「わろてんか」 第47回
第８週 「笑売の道」
木戸銭を半値に・・・
誰もやってない事をやるの巻
てん） 風太！
風太） おう。大丈夫か？
てん） ゆうべいっぱいわろた
さかい、大丈夫え。
風太） そうか。
（帽子を脱ぎ、藤吉を見る風太）
風太） てんの事、頼んます！
（頭を下げる風太）
藤吉） ああ。
風太） あっ、ほな、帰ろうかな。
てん） みんなによろしゅうにな。
風太） ああ。相変わらずゲラで、
わろてばっかりやて言うとくわ。
てん） おおきに、風太。
風太） ああ。ほな。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
藤吉） お母ちゃんに、相談があるんや。
啄子） 相談？
藤吉） それと、てんにもな。
てん） うちにも？
藤吉） うん。なるべく早いうちに、
風鳥亭を、会社にしよう思うんや。
啄子） 会社？
てん） 今とどう違いますの？
藤吉） 風鳥亭が会社になったら、
世間から、信用もされる。つまり、
いろんな仕事がやりやすうなるんや。
てん） それはよろしいなぁ。
藤吉） お母ちゃん、どやろ？ アカンか？
啄子） アカンとは言わん。
けど、わてもあんたらに、
言いたい事がありますんや。
てん） え？
藤吉） は？
啄子） そろそろ、結婚してくれまへんか？
藤吉・てん） は！？
藤吉） いや、結婚を反対してきたんは
お母ちゃんやないか。
啄子） 反対してたんやない。あんたが北
村屋を再興させたらすぐに許したるって、
ず～っとそう言うてきてますやろ。
藤吉） いや、そらそうやけど…。
啄子） ちゃんと結婚してたら、お里にも
挨拶に行けたやろに…。すまんなぁ。
（頭を下げる啄子）
てん） 実は、うちも、
相談がありますのやけど。
藤吉） 相談？
てん） 木戸銭を、思い切って半値に
してみたらどうですやろ？
藤吉） 半値？
てん） 10銭を、５銭にするんです。
藤吉） ５銭！？
てん） へえ、５銭です！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
亀井） そやけど、木戸銭半分にするいう
事は儲けも半分になるっちゅう事でっせ。
岩さん） わしらの給金も半分か？
てん） そんな事ありまへん。お客さんが
ぎょうさん入れば、儲けは半分やのうて、
倍にもできるはずです。
万丈目） そう簡単にお客は増えんやろ？
てん） けど、呼び込みしてても、10銭は
高い言うお客さんが多いし。これが5銭
になったら、お年寄りや女の人らにも、
もっと気楽に寄ってもらえる思うんです。
ｷｰｽ） そんなうまい話…。
啄子） そんなうまい話、
ある訳おまへんわなぁ。
万丈目） そうでっしゃろ？ ごりょん
さんがいてくれはってよかったわ。
啄子） あんたらも、みんな反対か？
ｷｰｽ） そらそうや。無理に決まってる。
亀井） アカンアカン。ねえ！
岩さん） そらできへん。
啄子） なるほど。あんたらがこんなに
反対しはるちゅう事は、うまい事いく
かもしれまへんなぁ。
ｷｰｽ） 何でや！
啄子） 北村屋家訓その二。
てん） 才覚とは、
どこに商いの勝機があるか見極め、
誰もやってない事をやる事。
啄子） そういう事です。
てん） へえ！
啄子） 勝負に出る時は、
思い切った手打たなあきまへん。
あとは、藤吉郎に任せまひょ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
藤吉） 寺ギンさん。
寺ギン） あ？
藤吉） もし…もし儲けを、今の倍に
したら、7分3分の条件を、5分5分
にしてもらえますか？
寺ギン） 儲け倍にする？
藤吉） はい。木戸銭を、半分の5銭
にして、お客さんに、ぎょうさん来て
もらいます。
寺ギン） そんな事できる訳ないやろ！
藤吉） できたら、5分5分に
変えてもらえますか？
寺ギン） えええ。そんな夢みたいな事
でけたら、条件変えたるわ。
藤吉） おおきにありがとうございます。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
てん） どないですか！
わろていきまへんか？
藤吉） わろていきませんか！
五銭寄席でっせ。
てん） 風鳥亭です。
五銭でいろんな芸が見れまっせ。
藤吉） 大阪初の五銭寄席、
わろていきませんか？
万丈目） うどん一杯の値段でわろて、
腹いっぱいになりまっせ！
ｷｰｽ） 青物市場のおにいさん！
仕事終わりにどうでっか？
それから、風鳥亭の客足は、
順調に伸び続けていきました。
藤吉） すごいわ。ええ調子や。
啄子） ええ調子なんはええんやけど。
このままでは、人を雇わな、わても
てんも倒れてしまうわ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
てん） うちで働きたい？
トキ） はい。
てん） 何で？ 藤岡屋は？
トキ） お暇を頂きました。
てん） え？
トキ） 藤岡屋は今、おりん様と若旦さん、
