偽ヘイト活動 大槻ケンヂ編 第一回 | 合田ケムリのブログ

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不肖合田ケムリ五十一歳老害、ろくでなし子クラスタ不眠三銃士の一員であります。無駄に長生きしましたんで、色々話して行きますよ。


どのエピソードから始めたらいいのか、判別がつかないので、まあ、テキトーに途中から行く。 

偽ヘイト活動大槻ケンヂ編第二回
偽ヘイト活動開始宣言 ← 始まり。

大槻ケンヂのエピソードから行こうかな。

昔、ブラック企業でイビリ倒されていた頃、俺は野方で妹と同居していた。
そこからバスで行ける高円寺に、岡画郎という名の反則画廊があり、一応、誰にでも開かれた場という名目になっていた。
まあ、性同一性障害(当時は診断名がやっと出来たばかりの頃かな?)の俺は、そこでも「女の癖に!」という差別をほぼ全員から露骨に受け、その詳細は無駄話なので端折りたい処だが、この暴言だけは明記して置く。

岡さん「合田さんはさあ、そんなに男になりたいんなら、自分で男の赤ん坊産んで、そのちんこを切り取って、自分につけりゃいいじゃん?!(侮蔑の笑顔)」
俺 (絶句)

…あのさ、真ん中の穴で男とセックスしてから子供を産めってさ、…それは、メスの体を憎んでいるホモの俺に向かって、

「死ね」

というのと、同じ意味なんだけどさ…。

…次いでに言うと、ある時、ゴローちゃんと呼ばれる男の子が、同様に岡画郎で、こういう事を言った。

ゴローちゃん「僕は、女装する趣味があるんです。」
俺「アッ!じゃあ、いつか、あなたをモデルに、絵を描かせて下さいね!(^ω^)」
ゴローちゃん「有難う御座います!嬉しいです!」

すると、その場の全員(ほぼ男ばかり)が、顔を俯けて、感慨深げに深刻に何かを考えている。

え?!それ、俺に対する態度と全然違くね?!みんな、いつもこうだったじゃん?!

俺「私は男になりたいんですよ。」
全員「何言ってんの?(侮蔑の眼差しと嘲笑)」

…解りますかね、皆さん?この岡画郎での全員からの差別っぷり。
俺が女の体してるだけで、ここまで毎回毎回嘲笑されるとかさ…。
で、女装する趣味の男がいれば、皆がみんな、真面目に考え込むとか…。

それさ、本当に誰にでも開かれた場なのか?

まあ、いいわ。また、のちのち、その辺突っ込む。…しかも、容赦なく突っ込むから。

取り敢えず、そこにはいつも、ジーコ内山が来ていた。
ジーコ内山と言えば、「筋肉少女帯の深夜改造計画」の「パンク道場」というコーナーで、パイロン持って雄叫びを上げて、有名になった俳優だ。一応芸能人。しかも、俺の好きな大槻ケンヂとゆかりが深い存在だ。

合田「ジーコさん、大槻ケンヂと友達になるには、どうしたらいいんですかね?」
ジーコ「いやあ、そのままでいいんじゃないの?」
合田「はぁ…。」

何度聞いても、答えは毎度同じだった。
自分で考える事にした。

取り敢えず、大槻ケンヂがランチを食べに来る店は、いつも俺とほぼ同じ。
だったら、普段から作品のファイルを持ち歩き、その店に張り込んでみよう。

…いや、ミーハー気分で言ってるのとは、全くちゃうのだよ。
相手は、大槻ケンヂとはいえ、俺と同じ鬱病患者だ。嫌われる様な付き合い方だけはしたくない。自分がされたら嫌な事は、互いに絶対にしない様に、気遣う必要がある。
鬱病患者なら誰でもいいって訳ではない。俺は、公に病をカミングアウトしている立場の、鬱病友達が欲しかった。
特に、尊敬出来る相手が良かったのだ。そうでなくては、病んでいる同士、互いを尊重し合えないからだよ。そういう事は、ブラック企業に勤めた経験でもなけりゃ、身に染みて解る事ではない。

