帝国とは何か? | Bokensdorfのブログ

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国際結婚から考えた「隠れた構造・隠れた文化」について
加えて「世の中の仕組みは実はこうなっている」について書きます

帝国というものを今まで間違って理解していた事を知りましたので自分の為に整理しておきます。


「帝国」というのは明治時代の初めに外国語をたくさん訳した訳語のひとつですが当時の訳語というのは新しく作り出した日本語ですから定義が間違っているもの即ち「誤訳」がとても多かったと私は思う事がよくあります。

たとえば、を書かないと話が進みませんね。


例えばデモクラシーを民主主義としたのは誤訳ですね。よく言われる事ですから掘り下げません。

封建というのも誤訳です。もともと江戸時代の幕藩体制のことを意味する日本語だったのをfeudalismの訳語に当ててしまった。

中世という概念を輸入したのも当時の日本人の誤りです。日本に中世は無いです。
そこに「中世にあったものだから封建だろう」とヨーロッパの「feudalism」をはめ込んでしまった。

「feudalismというのは幕藩体制とはまったく違うシステムのことだった」
(出所:歴史とは何か 岡田英弘 文春文庫149ページ)


別の所でも繰り返し書いていますが外国の言葉と一対一で同じ意味の日本語というものはひとつも無いのです。愛とLOVEはちっとも同じではない etc...


まだまだありますが割愛。


で、「帝国」というのは私は小学生の頃から「皇帝がいる国家体制」のことだと理解していました。ローマ帝国とかモンゴル帝国とか、よくも皇帝の支配があんなに広大な範囲に及んで統治できたものだな、今ではそんなに面積の大きな国家なんて建設も統治もできない、昔はよっぽど権力者の力が強かったのかなそれともそんなスケールの大きな人間が現代は産まれない仕組みになっているのかな、などと空想したものです。

大日本帝国だって、天皇をいただいた国家の名前だし、帝国主義というのは支配力の及ぶ範囲を拡張しようとする国家の運動を言うのだ、と理解していた。

間違いでした。

大日本帝国も、empireを「帝国」と訳してしまって(私は「国」を入れた時点で誤訳だと思います)まるで「国家の形態のひとつ」のように日本人は誤解している。

違うそうです。empireは国家の形態を意味するのではない。

empireの定義は「影響力の及ぶ範囲」なのです。「皇帝が統治する国家」ではない。(出所:歴史とは何か 岡田英弘 文春文庫191ページ)

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辞書には「皇帝が統治する国家」のように書いてあることもありますが、

例(New Oxford American Dictionary 3rd edition © 2010 by Oxford University Press, Inc.)
empire |ˈemˌpī(ə)r|
noun
1 an extensive group of states or countries under a single supreme authority, formerly esp. an emperor or empress:
empire (adj.)
[ in names ] : the Roman Empire.
• a large commercial organization owned or controlled by one person or group: her business empire grew.
• an extensive operation or sphere of activity controlled by one person or group: the kitchen had once been the ladies' empire.
• supreme political power over several countries when exercised by a single authority: he encouraged the Greeks in their dream of empire in Asia Minor.
• archaic absolute control over a person or group.

英国の英英辞書 Oxford Thesaurus of English 3rd edition Copyright © 2009 by Oxford University Pressにはこう書いてある。

empire
noun
1 kingdom, realm, domain, territory, province; commonwealth, federation, confederation; power, world power, superpower; jurisdiction; Latinres publica.


そもそも、ローマ帝国にしたって、ローマ人が移動してきた遺跡はヨーロッパの各地に残っているけれども、「国境」があってそれが移動・拡張していった訳ではありません。モンゴル帝国にしたって、「国家」が膨張していった訳ではありません。「影響力の及ぶ範囲がだいたいこのへんまでだった」というのが帝国の地図だ、と考えれば小学生の疑問(こんなに広大な範囲に組織的な統治が可能な筈が無い)にも答える事が可能です。

だいたい、「国家」という概念自体が18世紀末にできた新しい概念ではないか。
(「国家(Nation-state)」という概念はフランス革命やアメリカの独立が始まり)

■ 学校で習ったが「国家」の定義は「領土、国民、主権」があること=人為的な作り物である=自然発生的に存在するものではない、ということです。(小学校でそう教えて欲しかったなぁ)


神聖ローマ帝国とか第三帝国とか現在のドイツのあたりに過去に帝国があったが、それも同様に「だいたいこの辺まで」という意味であって「国家」があった訳ではない。領土なんか入り乱れて毎年のように変わっていたし、地方君主の領土を年代によって色分け表示するパソコンソフトまである。ドイツが初めて国家になったのは1871年のことです。

※だから「13世紀のドイツの貴族があなたの前世です」・・・なんて言う人は歴史をまったく理解していないインチキなのである。



だから「帝国」というのは「国家の一形態ではない」「皇帝が統治する国家などではもちろん無い」というのが歴史を理解する為に重要なことなのだということをメモしておきたかった。

そもそも日本は学校で現代史を教えないし「歴史」というものを正しく子供に教育しようとしていないのが問題の根本にあると思うのである。歴史音痴を作ったら国民国家はうまく運営できません。

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