以前、好きなこととの距離について話をしました。今日は、逆バージョンの話をしましょう。やや暗い話になりますが、好きなことをやっても、うまくいかない人の話です。ここのところ、都合のいい話ばかりしたので(笑)、そんなにうまくいくはずはないでしょ!という気持ちの方もいるかもしれません。うまくいかない人の話を聞くことで、自分がそのパターンにはまらないですむようにしていただけたらと思います。
好きなことをやって生きたいというのは、ある意味では、人間の根源的な欲求だと思います。自分らしく生きたいというのは、自己表現とも言えるし、自由を持ちたいということでもあります。それは、SNSやブログで自分のたわいもない話を毎日何時間もかけてアップし続ける人がたくさんいることからも分かると思います。
一方で、好きなことをやって暮らせている人は、人口の10%ぐらいしかいません。もっと厳密に「好きなことだけをやって生きている」と定義したら、5%もいるのかなぁと思います。それは、今の社会で自分らしく生きるのが難しいからでもあります。学生の多くがあまり何も考えずに就職するのは、自分で好きなことをやって生きて良いと考えていないからです。そして、多くの人が会社を辞めないのも、好きなことをやって生きられるほど、世間は甘くないと信じているからです。実際に、会社を辞めても、いきなり生活に困る人がたくさんいるのは、これからお話しする理由です。
好きなことをやって生きられないのは、それが、趣味レベルで留まっているからです。歌、絵、料理、スピーチ、本、カウンセリングなど、自分がやりたいと思っていること、好きなことでも、お金を払ってくれる人が一定の数いなければ、プロにはなれません。提供するサービスがプロとしてのクオリティになっていないと、ダメなのです。
人間関係が下手というのも、好きなことで生計を立てられない理由です。自分でやっていくときに、一番大切にしなければいけないのは、人間関係です。独立してやっていくときに、あなたを喜んで支えてくれる人が、3人なのと、30人、300人いるのと、どれくらい違うか考えると分かると思います。サポートしてくれる人が多いほど、成功しやすいのです。ではどうやったら、たくさんの人に応援してもらえるようになるかですが、カギは人間関係です。
自分が出会う人すべてに応援されていく生き方をしていれば、長く活動するほど、成功しやすくなります。ひとりひとりを大事にすること、つながりを深く持つことです。それができなければ、どれだけ一生懸命にやっても、その才能が花開くのは難しいのです。
好きなことをやるときに、ひとりよがりになってしまうのも、問題です。自分だけの音楽、アートを作っても、気に入ってくれる人がいなければ、生活が成り立ちません。自分の世界を作るのと、ひとりよがりになるのは、紙一重です。常に、ひとりよがりになっていないか、第三者の視点も必要になってきます。いったんヒットを飛ばしても、駄目になっていく人は、これができていないのです。いくつか見ていきましたが、感覚的に理解いただけたでしょうか?
本田健