犯罪のあるところ、男女の愛の悲哀あり。
◇見えない死◇ -Death Escapes the Eye-
コーネル・ウールリッチ 門野集 訳
都会の雑踏と闇のなかで生きる孤独な人間の愛と死をつねに描きつづけたウールリッチの傑作選。「ショウボート殺人事件」「私の死」「妄執の夜」「二本立て」「見えない死」「義足をつけた犬」の六篇を収録。
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1.ショウボート殺人事件
(The Showboat Murders)
……ホワイティは警察官。だが恋人ダルシイはデートの時間が持てなくて不満が爆発している。仕方なくショウボートに出かけるが不審な行動をしている女を見かける。ホワイティがそれを追跡するとーーー
2.私の死
(Death of Me)
……借金で首が回らなくなったウォルターは死のうと思って、でも拳銃では死ななくて外に出た。鉄道レールを歩くとそこに何と礫死体が。顔は分からないが背格好は同じくらい……ウォルターはその人間と人生を交換することにした、そいつが泊まった部屋から金を盗った。だがそれが……
3.妄執の夜
(Marithuana)
……ほんの気晴らし、の筈だった。妻と別れたばかりの傷心のターナーを励まそうとマリファナを勧めたのが全ての始まりだった。麻薬に取り憑かれて次々と人を殺してしまうなんて。その中にはターナーの最愛の女も……しかも……
4.二本立て
(Double Feature)
……警察官メリルは恋人ベティと二本立ての映画を観に行った。途中ニュース映画を挟み、指名手配犯ハーマンの顔が映る。メリルはその時嫌なものを感じた。するとなんとーーーハーマンが映画館にいるではないか! しかも自分の近くに! ところが少し席を外した隙にベティを人質に取られてしまった!
5.見えない死
(Death Escape the Eye)
……殺人ミステリ専門の雑誌編集者のリジーは一目見て新人作家ドワイトを好きになった。彼には美しく派手で奔放な元妻が居て、彼女から未だ離れられないと分かっていても。しかし彼はリジーを拒絶した。哀しくもそれを受け入れた、後日……
6.義足をつけた犬
(The Dog With a Wooden Leg)
……「妄執の影」参照。
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「見えない死」です(・∀・)
東京創元社でもなく早川書房でもなく、しかも聞いたことのない出版社でしたが未読作品が多くて大変満足な1冊でした。
ウールリッチは殺人者になってしまった普通の人の苦悩、恐怖、悲哀、破滅で1000ページを埋められる作家ですが、同じくらい犯罪に巻き込まれてしまった男女を描くのも上手な作家です。特に3は後味の悪さが、5は「もしかして……?」としこりを残す不穏さが最高です。ヴィニーはスピレーンから告げられた後どうしたのか……
あと「愛というやつは、最低ね」は名言。こいつのために人間は愚者にも犯罪者にもなります。その振り回される様がとてつもなく人間的で、好きなんですけどね。
「見えない死」でした(・∀・)/
無骨な車引きが捧げた、その想いはーーー(*^o^*)/