ある火曜日の稽古の話です。
研究稽古の日ですが、この日も新しく参加した道場生がいました。
となると、先日の様に基本に関係するところからの説明や稽古が必要になりますが、一般稽古と異なる分、メニューの構成には気を使いますし、できるだけ落しがないようにし、なるべく同じようなレベルで向上して欲しいと願います。
そういうところが関係し、最近の研究稽古の進捗状況は以前に比べて遅くなっており、結果的にこの日は復習が中心になり、個別のアドバイスが多くなりました。
新しく稽古したパターンもありましたが、基本的にはメインになった技に付随するもので、これまで出席していた人の場合は比較的スムーズな動きになっていました。
でも、初めて参加した人の場合、動作自体は経験しているものの、今回稽古したような意識で行なったわけではなく、魂が入っていない分、行為だけに終始し、武技としてのクオリティには疑問符が付く状態でした。
これから研究稽古にも参加するのであれば、そういったところを修正し、心技共にステージアップすることが要求されます。
稽古に入る前、研究稽古で意識すべきことについて説明し、その上で始めたわですが、前述したように現実の稽古では懸念した様子がそのまま表れました。
少年部から昇格した道場生ですが、大人としての自覚の上で成り立っている稽古だから、というところを感じてもらった1回目だったように思えます。
意識の変化は徐々にだと思いますが、今後の精進に期待しています。
ということで具体的に稽古した内容ですが、これまでのお話でピンときた人がいらしたかもしれません。
最近、「基本動作Ⅰ(きほんどうさいち)」に登場する動作をベースにそれを武技として稽古していますが、前述のように復習として行なったという話は関節技や「手解き(てほどき)」の技です。
その中に上の3枚の連続写真に写っているように、「順突き(じゅんづき)」の後、前足を1歩引きながら「中段外受け(ちゅうだんそとうけ)」を行なうシーンがります。
この時、呼吸法を伴い、全身の締めと共に行なうわけですが、そのことが武技として行なう際の基礎的な身体操作に関わってきます。
「基本動作」として単独で行なう時は、基本として行なったことをいくつかにまとめて数をこなすくらいに思っていた人もいたと思いますが、これまで「受け」や「突き」としてしか見えなかったところに、異なった用法が隠されていたということを知ることで、武術の深さを感じた人もいたのではと期待しています。
少なくとも一般部の上級者の話からはそのような感想を耳にしていますので、私が意識していることが伝わっているようです。
そこで具体的な技の内容ですが、タイトルには最初に関節技という記述がありますので、そちらから説明します。
なお、今日アップする写真は、以前の稽古の際に撮ったものですので、当日の組み合わせとは異なる、ということを予めお断りしておきます。
まず設定ですが、上の写真からお分かりの様に、技を掛けている側の左手首を右手で掴んだ場合の対処法として行なっています。
この時受ける側は冒頭の写真のように掴まれている側の足を1歩引き、「中段外受け」の要領で相手の裏肘に前腕部を当て、掴まれている側の上肢を引くと同時に相手の肘関節の逆を取る意識で締め上げます。
接触部位を正確に裏肘とし、屈曲する方向とは逆に動かすことで肘関節にダメージを与えます。もちろん稽古ですから、本気で行なうことがないようにしますが、きちんとできればそれなりの効果を実感できます。
次の「手解き」の用法になりますが、ここでは掴む側が左手になった場合です。掴まれる側は前述のように左の手首で、掴む側の条件を変えて行ないます。
掴む感じは似たような感じになりますので、つい反撃のための動きも勘違いしてしまいますが、今度は上に写真のように先ほど相手の裏肘に当てた前腕は手首の内側になります。
引き手の回旋と共に手首を掌屈方向に動かしますが、タイミングを合わせると面白いように外れます。
逆に言うと、連動が上手くできない場合には力技で外そうとし、「手解き」が難しくなります。こういうところで改めて武技というのは全身で行なうこと、という学びができますが、最初の内はパート別で学び、少しずつその統合を意識します。
ところで、この稽古は初参加の道場生を念頭に置きつつ、先日稽古した道場生に対しては復習ということで行ないましたが、その際の立ち方はいずれも「正整立ち(せいさんだち)」でした。
でも「基本動作Ⅰ」には上のイラストに示したように、「四股立ち(しこだち)」による「外受け(そとうけ)」の箇所があります。
「正整立ち」との違いとしては腰の高さになりますが、今回の設定では掴まれる時点では普通に立っている状態でのことですから、腰の高さは低いわけではありません。
しかし、腰の高さが落ちるということはそれだけであるパワーが生じることになり、それを武技に活用するというのは武術ではよくあります。
この日、新しい技として、この身体操作を加味して行なってもらいました。
ただ、この様な動きは技を掛ける側の勘違いも生じやすいわけで、最初にこの技を教えた時の様に技を掛ける側の姿勢が崩れてしまう、というシーンも多々ありました。
それでは武技になるどころか、さらに相手に隙を与えることになりますので要注意になります。
そうなる原因は意識の不足もありますが、武技に必要な武術体の質が低いということもあります。
こういう技を用いる場合、身体の中心軸がしっかり備わっていることが必要ですが、これまでカタチだけで稽古しており、こういった基礎的な部分が抜けている場合、稽古を通じて行為だけでなく武術体の錬成も意識することが必要になります。
研究稽古に参加する場合の条件として、単に動きを学ぶだけでなく、その根底に存在するところまで見通してもらえればと願います。
ところでこの日、腰の落とし、丹田の落としを活用した技を紹介しました。
この日の稽古メニューの関連事項になりますが、そのことは短くなりますが、明日のブログでお話しします。
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