。


自身の台本に細かく色ペンで書き込む
シンガーソングライターのゆたにまきこさん。


弦を調律し、全体の音楽構想を練る
cosmo confusion 一瀬さん。


会場の音の鳴りを確認し
物思いに耽るcosmo confusion 朝日奈さん。


グルウプきってのアイドルであり
劇団Q所属 俳優の西田いづみさんと
自作曲の確認をし、ギターを爪弾く
ミュージジャン きつね君。

とりあえずスイカバーとレッドブルで
翼を生やしたい、おおともゆう。
目の落ち込み具合がカルモチン。



そしてリハーサルの空いてる時間を利用して、
三鷹駅南口中央通りの
桜桃忌の禅林寺の行き帰りの太宰治ファンに声をかけイベントへ誘致するキャスト陣。


本当にたくさんの方々にフライヤーを受け取ってもらい、話も聞いてもらい、太宰治ファンの愛に一同感動したのである。


そして順次会場でのリハーサルに励む演者達。

セリフの最終確認を行う
おおともゆうと西田いづみさん。


まだ あどけない少女の面影を残す
エネルギッシュな西田いづみさん。
洋服と着物を合わせたパンキッシュな出で立ち。


徐々に胸糞の悪くなるような堀木正雄像を
確立していくlaito君。


この物語において
あとがきの京橋のスタンドバアのマダムという
重要な役割をも担う、グルウプの母親的キャラクター、ゆたにまきこさん。


最近新しいピックアップ付きのエレアコを買い
生活難に喘ぐ、ツイッタ上の発言が
なんとも現代の太宰治的な、きつね君。
私には黒髪のブライアン・ジョーンズにしか見えない。


そして全てのナレーションを読み上げる
責任重大な、主催のおおともゆうと
cosmo confusionのリハーサル。

まもなく本番。
さてどうなるやら。
第一の手記へと続く。。。

撮影は全て Nobuaki Saito 氏による。