インド仏跡巡礼⑧ ルンビニ/ タルチョの風 | 創業280年★京都の石屋イシモの伝言

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◆京都の石屋 石茂 芳村石材店◆部録/石のセレナーデ
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数本の太い樹を束ね、八岐大蛇ように伸びる、巨大な菩提樹を
中心に、周囲の木々へ放射状に広がり、はためく「タルチョ」。

 

青、白、赤、緑、黄と、五色を規則正しく並べ、繰り返す旗は、
数千の群れとなり、八方へ放たれると共に、菩提樹を包む僧衣
のように幾重にも巻きつき、神秘的な雰囲気を醸し出している。

巨大な菩提樹と、風に揺れるタルチョと、祈りを捧げる人々‥
マヤ堂からわずか200Mほど離れた広場の、風景である。

 

タルチョはチベット人が日常的に使う、魔除けと祈りの旗である。
チベットでは、家の屋上や寺、峠や山頂などに飾られるようだ。

タルチョの歴史は古く、チベットに仏教が伝来する前のボン教の
時代から見られ、昔は遊牧民が移動する時の旗印として、自分
達の占有領域の境界を示していたようだが‥

やがて仏教的な象徴としての、意味合いが強まってきたようだ。

  
 
タルチョの色は、青(空)、白(風)、赤(火)、緑(水)、黄(地)と、
順番が決まっていて、また各「色の意味」は、古代インド思想
で考えられた、宇宙を構成する五大要素だと云われている。

密教の流れの為だろうか、タルチョの五大要素は、今の日本でも
建立されている、五輪塔の「形の意味」と通じるものがある。

 
 
 ところで、このタルチョだが、表面には経文や願い事が書かれ、
経文なら、風になびくたびに読経したことになる。

同じチベットで使われている仏具で、回転させただけ読経した
事となる、マニ車と一緒の考え方だ。合理的ではある。

                        ◆

ここルンビニの菩提樹の下では、大きく口を開けた樹洞の中に、
華を供え、バターランプから灯を頂き、祈りが捧げられていた。

この地で祈るのは、チベットの人だけとは限らないが‥
タルチョの量を見れば、訪れる人の多さと、想いの強さを感じる。

遠い祖国、チベットを離れて、祈る人々の、平和への願いよ。

限りなくタルチョを揺らし、巨木をも動かす、風とならん

  
 

インド仏跡巡礼⑨へ、続く

次は、ブッダ入滅の地「クシナガル」をめざします