オオガキの大冒険 stage1-8 | マビノギっぽい小説置き場

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マビノギ的な内容の小説を書いてるかもよ。
マビノギ知らない人も楽しめるように書きたいのかもよ。

「ーーーーー!」
トロールが何か、聞き取れない言葉を叫びながら、曲がり角から走り出てくる。
出てきた先の通路にいるのは、ウェリアム一人。
そのウェリアムが、
「こっちに、きなさいっ」
言いながら、トロールへと石を投げつけ、横の通路に飛び込んで走り出す。

走って走って、出た空間は、ウェリアムが囚われていた、牢屋のある場所。
そしてそのまま、ウェリアムは牢の中へと飛び込む。
そして追って来たトロールに対して、
「ヘイヘイ、こっちよこっち!」
叫んだ。が、
トロールは構えを崩さず立ち止まる。
牢屋内に入れば、鍵を閉められる危険性を感じているのだろう。モンスターといえど、そこまで馬鹿ではないということか。

牢屋の前で、中を威嚇しつつ構えているトロールに対し、モンスターとの知恵比べで負けたウェリアムは、
「ど、どどどどうしよ…」
混乱しまくっていた。

すると、トロールの更に後ろ、そろりそろりと、近づいて来たオオガキが、ジェスチャーで何か伝えようとしているのにウェリアムが気づく。
オオガキはまず地面を指差し、一度手を握り、空中に向かって手を開いて何かを放つ動作をーー、
「なるほど…!」
ウェリアムは理解し、行動する。
地面に転がる小石を数個握り、トロールの顔面目掛けて叩きつけるーーッ!
そして一瞬、トロールに小石が当たったその時、
「うおおおりゃあああああ」
オオガキが飛び蹴りを食らわせる。
蹴られた勢いで、トロールが牢屋の中へと吹き飛ばされる。
オオガキは急いで扉を閉めようとするが、
「■■■■■■■!」
起き上がったトロールは怒りの声の滲んだ叫び声を上げ、オオガキへと飛びかかろうとする、しかし、
「やらせないっ」
横からタックルを仕掛けたウェリアムによって阻まれ、
ガチリ、と、牢屋の鍵が閉められた。
「ウェリ!」
オオガキが、牢屋の内側にいるウェリアムに手を伸ばし、
「兄貴!」
その手をとって、鉄格子の隙間から引きずり出した。



オオガキとウェリアムは、洞窟を出口へ向かって歩いていた。
歩き出してしばらくは、トロールが鉄格子を破壊しようとする音が聞こえて内心ビビったものだが、いまはそれもない。
「兄貴、よく見たらボロボロだよね、背中から血出てるし…」
「あぁ…まあな…」
「右手動いてないけど、大丈夫なの?」
「ただの麻痺毒だよ、大丈夫大丈夫」
言いながらも、オオガキの表情はかなり疲れていた。



洞窟を出ると、景色はもう夜だった。見えるのは辺り一面の茶色い岩肌と、土。
「バンホールの近く、か?」
言ったオオガキの身体が、ぐらりと倒れかける。
「あ、兄貴、ほんと大丈夫?」
毒と出血のせいか?と思いつつオオガキは、ごまかすのをやめて答える。
「悪い、実は街まで歩けそうにない。行って誰が呼んで来てくれるか?」
夜道を一人で歩かせるのは心もとないが、無理について行っても、今は足でまといにしかならない。
それを聞いたウェリアムは、ポケットから何かを取り出し、
「じゃじゃーん。蜜蝋の羽!」
オオガキは一瞬、おお、と感心して、
「もっと早く出せよ…」
言って、安堵のせいか、気を失った。
「どうせ洞窟の中じゃ使えないでしょー。あれ、兄貴?」
オオガキが気絶しているのに気付いたウェリアムは慌てて、転移呪文を唱える。
「アカンパニ〈同行移動〉、えっと、ダンバートン!」