大槻ケンヂの口癖を、俺は知っている。

大槻ケンヂ「僕は、オタクになれない事がコンプレックスなんですよ。」

なんという謙遜…。

あんなに沢山の音楽を聞いて、あんなに沢山の映画を見て、あんなに沢山の本を読み、自分でも音楽を作り、小説やエッセイを書き、俳優業やテレビ出演もしていて、知識があんなに豊富で記憶力がいいのに、それでもまだ、オタクには辿り着けないと言って、それをコンプレックスとして、恥じ入っている。

謙遜を、自己評価が低いとか、そういう汚い言葉に無理矢理言い換える輩がよくいるが、そうじゃないんだよ。

己の限界を心得ていて、それ以上の事は不可能だという、腰の低い意思表明なんだよ。
つまり、恥を知っているという事だ。
謙遜の態度は、文化的にも日本人らしくて、素敵じゃないか。谷崎潤一郎や三島由紀夫の美学が解らない輩には、この辺の判断は出来ないだろう。

恥を知っている大槻ケンヂは、多分、こんな事は言わない人だろうと考えた。

「俺最高!」
「俺は一流だからさ!」

横道に逸れるとアカンので、端折る。

もうね、俺はとにかく、大槻ケンヂの事を昔から尊敬しているからこそ、やはり鬱病友達になってみたい。どんな関係になれるのだろうか?…いや、やはり、それ以前に、「女の癖に、この俺に口を利く権限なんか無いだろ!」ってディスられて、差別されて終わりかも…。

※※※

ファイルを抱え、野方のいつもの喫茶店に行くと、丁度よく、大槻ケンヂが一番奥の席で、ハンバーグを食べている。

俺 (ナイスタイミング!…あ、焦ってはいかん!向こうが食べ終えてから、話し掛けよう。それが社会人の礼儀ではないか。)

大槻ケンヂ (食べ終わった。)

俺「(ハンバーグ喰いかけで立ち上がり、大槻ケンヂの席の横へ立つ) あのう、大槻ケンヂさんですよね?私、この近所に住んでいまして、エロ絵師合田ケムリと申します。突然話し掛けて申し訳ありません。(名刺を渡す)」

大槻ケンヂ「…あ…。はい…。大槻です…。」

俺「大槻さんって、ノイローゼだとカミングアウトしてるじゃないですか。私も、エロ絵師活動開始と同時に、鬱病をカミングアウトしてるんですよ。で、もしも、そういう立場の大槻さんと、病気友達になって頂けたら、凄く嬉しいなあ〜って、まあ、そんな事をお願いしようとしているんですが…。あ、こういう絵を描いています…。(SMやゴムフェチやホモの絵のファイルを渡す)」

大槻ケンヂ「(ファイルの絵を一枚ずつ丁寧にじっくりと見ながら)…あ…。…こういう絵を描かれる方なら、もう、僕の方からもお願いしたいです。(ペコリ)」

俺「有難う御座います!(ペコリ)」

大槻ケンヂ「いやいや、もう、本当に宜しくお願いします。(ペコリ)」

俺「有難う御座います!(ペコリ)」

大槻ケンヂ「…で、あの…。…つらいんですか?」

俺「あ、いや、今は割と具合はマシなんですよ。」

大槻ケンヂ「良かった…。…でも、人間、生きてたら、きっといい事ありますから。(満面の笑顔)」

俺「そうですね。お互い、いい事あるといいですね。…あ!私、ハンバーグを半分食べかけでした。食べ切らないとイケマセンよね。(^^;;」

大槻ケンヂ「はい、食べて下さいね。(^ω^)」

俺「じゃあ、これで失礼します。(ペコリ)」

大槻ケンヂ「はあい。(ペコリ)」

※※※

この時の大槻ケンヂの態度に、俺は心底驚いた。

俺に対する他者の言葉は、常に命令か差別か罵声か嘲笑か侮蔑だった。いや、大学の教授たちはそうではなかったけどさ。
そんな、被差別部落育ちの上に、河原乞食扱いしか受けない様な、ゴキブリ未満の存在のこの俺に、大槻ケンヂはあろう事か、敬語を使って会話し、頭を下げ、しかも、エロ本業界に営業に行けば、壮絶なディスりを受けまくる様な、燃やせるゴミよりももっと邪魔な、不燃ゴミ同然の扱いしかされない、俺のエロ絵を見て、

