精神安定剤としての基本書 | フルカウント

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司法試験に3回目かつ5年目の崖っぷちでなんとか合格できた弁護士による受験備忘録です。

司法試験の合格に基本書は必要ではないと私は考えています。
基本書は、問題演習書をやりつつ分からないところを調べるのに辞書として利用する程度で十分だと思います(持たない使わないでもよいと思っています)。演習書をやりつつ論文知識に必要な限りである程度まとまった知識を身に付ければ十分です。

しかし、基本書を読み、体系的に法律の知識をひと通り把握したいとの欲求や不満は消えないかもしれません。また、ロースクールでは予備校本は悪のような存在として扱われるので学者の書いた基本書を読むことが正しいようにされています。

私も、ロースクール在学の時は、上記イメージに囚われて、学者の書いた分かりやすくて網羅的だけど薄い最良の基本書を探しまわっていました。よく分からなかったら頻繁に基本書を変えたりしていて、通読にどれだけ無駄な時間を費やしたかしれません。
このようなバカな悪循環に陥ることのないように、参考までに私が使用していたテキストやおすすめを紹介します。あくまで個人的な好みですし、合格に必要なものとは思っていないので、重要な情報ではないです。

1.予備校
  予備校本は、悪いものであるかのイメージがロースクール内ではあります。
 しかし、私は、学者の書いた基本書よりは予備校の基本書の方が勉強しやすいと思います。
 なぜなら、試験に必要な論点、通説、論証を区別してきちんと説明してあり、試験で何が問わ
 れるのか、どう答えればよいのか、丁寧に説明されているからです。まさに、試験に合格する
 ことを目的として作成されています。
  そこで、各予備校の出版している基本書(シケタイ、C-Book、デバイス・ネオなど)を利
 用するのは有用だと思います。ただ、どれも厚めなので、私としては、コンパクトデバイス
 (Wセミナー)シリーズが最も薄くて効率がよいと思います。
  予備校は、基本的に金額に見合った教育を受けることができます。法律基礎知識を得るため
 に各予備校の入門講座は高額ですが、講座を受講しなければ手に入れられないテキストを得る
 ことができます。お金と時間のある方は、入門講座を利用するのもありだと思います。各予備
 校に様々な入門講座がありますが、もし私が受講するとしたら原孝至講師の基礎講座(辰巳)
 かなあ。各予備校に赴き、テキスト等を比較するのもよいと思います(頼めば見せてくれま
 す)。

2.学者の書いた基本書
  基本的に、受験生が一般的に利用(最大公約数)しているものです(厚い本は嫌いなので除
  く)。
公法系
・憲法 「憲法」芦部信喜(有斐閣)
  コンパクトにまとまっており、論点、通説、論証は書いてありますが、何が論点か通説か論
  証であるかの説明は一切なく、初学者が一読して上記を把握することは難しいです。論点、
  通説、論証を把握している人には有用だと思います。
・行政法 「行政法」櫻井・橋本(弘文堂)
  多色刷りで説明も分かりやすいです。
民事系
・民法 「入門民法(全)」潮見(有斐閣)
  民法を司法試験に必要十分な情報量でこれほどコンパクトにまとめた本は他にないと思い
  ます。
・会社法 「リーガルクエスト会社法」(有斐閣)
  他の本には書いてないような実務的な内容もあり、大変わかりやすい。
・商法 「基礎コース商法Ⅰ 総則・商行為法 手形・小切手法」丸山秀平(新世社)
  コンパクトかつ平易な文章で分かりやすい。
・民事訴訟法 「民事訴訟法」山本弘他(有斐閣アルマ)
  他の基本書に比べコンパクトで平易。現在では、「基礎からわかる民事訴訟法」和田吉弘
  (商事法務)もあるので、厚いがこちらの方がよいかも(読んでませんが)。
・要件事実 「改訂 問題研究 要件事実」(法曹会)
刑事系
・刑法 「刑法」山口厚(有斐閣)
  択一知識を整理するのにこのコンパクトさは有用です。しかし、行為無価値ではないので、
  論証としては使えませんでした。
・刑事訴訟法 「刑事訴訟法講義」前田・池田(東京大学出版会)
  コンパクトで平易な文章、わかりやすい。
選択科目
・労働法 「労働法」水町勇一郎(有斐閣)
  労働法は、趣旨規範ハンドブック(辰已法律研究所)を使用していたので、基本書は読んで
  おりません。しかし、水町先生の事例演習労働法が大変良かったので、基本書として一つ挙
  げるのなら上記の本です。

以上、私は上記予備校本や学者本で迷走したのでオススメなどありますが、基本的に試験にはいらない情報です。いらない情報であることを留意してください。