「痛風/高尿酸血症」について | 総合診療医:誰もがわかりやすく医療を理解する事ができるブログ

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「否定の極論」記事に疲れたあなたへ贈る:「食事」「睡眠」「運動」・・これら「健康の三本柱」をねじ曲げずにポジティブに考えるブログです。

今回のテーマは「痛風/高尿酸血症」についてです。
尚、ブログの終わりの方で、薬に関する記事を読むに際して、一般人が注意すべきことも書きました。
  

  
#痛風とは?

http://www.tufu.or.jp/gout/gout1/37.html
  
「尿酸」というものが身体の中にたまり、それが結晶になって激しい関節炎を伴う症状になる病気です。
痛風の症状が発症する前に、まずは血液検査上、尿酸値が高い状態が長く続きます(高尿酸血症)
高尿酸血症を放置すると、ある日突然、足の親指の付け根などの関節が赤く腫れて、激烈で耐えがたいほどの痛みを発症します。
  
尚、血液検査上、尿酸値が必ずしも高いとは限らない痛風発作もあります。
  
「痛風」の言葉の由来は、「風に触れただけでも発症部位に激痛が走る」事から名づけられました。
痛みは薬などで抑える事が可能ですが、治療しないと多くは1年以内に同じような痛風発作が出現したり、合併症を引き起こします。

#男女比は?
http://www.tufu.or.jp/gout/gout1/41.html
痛風は圧倒的に男性に多く、98%以上が男性に発症します。
  
これは女性ホルモンに、腎臓からの尿酸の排泄を促す働きがあるからです。
従って閉経後に女性ホルモンの分泌が減ると、女性にも痛風発作が出現する可能性もあります。
  
  
#遺伝性は?
http://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2013/003272.php
世界一の「痛風大国」である台湾からの報告です。
男性では3人に1人、女性では5人に1人の割合で第2度近親者で痛風の持病がある方に、遺伝的素因が認められました。
  

  
#診断基準
http://byoukiwakaru.com/tuufuu/category3/9sinndann.html
  
①症状が出てから24時間以内にピークに達している
②関節炎の発作が過去2回以上
③1ヶ所の関節に症状があらわれる
④関節がはれて赤くなる(発赤)
⑤足の親指のつけ根の関節に痛み、腫れ
⑥片側の足の親指のつけ根に発作
⑦片側の足首の発作
⑧痛風結節と疑われるコブがある
⑨高尿酸血症である(尿酸値が高い)
⑩非対称的な関節の腫れ
⑪発作が完全に良くなる
  
これらの11項目の内、6項目以上を満たせは痛風と診断されます。
特に④が大切です。
また⑨尿酸値が必ずしも高くはない痛風発作もあります。
  

  
#痛風と食事
http://www.byouin.metro.tokyo.jp/eiyou/tsufu.html
動物のレバーや魚の干物など「プリン体」が多い食事を続けると尿酸値が高くなります。
プリン体以外にはアルコール(種類に関係なく)や肥満も尿酸値が高くなる原因になります。
  
http://currentdiary.seesaa.net/article/380181284.html
またプリン体の元となるものに「果糖」もあります。
特に「異性化糖(果糖ブドウ糖液糖)」が多く入っているペットボトルの飲み過ぎも禁物です。
男性では、糖分入りのソフトドリンクを1日に2本以上飲んだ場合、ひと月に1本以下しか飲まない場合と比べて痛風のリスクが85%高いとされています。
尚、果物にも果糖が入っておりますが、少量です(下の写真)ので問題ありません(むしろ果物のプラス面の方が大きい)。
  
参考ブログ
果物を食べ過ぎると2型糖尿病になるの?
  

  
#痛風の合併症
http://www.tufu.or.jp/gout/gout1/47.html
「痛風」と診断された場合、必ずしも単独の病気とは限りません。
痛風患者の半数近くが、何らかの合併症を伴っている可能性があります。
  
・高血圧:49.2%
・肥満:42.0%
・高脂血症:42.8%
・尿路結石:20.0%

  
それらの合併症と痛風との関係ははっきりしておりませんが、遺伝的素因のない患者さんを含め、食生活の偏りに問題がある患者さんが多いと考えられます。
また上記合併症のため、脳卒中や心臓病など新たな合併症を引き起こす可能性があります。
  

  
#なぜ痛風発作は手足の指先で起こりやすいのか?
尿酸は温度が低くなればなるほど、結晶成分(尿酸ナトリウム)になりやすくなります。
  
従って人間の身体で最も冷たい末梢部分である手足などの関節に貯まりやすく、痛風発作を発症しやすいのです。
  

  
#治療
http://www.twmu.ac.jp/IOR/diagnosis/gout/go-treatment.html
痛風発作の初期にはどうしても内服治療が必要です。
  
