フィリップ・K・ディック No.28◇フロリクス8から来た友人◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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プロヴォーニが連れて帰る異星人は〈旧人〉にとって救世主になり得るか?






◇フロリクス8から来た友人◇ -Our Friends From Frolix 8-

フィリップ・K・ディック 大森望 訳



22世紀、世界は高い知能を有する〈新人〉と、超能力を持った〈異人〉が、60億の〈旧人〉を支配する階級社会と化していた。タイヤの溝掘り職人ニック・アップルトンは、息子を公務員にすることを願う典型的な〈旧人〉だが、黒髪の少女チャーリーと出会って……。一方、〈旧人〉の期待を背負って深宇宙へ旅立った伝説の人物プロヴォーニが、地球外生命体の〈友人〉とともに帰還しようとしていた……。鬼才のディストピアSF。



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22世紀。人類は3層に分けられている。恐ろしく高い知能を持つ〈新人〉、超能力や異能を持つ〈異人〉。それ以外の〈旧人〉。世界の上層部は先の2つが占拠し、政策決定にも関与できない。〈旧人〉の望みは公務員試験だがそれに受かる可能性はほとんどない……



タイヤの溝掘り職人のニックは息子ボビーに期待をかけていたが試験は不合格で絶望する。職場の上司アール・ジータは〈旧人〉の中でも差別される〈下級人〉で、この政情を打破しようと遠い昔に宇宙に旅立ったプロヴォーニと彼の代弁者たるコードンだけに望みを賭けている。コードンの言葉を印刷・出版している少女チャーリーとボーイフレンドのデニーもその1人だ。2人のいざこざに巻き込まれたニックは彼女を匿う形で否応なしに〈下級人〉の仲間入りを果たす……



一方、プロヴォーニは〈グレイ・ダイナソナ〉に異星人にして"友人"モルゴと共に地球に帰還中。

モルゴはフロリクス星系人。相手の脳を乗っ取り、神経を破壊し、空っぽになったそこに介入することで今の政権打倒を目指す。ーーーいわば乗っ取りだ。プロヴォーニの帰還まで7日を切ろうとしていたーーー



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「フロリクス8から来た友人」です(・∀・)



階級(ディストピア)社会に終止符を! の流れを組むディストピアSFです。

ディストピア社会とはつまり階級社会のことです。そこから脱出することはできますが上がることは絶対に出来ません。下がる一方です。しかもその下になるということは下手したら国民と見做されなくなる、を意味しますが、本作の場合、特性で区別されるため上がることも下がることも出来ません。そのままです。というか〈旧人〉というネーミングがもはや嫌だ。



しかしそれでも希望はあるもので、プロヴォーニという男が政権打倒の手段を手に入れるために宇宙に旅立ち、しかも成功して戻って来ます。その手助けをするのは地球人ではなく、異星人。題名通り「フロリクス8」。地球人が思い浮かべるような身体を持たない、脳に侵入出来る全てになることで長い年月を生きてきました。



そのフロリクス星人が〈異人〉〈新人〉の脳に入ったらどうなるか……ディック流「全てを1からやり直せ」並みの荒療治。高い知能も異能力も無ければ〈旧人〉同然です。いや、彼らよりも酷い? そこからどうやって立て直すのか……未来が気になります。



「フロリクス8から来た友人」でした(・∀・)/ 

あの作家の故郷に行ってみませんか?……(*^o^*)/