調布飛行場の墜落事故(2015.7.26)の原因は分かっている | Bokensdorfのブログ

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国際結婚から考えた「隠れた構造・隠れた文化」について
加えて「世の中の仕組みは実はこうなっている」について書きます

まずは亡くなられた方々にお悔やみを申し上げます。

飛行機というのは、離陸前に確認する事が航空法によって決まっています。
(正確には「機長の出発前の確認事項」と言います「航空法第73条の2、施行規則第164条の14」)

墜落した飛行機の離陸時の映像が公開されましたが、
離陸滑走距離が異常に長く、離陸後も正常な上昇をせず、機首上げの操作をして失速したことが分かる。

これはどういうことかというと
「離陸に必要な推力が得られなかった」
ということです。それはエンジンが故障していたという意味ではありません。
それは、「機体が重かった」「揚力が得られなかった」「気温が高かった」「向かい風が弱かった」「離陸の滑走路が短すぎた」などの、機械的な故障以外の要素も原因になるものです。

そして、それらのどれが原因だとしても、機長の操作によって100%、事故を予防できるものです。

どのようにして予防するかというと、
出発前の確認事項をすべて行うと、「ETOD」というものが計算で分かります。
ETODとはEstimated Take Off Distance の略語で、操縦士なら100%の人が知っています。
日本語にすると「予測する離陸滑走距離」です。それは機体重量や気温や滑走路の長さで一義的に決まるものです。一義的に、というのは「誰が計算しても同じ答えになる」ということです。

その距離で離陸できないときは、離陸を中断するのが機長の義務です。離陸を中断しても、その滑走路上で「安全に停止できる限界の距離」がETODです。

事故機の離陸時の映像を見ると、異常に離陸距離が長い。
これはETOD以上の離陸滑走をしているのです。本来はETODを滑走して離陸できなかったら「離陸中止」をしなければならない。それで墜落事故は100%予防できるのです。操縦士の常識です。

つまり、この事故は機長の人為的ミスです。どうして誰もそう言わないかというと「証拠」がまだ何も出ていないからで、実際はプロの操縦士なら100%の人が原因を知っています。


運転する人のミスで死傷事故が発生するのは、地上では毎日のようにあることです。
それが飛行機だと「珍しいから」これだけ大騒ぎになり、「飛行場の危険性」などが言われますが、存在する事が原因なら、「自動車道路の廃止」を言いますか?「自動車の運用の制限」を言いますか?

今回の事故の発生率を下げる方法はあります。例えば「操縦士を二人にする」です。
しかし、それは人の少ないこの世界では現実的ではない。
それに、たとえ「二人体制」にしても、実際は航空事故は起こります。起こっています。事故をゼロにすることはどんな業界でも不可能なことです。

ですから「飛行場の危険性」をあげつらうのは的が外れている。この事故の原因は飛行場ではないからです。


それから「遊覧飛行だったのではないか」と、法律に無知な人が騒いでいますが、事故原因とは関係のないことです。今回の事故機の飛行は「遊覧飛行」ではないのです。「遊覧飛行」は航空法に定義が書いてあります。それは「不定期航空運送事業」の業務として行うものの事です。それには「不定期航空運送事業免許」というものが必要です。カンタンに言うと「不特定の他人からお金をもらって不定期の路線を飛行する」のが「遊覧飛行」です。調布飛行場がなぜ「遊覧飛行」を禁止していたかというと飛行場で遊覧飛行をされると飛行機がバンバン飛ぶ事になって、騒音対策やら住民からの反対やら、都合の悪い事が増えるからです。これは誰かに聞いた事ではありませんが、航空業界の人間ならカンタンに想像がつくことです。

ですから、知り合いとか家族とかを乗せて飛行しても「遊覧飛行」ではないのです。「慣熟飛行」に「誰を乗せてはいけない」という法律はありません。技量維持のために飛行するときに自分の家族を乗せても違法行為では無い。たとえ今回の機長が搭乗者からお金をもらっていたとしても、友人を乗せて「燃料代にしてくれ」と言われてお金をもらうのは、自家用車で旅行するときにも普通にすることです。それが「二種免許をもっていないから違法だ」と誰が言いますか?

遊覧かどうかは、まったく事故とは関係が無いし、違法行為でも無い。

事故は機長の離陸時のミスが原因なのです。気の毒ですが、そういうことです。
亡くなった方々にはお悔やみを言います。
けれども、これが飛行場の運用の制限になったり廃止運動が起こったりするとしたら、進むべき方向が間違っている。飛ぶ事の自由を制限する方向に行かないように、私は希望します。





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