手元に届いた一本のフルート。
私のEスケールのフルートはこれで4本目。
どれも、特別な笛ばかり。
それぞれにドラマティックなストーリーがある。
いつも使っている、非常に重たい竹のフルートは、非常に特殊な竹で作られた子で、この子がいないと何も吹けないとゆうくらい、尊敬していたパートナー。
だけど、今回の笛は、届いた初日からメインの笛。
笛を変える時は、いつも恋人を乗り換えるくらい苦しい。
この子は、3年近く前に、まだ穴も空いていない竹の状態で見つけた子。
柄も汚い竹だったけれど、ビックリするくらい手に馴染んだ。
穴が空いた時、非常に渋い笛になった。
これは、時間がかかる!
だけど、数ヶ月間、これだけを吹き続ければ、絶対にすごい笛に化ける!!
(笛は、人が吹いて湿度が変わると変化する)
と、確信して、すぐにこれが欲しいと伝えた。
それから、数ヶ月、微調整が繰り返されて、なかなか完成せず…。
また数ヶ月に、気が付いたら、先生の笛になっていた。
その時、私には、誕生日にもらった重たい笛がすでにあって、欲しいと言えなくなってしまっていた。
それに、先生が吹くと非常に良い音がして、
私が吹くと違和感しかなかった。
すでに、先生様に変化してしまっていた。
それから1年以上経ち、私はムンバイに移り、グルジと一緒にデリー遠征に出た時、
ある有名なフルート奏者が、新しい笛を手に入れたと見せてくれた。
それが、その笛だった。
その場で抗議して、買い戻そうとしたけれど出来ず。
1人になった時に先生に電話すると、デリーの先生が席を外している間に、グルジが売ってしまったそうだ。
それから、持ち主の顔を見る度に、売って欲しいと懇願したのだけれど叶わず。
また半年が過ぎた。
ある日、いつものようにデリーの先生に電話すると、例の笛があるとゆう。
なんと、何度も交渉して、笛を取り返してくれたそうだ。
もちろん、すぐにムンバイに送ってくれるように頼んだ。名古屋に間に合うように急ぎで。
その笛は、白い糸が非常に美しかったのだけど、前の持ち主が気がつくと良い気がしないと思って、赤い糸に変えてもらった。
届いた笛は、綺麗にクリーニングされていて、薄くオイルでコーティングしてあった。
いつも以上に本当に丁寧な仕事。
早速試した笛は、驚くほどにバランスの取れた状態だった。
普通は、仕上がるまでに時間がかかる。
ある期間、良い演奏者が演奏しないと笛は整わない。
ここに来るまで、色々あったけれど、レベルの高い演奏者だけが吹き続けてくれて良かった。
色は、前の持ち主に使い込まれて変色してしまっているけれど、きちんとクリーニングしてあるので、数ヶ月前に試した時の違和感は無くなっていた。
私も、この笛が出来上がる前の調節段階で散々練習を共にしたので、覚えてくれたのか?
笛が語りかけてくるように、変化を一つづつ教えてくれる。
可愛い子。
笛の状態は既に出来上がっているので、今度は私が笛に育てられる番だと思うと、面白い。