大槻ケンヂ「…こういう絵を描かれる方なら、もう、僕の方からもお願いします。」

って、…あの、…あの、俺、大槻ケンヂの目線から見たら、人間の形を保てているの?
敬語を使うに値する相手なの?
同い年の大槻ケンヂから見て、って事だよ?
同い年や同世代からは、常に、命令と虐待しか、俺、受けた事が無いのに…。
俺に頭を下げる男の子なんて、初めて遭った…。

…大槻ケンヂは、とんでもなく礼儀正しくて、そして、とんでもなく優しい…。素顔は、そんな子だったんだ…。

しかも、満面の笑顔を見せてくれた時、俺には、「小動物系の笑顔」だと解った。小動物は、繊細な生き物なんだよ…。大槻ケンヂ、きっと、とんでもなく繊細なんだろうなあ…。

虐待と差別まみれの俺を、生まれて初めて人間扱いしてくれたのが、よりによって、尊敬してやまない大槻ケンヂだなんて…。

残りのハンバーグを喰いながら、心の中が温かくなった。…そんな経験、生まれて初めてだよ。もう、泣きそうだよ、俺…。俺、人間だったのかなあ?ウソじゃないの?

大槻ケンヂ「僕、お先に失礼しますね。(^ω^)」

俺「はい!またお会いしましょう。(^ω^)」

大槻ケンヂ「はあい。じゃあ、また〜。(^ω^)」

俺「はあい。じゃあ、また〜。(^ω^)」

大槻ケンヂは、こんなゴキブリ未満の俺に、去り際まで礼儀正しく接してくれた。。゚(゚´Д`゚)゚。

※※※

確か、その晩の事だったと思う。
家電が鳴った。あ、いや、当時は多分、まだ家電が主流だったから。

俺「(ガチャ) はい、もしもし?」

大槻ケンヂ「…あのう、大槻ケンヂです。…合田ケムリさんを、僕のライブに招待したいので、是非見に来て頂きたいのですが…。お願いします…。」

俺「(ウケゲ!有り得ない!本人だッ!気をつけッ!) 大槻さん、有難う御座います!申し訳ありません!…あ、一人で行くのは恐いので、妹と友人を連れて行っても構わないでしょうか?:(´◦ω◦`):ガクブル」

大槻ケンヂ「もちろんですよ。(^ω^)」

俺「有難う御座います!宜しくお願い致します!(ペコリ)」

(大槻ケンヂは、入場の仕方など、事細かに、親切に教えてくれる。…こんな被差別部落育ちの河原乞食のゴキブリ未満の俺に…)

大槻ケンヂ「宜しくお願い致します。では、失礼します。(ペコリ)」

俺「失礼します。(ペコリ)」

※※※

ライブ会場は、日清パワーステーション。
因みに、妹は、俺なんかよりもディープなナゴムマニアで、ケラのアルバムをコンプし、筋肉少女帯に至っては、まだ被差別部落の実家にいた頃、同級生から借りたのか、部屋の中に何故か、「とろろの脳髄伝説」のLPレコードまで置いてあった事すらあったのだ。

高校生の頃からの友人モンシロを連れて行った。まあね、このモンシロは、自分に甘くて他人に厳しく、相手が有名人だと態度が豹変するとか、電話口で泣き喚いて無理矢理俺に命令するとか、まあ、めんどくさい女なのだが、腐れ縁でもあるし、いくらなんでも、大槻ケンヂがどんだけスーパースターなのかは知っているだろうと、そう踏んで連れて行った。

俺は、一応お洒落せな失礼だと思い、東ドイツ軍の上着とビニールパンツでキメて行った。一応「愛の嵐」風にネ。

ロリコンブームの時に「オタク」という言葉を巡り、色々あった事から、俺は大塚英志の本をよく読んでいたのだが、そこにはこう書いてあった。

大塚英志「大槻ケンヂは、現代のシャーマンである。」

コレ、ホンマ? しかも、今夜はソロのライブだ。

ソロの名盤「オンリーユー」を出したばかりの頃。

いざ、ライブが始まる。

二階席という遠目から見たので、解ってしまったのだと思うのだが、俺は絵を描く人種だから、人間観察眼は結構鋭い方だ。
俺は凡人(ちゃうちゃう!被差別部落育ちのゴキブリ未満だってば!)の単なるエロ絵師合田ケムリで、まだヒーラー化すらしていない、その時点でも、俺には解ってしまった。