お二人で立派に切り盛りしてはります。
奥様も許してくれはりました。
てん） お母はんが？
トキ） お願いします。
ここに…ここに置いとくれやす。
啄子） ええやないか。
お茶子さんの手足らんのやし。
トキ） ごりょんさん…。
藤吉） ほな、決まりやな。
トキ） おおきに。ありがとうございます。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
トキ） このお座布、一回り小そう
作り直してみたんですけど…。
これやったら、横にも、縦にも、
ほら、いっぱい並べられます。
てん） ホンマや！
これならお客さんぎょうさん入るわ。
トキ） へえ。
啄子） あっぱれや！
トキ） それと、客席で売るもんを、
するめとか、塩辛いもんにしたら
どないですやろ。
てん） え？
トキ） そしたら喉が渇いて、
飲み物が売れるんやないかて。
啄子） 気に入った！
あんたさえてますで！ 商人向きや。
トキ） おおきに、ありがとうございます。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
頼もしい助っ人の登場もあって、
風鳥亭は、ますます繁盛し、
ひとつき後…。
藤吉） どや？ どないや、売り上げは。
万丈目） どや？
ｷｰｽ） どや？
岩さん） どや？
亀井） どや？
トキ） どないです？
てん） もうちょっと待っとくれやす。
（そろばんをはじき終えるてん）
てん） やりました！
目標に届きましたえ！
（歓声）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
寺ギン） 儲けが倍になった？
藤吉） はい。
（寺ギンの前に紙幣と硬貨を並べる藤吉）
藤吉） これが今回の、売り上げです。
約束どおり、木戸銭の取り分の条件、
7分3分を、5分5分にしてもらえますか。
それでも、寺ギンさんの実入りは、
前より増えます。
寺ギン） フフハハハハハハハ！
お前も席主らしゅうなったのう。
よっしゃ、手ぇ打とう。
藤吉） ホンマですか？
寺ギン） おう。6分4分や。
藤吉） は？ いや、こないだ儲けを
倍にしたら、条件変えてくれるて…。
寺ギン） おうそやから条件変えた
ったんや。6分4分に。
藤吉） んなアホな！
寺ギン） 嫌やったら芸人全員
引きあげるだけや！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
藤吉） すまん。
てん） 十分です。次は向こうから、
条件変えてもええさかい、うちの
芸人使てくださいて言わせてみ
せまひょ。
藤吉） そやな。よっしゃ！
もっともっと頑張って稼いで、
お母ちゃんにも誰にも遠慮せんと、
俺らの祝言挙げるで！
てん） へえ！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
一方、ごりょんさんの前には、
また、意味ありげな絵ハガキが…。
（二枚の絵ハガキを前に、
手紙を書いている啄子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
明治45年（1912年）春
そして、風鳥亭が、営業を始めて、
１年がたちました。
藤吉） 今日は、わざわざお越し頂き、
まことにありがとうございます。てん。
（しずの前に封筒を置くてん）
てん） お父はんにお借りした500円、
これが最後の返済分になります。
しず） お父はんの代わりに、
ちゃぁんと受け取りましたえ。
ようお気張りやしたなぁ。
てん） おおきに。
藤吉） ありがとうございます。
しず） 今日は、あんたらの寄席、お父
はんと一緒に見させてもらいます。
（しずの手に、儀兵衛の写真）
てん） はい。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
新一兄さんの死もてんの笑顔と一緒にナレ
で語られて終わりだったくらいだから、それ
よりはきっとマシな扱いなのだろうけど…。
父・儀兵衛の死も、軽い軽い。哀しいほど。
笑いは人の心を癒す薬のはずが…わろて
んかを見てると、どんどん笑えなくなる…。
画面から、わろてわろてと言われるたびに、
寒々しい気持ちになって、増々笑えない。
ドラえもん（伊能栞）だけでは飽き足らず、
ドラミちゃん（トキ）までもが来てくれて、
人手不足も、アイデア不足も即解消～！
すごいね。いつもいつも、カモがネギと
鍋までしょってやって来るんだもんね～。
棚から牡丹餅、棚から栞、棚からおトキ、
いいな～。そんな魔法の棚が欲しいよｗ
でもまあ、なんとかいいところを頑張って
探してみれば、話が先に進んだことはよ
かったかもね。借金を返して、結婚でき
るようになりそうだし。あとは、芸人たち
の成長を見せてくれればね～。まったく
期待してないけどガンバレー（棒読み）。
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