太宰治 No.8◇津軽◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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文豪、懐かしき「津軽」を知る旅へ。






◇津軽◇

太宰治



太宰文学のうちには、旧家に生れた者の暗い宿命がある。古沼のような“家"からどうして脱出するか。さらに自分自身からいかにして逃亡するか。
しかしこうした運命を凝視し懐かしく回想するような刹那が、一度彼に訪れた。それは昭和19年、津軽風土記の執筆を依頼され3週間にわたって津軽を旅行したときで、こうして生れた本書は、全作品のなかで特異な位置を占める佳品となった。
詳細な注解を付す。



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「その爆発の原因が《荒覇吐》なんだとよ」中也は顔を歪めた。「《羊》の中には噂好きな奴が多くてな。……噂じゃ六年前、捕虜になった海外の兵士が、租界近くにある軍の秘密施設で拷問を受けた。拷問官はヘマをして、そいつを死なせちまった。だが死んだ兵士が怒りと恨みから《荒覇吐》を呼び起こし、黒い炎を伴って蘇った。……ちなみに、地獄で《荒覇吐》を呼び起こせるのは、生前に人を殺しまくった奴、死者の魂を無数に纏い、その上でさらに強い怒りを抱いて死んだ人間だけだって話だ。(以下略)」

(中略)

「ああ。だが一人の人間が脳味噌の中に収めるには、《荒覇吐》の力は巨大過ぎた。やがてそいつは理性も人格も吹き飛んで、制御不能の怪物となり、地面ごと自分の体を焼き尽くして蒸発した、って話だ」



ーーー「文豪ストレイドッグス 太宰、中也、十五歳」より



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「津軽」です(・∀・)



実は本書は「制覇計画」中には無く、読むつもりはありませんでした。読もうときっかけは「文豪ストレイドッグス 太宰、中也、十五歳」のキーパーソンである「荒覇吐」が原作者によるオリジナル用語じゃ無いな、と気づいたからです。

つーか中也、最初は敵側だったんですねぇ。その後服従からの絶対的な忠誠心って美味しいけど、本編できちんと登場出来て良かったです← マジで敦とはいつ会うんですかねぇ。二次創作では散々盛り上がってるよな、どっから生まれた?



そんなわけで調べました《荒覇吐》。

要約すると神話や広く伝わっている民話には登場しないが、東北地方で特に祀られている縄文神。ほぼ正体不明だが蝦夷の神様で、『東日流外三郡誌』(つがるそとさんぐんし)』という国書と見せかけた偽書で広く名前を知らしめた。



「つがる……ん? つがる? ……まさかあの"津軽"?」

太宰治の故郷だよ!!! よくよく調べると津軽地方では荒覇吐信仰はそう珍しいことでは無いとか! (内田康夫『十三の冥府』より) 

これは偶然とは思えません。太宰治はちょうど故郷の旅行記兼随筆を記していますし、まぁ、出て来ないとは思うけどーーー案の定出てこなかったーーー津軽史に蝦夷や坂上田村麻呂とかは出てきたけどーーーいずれは太宰治だって制覇したい、と思って読みました。要するに読む踏ん切りがつかんのできっかけをこじつけみたいに見つけただけです。



太宰治、故郷を旅する、人に会う。

文豪の多くは東京以外の生まれで、ほぼ全員が1度は東京に出ていますが、逆にその故郷を語れるほど知っているか、と言われたら自信満々に答えられる人は少ないと思います。自分もそうです。ただ自分の場合、「神奈川県出身です」を「横浜市出身です」と言うところに全てがあると思っています。



閑話休題。




実はそれは太宰も一緒でした。

津軽を旅する太宰ってこんなにリラックスしていたのか。

作中の自虐風味は変わりませんが親しくしていた人たちと再会したり飲み交わしたり、東京人らしく気取らなくて良いことは太宰を自由にしました。しかも太宰にとって「忘れ得ぬ人たち」とは一時期、津島家に出入りしていた使用人たちでした。あんなに倦んでいた、馴染めなかった、1人だけ駄目な奴と烙印を押した家が……



本書の太宰治、というか津島修治は酒を呑みまくっていますが←、とてもリラックスしていて変に気取るところも自虐するところも「またまたこの人は〜笑」と言いたくなる愛嬌があります。ちょっと酒を土産に、太宰治=津島修治に会いたくなる。



「津軽」でした(・∀・)/ 

白亜書房レーベル第2弾〜(*^o^*)/