ステージは奈落の底の様で、まるで地獄だ。長く美しい髪を振り乱しながら、大槻ケンヂは、ステージを駆け回って歌っているのだが、同時に体中から、別のメッセージを発している。

大槻ケンヂの体中「お助けーーッ!!誰か、誰か、僕を助けてエエーーッ!!。゚(゚´Д`゚)゚。」

…こんな痛切にビンビンと伝わる魂の叫びに、誰も気付いていない…。

ってか、大塚英志の言った事ウソじゃん!

大槻ケンヂは普通の人間だし、シラフだし、鬱病だし、あんだけ体中で誰かに助けを求めているんだよ?!
そんなつらい状態の子が、シャーマンなんて出来ねえだろうよ〜、オイオイ!!大塚英志、何処に目が付いてんだよ!!
…と、心の中でツッコミを入れていると、モンシロがフラフラと揺れながら、妹に訊ねた。

モンシロ「この曲、いい曲ね〜。なんて言うタイトルなの?」
妹「…あのう、色々混ざってるんで、答えられません。(^^;;」
俺 (とん平のヘイユーブルースを中心に、「人生はスリコギだ」と、悲惨な事を散々嘆いているんだけど…。)
モンシロ「ふう〜ん。」
俺 (この女、有名人好きの癖に、大槻ケンヂの音楽には興味無いのか…。)

※※※終演後※※※

挨拶してから帰宅しないと、招待してくれた大槻ケンヂに対して、超弩級失礼だ。
当然、楽屋に行った。妹とモンシロを連れて。…そしたら…まあ、当たり前っちゃ当たり前なんだけどさ…。

…大槻ケンヂが虚ろな目をして、廃人になっていて、それでも、声をかけて来てくれる。

俺「大槻さん、お疲れ様です。(ペコリ)」
大槻ケンヂ「ああ〜、来て下さったんですね〜。僕、凄く嬉しいです〜。(死にそう)」
妹 (大槻ケンヂの廃人っぷりに驚き、固まっている。)
モンシロ (興味無さげ。←失礼極まりない。)

ああ、アカンアカン!!これ以上気を使わせたらアカン!!この子死んじゃうよ!!もう、これは、俺たちなんかは早々に退散しないと、大槻ケンヂがもっと疲れ果ててしまう。ホントに死んだら、誰が責任取るんだよ〜。:(´◦ω◦`):ガクブル

しかも、周りの人たちが、その大槻ケンヂに対して、誰も気遣う事すらなく、よりによって東海林のり子が、物凄い大声で、キャッキャキャッキャ喋りまくっていて、何かもう、余りにも酷すぎる状況なので、俺はこう思ったのね。

俺 (おい、テメエら!今夜の主役は大槻ケンヂだろがよ!!その大槻ケンヂが、こんなに憔悴し切っているのに、スタッフも東海林のり子も、誰も気遣いが皆無って、どういう事だよッ?!)

…だが、俺は大槻ケンヂに負担をかけたくなくて、早々に退散した。心の中で、大槻ケンヂに対して、延々と謝りながら。

※※※ 帰宅途中※※※

俺「モンシロさん、今夜のライブ、どうだった?」
モンシロ「いやあ…。別に…。特別でも何でも無くて、普通だったけど?」
妹 (絶句。)

※※※後日※※※

モンシロ「羽鳥さん、私こないだ、特別じゃないって言ったけど、アレはよく考えたら、物凄く特別な事だったわ…。」

俺「…あ、ああ、まあ、そうだよね。」

思った通り、情弱のモンシロは、後から大槻ケンヂや筋肉少女帯の凄さを知ったらしかった。
そうでないと、この女は、こういう態度を取らないからな。

…お前、ミーハー過ぎて嫌だ。…俺は大槻ケンヂの事、昔からずーっと尊敬してるのにさ…。
しかも、鬱病友達として、ごくごく冷静に、礼儀正しく接しているんだ。決して邪魔や負担にならない様にね。

(続く)