短編 26.弟みたいなキミにときめくなんてありえない | 「蒼い月の本棚」~小説とハムスター(ハムちゃん日記はお休み中)~

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趣味で小説を書いています。絵を描いたり写真を撮ったり、工作をしたり書道をしたり、趣味たくさんです。古典で人生変わりました。戦国時代&お城好き。百人一首とにかく好き。2016年、夢叶って小説家デビューできました。のんびり更新ですが、どうぞよろしくお願いします。




第1話はこちら↓






まぶたに感じる眩しさで目を開けると、朝になっていた。額には濡れた手拭いがのせられている。隣にいたはずの男の姿はない。

先に寝たと思っていたあの男が、私にこれを?

手拭いを取って枕元に置くと、床に手をつき、ゆっくり起き上がる。眩暈や頭痛はおさまっていた。囲炉裏の焚き火は、まだチロチロ燃えている。私は、小屋の中を歩いて回った。昨日は暗くてわからなかったが、小屋の中は整理されていて、棚には本がたくさんあった。


「起きたか!」

扉が開いて、男が駆け寄ってくる。

「あの…」

話そうとするのを遮るように、男の手が額に飛んできた。手のひらがパチンとくっついてから数秒。男は、口角をきゅっと上げて私に言った。


「よし、下がってる。話していいぞ」


フーッと大きく息を吐いた男は、手に持った桶を地面に置き、柄杓で水をすくってガブリと飲んだ。

「私にも…ください」

「ああ、ほら、飲め」

男は、水の入った柄杓を私に手渡した。それを一気に飲み干すと、今度は自分ですくって味わうように飲んだ。

「おいしい」

「だろうな、3日も飲まず食わずで眠ったきりだったから」

「3日?」

「ああ、そうだ。腹も減ってるだろ?」

そういえば、お腹もぺこぺこだ。

「もう少ししたら、メシが来るから待ってろ」

飯が来るって、出前のこと?私は、深く考えずに頷くと、水をもう一杯すくって飲んだ。






つづく