フィリップ・K・ディック No.27◇あなたをつくります◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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リンカーンとスタントンのシミュラクラを作る。それがだんだんとルイスの精神を脅かすことになろうとはーーー






◇あなたをつくります◇ -We Can Build You-

フィリップ・K・ディック 佐藤龍雄 訳



弱小電子楽器業者が起死回生の策として打ち出した新商品は精巧な模造人間の製造だった。宇宙開発用ロボットを改造し、歴史上の人物に関する生前のありとあらゆるデータを詰め込んで、この世に“再生”させたのだ。しかも驚いたことに、そいつらは人間以上に人間らしかった。彼らはこれをアメリカ一の実業家に売り込もうと画策するが……。



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1981年。ルイスは共同経営者のモーリーと共にスピネット・ピアノと電子オルガンを売っているが最近は電子オルガンの売れ行きが悪い。ライバル会社がより性能の良いオルガンを製作するので時代遅れ化しているのだ。このままでは立ち行かなくなる、と危惧したモーリーが提案したのはシミュラクラ、つまり機械人間の製作だ。



シミュラクラが南北戦争を再現したら? モーリーはまず北軍陸軍長官スタントンのシミュラクラを製作させる。これがなかなか出来ていて、見かけは勿論、考え方も人間そっくりだ。こいつを大富豪バローズに売り込む、というのがモーリーの考えだ。



シミュラクラをカラクリ人形と混合するほど乗り気では無かったバローズの考えはスタントン・シミュラクラの自発的訪問で急展開どころか話が完全にバローズの月世界不動産の話にすり替えてしまった。ルイスもモーリーもヤバいと気がついてもすでに遅く、会社もシミュラクラ開発者のプリスも完全にバローズに取り込まれてしまった。



ルイスは2体目のシミュラクラ、リンカーンの助言を得ながらプリス奪還に奔走するがそのうち彼の精神はプリスを愛するが故に変調をきたし……



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「あなたをつくります」です(・∀・)



前半は企業小説、後半はディック十八番の精神を扱う破綻した小説です。最初はいかに会社をどう維持するか、シミュラクラ製作に必要なプリスをどう取り戻すかに焦点がおかれますが、精神病患者として診断されて入院されてからはその要素どこ行った並に消えてしまいます。リンカーン……。゚(゚´Д`゚)゚。 というか企業小説面でも最初の「シミュラクラで南北戦争」案もいつのまにか消えるのでそんなもんか←



いつのまにか消えちゃうものも有れば生まれるものも有るものでプリスを好き過ぎて精神病患者になるルイス。もともと核兵器の影響で身体精神共に「異常」と診断されてしまう人が多い世界です。診断するためのテストもきちんとあり、診断されるときちんと管理監視されています。そんなにプリスって良い女だったん? って感じで唐突でしたが考えてみればディック作品はこの手の女いっぱいいるし、ディック・ヒーローならむしろ定型的なのか← いつ自分も精神病患者になるか……その不安定さがある意味その心配が皆無なシミュラクラを重要視する理由の1つなのですね。機械人間を重宝する人間……21世紀の終わり頃には実現しそうだ。



「あなたをつくります」でした(・∀・)/ 

消えた2人の少女。彼女たちはどの犯罪の裏に消えたーーー(*^o^*)/