経験者でないとわかりませんが、かなりの激痛です。
一時的に鎮痛剤を使って、更に尿酸値を下げる薬(アロプリノールなど)も必要になります。
ですがこの先、症状の進行を抑えるのは自分自身の生活習慣です。
  

  
#生活習慣の見直し
  
(1)食べ過ぎに注意する(肥満を解消する)
痛風の原因は偏った食事です。
結果として肥満になり、痛風/高尿酸血症以外にも、他の病気を合併したり、新たな病気を合併する可能性があります。
プリン体を多く含む食品を控えながら、食べ過ぎには注意する必要があります。
異性化糖・アルコールの摂り過ぎは禁物です。
またカリウムを多く含んだ食品を摂った方がいいでしょう(腎不全患者を除く)。
  
(2)適度に運動する
上述の(1)に関係しますが、肥満対策として適度な運動を行なって基礎代謝を高め、脂肪を燃焼しやすい身体にする必要があります。
尚、急激な運動で、急激に体重を落とす事は、むしろ血清尿酸値を上昇させます。
  
また基礎代謝を高めるということは体温を上昇させる事でもあります。
体温を高くすることで、尿酸ナトリウムを沈着しにくくします。
  
(3)ストレスを解消する
尿酸値が高い人には、仕事を精力的にこなす人が多いといわれています。
ウォーキングや軽い運動、睡眠、趣味を楽しむなど、自分にあったリラックスできるストレス解消法を見つける事が大切です。
  

  
#痛風と似た病気
http://www.tufu.or.jp/gout/gout1/45.html
上記サイトの中で、特に気をつけるべき病気は「蜂窩織炎」です。
  
皮下組織に細菌が感染して、皮膚や皮下組織が腫れ上がる病気で、放置すると骨にまで炎症を起こして重篤化する可能性もあります。
  

  
⇊他には「偽痛風」という病気もありますが、写真のみ参照を。
  

  
#注意・・・ここからが大切です!!!
痛風に関する記事を調べると、次のようなものが出てきます。
尿酸値を下げる薬、90日使った男性は膀胱がんが2倍発生する?
尿酸値を下げる薬、腎臓や心臓が悪い人は要注意!アロプリノール過敏症のリスク因子とは
  
つまり痛風の治療をしていると・・・
・膀胱癌が2倍発生する
・腎臓病または心血管疾患があると、死亡率が高くなる
  
・・・というのです。
これは一体どういう事なのでしょうか?
まるで痛風の治療をしてはいけないように思えます。
  
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このような記事には要注意です。
薬を否定する事で、アクセス数を増やそうとしているのです。
  
繰り返しますが、痛風は単独で起きる病気とは限りません。
肥満を合併する事によって、他の病気を引き起こす可能性が高いのです。
つまり、治療が必要な痛風患者では、不必要な人に比べると他の病気を起こしやすいのです。
痛風の薬で病気を悪化させているわけではありません。薬が必要なレベルに達した人が、薬を飲まないと、むしろ合併症をより引き起こしやすくなる事でしょう。
  
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むしろ次の結果が判明しています。
痛風放置は危険!尿酸を下げる治療をしない人では死亡率が高かった
  
台湾人約4万人の対象者を6.5年間追跡し、尿酸を下げる治療によって心血管疾患による死亡およびほかの死因による死亡に違いがあるかを統計解析しました。
その結果、痛風がある人は、ない人に比べて死亡率が高く、尿酸を下げる治療を受けていなかった人の死亡率が、尿酸を下げる治療を受けていた人に比べて高いという結果が報告されました。
  
  
痛風の薬に関する記事だけでなく、「○○を飲むと、病気がむしろ増える」とするサイトは、疑ってかかった方がいいでしょう。
またこのような事を堂々と発信する医師や薬剤師、医療ジャーナリストを、決して信用してはなりません。
  
繰り返しますが、薬が病気を悪化させているわけではなく、薬が必要なくらい病気が進行した状態のため、薬が不要の人に比べて合併症を起こしやすいのです。
  

  
薬はできる限り飲まないに越したことはありません。
ですが、ご家族の方が、全員健康に関心が高いとは限りません。
  
もしも、痛風や何らかの病気が判明した場合、たとえ薬は対症療法だとしても、取り返しのつかない合併症の可能性を少しでも減らすために、日常生活を改めながら、薬と付き合う事をお勧めします。
  
(画像はネットより引用)