翌日。ダンバートン、ヒーラーの家二階のベッドで、オオガキは目覚めた。
「よ、起きたか」
オオガキが起き上がると、近くのイスでりんごを丸かじりしていた男が話しかけてきた。
身長はオオガキより高く、微妙な長さの銀髪はボサボサでまとめられていない。年は二十代半ばで、わずかに伸びたあご髭は処理されていないのか、ファッションなのかわからない。
寝起きの朦朧とする意識の中で目を凝らすと、
「おお、ケイゴじゃん」
男はオオガキの、昔からの知り合いだった。
近所の兄貴的なものだ。ウェリアムとも知り合いで、ウェリアムからは兄さんと呼ばれている。兄の多い奴だ。
「お前が珍しく怪我して戻ってきたって聞いてな」
「なるほどな、でも見世物じゃねーぜ。あとその食ってるリンゴは俺の見舞いに買ったんじゃねーのかよ」
ケイゴはリンゴを食べながら頷く。
「うん。お前への見舞いだぜ?ウェリからの」
オオガキが呆れた顔で、
「自分で買ったもんですらないんかい」
と言うが、ケイゴは全く悪びれる様子はない。
まあまあいいじゃないの、と手振りで表して、懐から一枚の手紙を取り出す。
「お前宛だってよ」
オオガキは受け取り、
「なんでケイゴが俺宛の手紙持ってんだ?プライバシーもなにもねえ」
「へっへっへ、最近は郵送のバイトしてんのよ。儲かりまっせー」
「へえ、なんでまた。狩りで儲けた方が効率いいだろ?」
聞いたケイゴは、ちっちっ、と指を振って、
「生涯狩りで生計たてるなんて無理だぜ、早いうちから色んなとこにコネつくっとかねーとな」
「ふーん、そんなもんか。二十代にもなると大変だなあ」
オオガキは他人事のように適当な返事をして、手紙を開封する。
「差出人は…イメンマハの…お偉いさんじゃねーか」
イメンマハは、領主によって統治されている、ダンバートンの西に位置する街だ。どうやら手紙は、そこの偉い人から届いたらしい。あの後、ウェリが通報して、オオガキの名を言ったのだろう。
「へえ、どんな内容なんだ?」
オオガキは一通り目を通した後、
「昨日、俺が盗賊とやりあってたのは知ってるか?」
ケイゴに質問した。
「ウェリから聞いてるよ。お前をそこまでボコした奴の顔が見てみたいもんだぜ。それで?」
オオガキは一瞬ムッとしたが言葉を続ける。
「そいつらのその後だよ。顔が見たけりゃイメンマハの牢獄に行って来い、会えるってよ」
「ふーん。お前なんでそんな不機嫌そうなの?」
オオガキは、はぁー、と長い溜息の後、
「そのクソ野郎が生きてるのにイラついただけさ。自分の毒ナイフで死んだはずだってのによ。ギリギリで捕らえられたか」
ケイゴは冗談混じりの口調で、手をひらひらさせながら言った。
「おー物騒だねえ、怖い怖い」
聞きながら手紙をしまおうとしたオオガキは、もう一枚紙が入ってることに気付く。
内容は、
「パラディン修練所のお誘い、ねえ」
読んだオオガキが呟く。
それを聞いたケイゴは、
「パラディン修練所ってアレか、伝説の光の騎士を目指す人材をうんたらっつー」
「要するに滅茶苦茶厳しい訓練所だろ、こんなとこ誰が入るかっつーの」
聞いたケイゴは笑いながら、
「そうそう、お前は気ままな冒険者がお似合いだぜー」
言って、ケイゴは立ち上がる。
「じゃ、俺はそろそろ次のバイト行くわ。お前明日もここにいんのか?」
「さあ…マヌスが出してくれるならいないけど」
「じゃあ無理だな、あのおっさん過保護だから。ま、明日も来てやるよ」
背中越しに手を降りながら、ケイゴは階段を降りて行った。


オオガキが数分ぼーっとしていると、階段を上がってくる足音が聞こえた。
「随分と顔色がよくなったな、オオガキよ」
上がってきたのはマヌスだ。
「ああ、おかげさまで。どうも」
「しかし今回の毒は本当に危なかったぞ?捕えられた賊の懐から解毒薬が見つからなかったら死んでたところだ」
オオガキが、え?、という表情になる。
「え、あれ?俺はそいつに解毒薬のありかを聞き出して飲んだはずなんだが…」
マヌスは一瞬何かを考えるよう口に手を当てたが、すぐに思い当たったのか、
「なるほどな…。オオガキよ、おそらくそれは、遅効性の眠り薬だな」
「げえ…マジかよ…」
「なにやら狡猾な奴と一戦交えたらしいな。まあ、俺の治療もあって今はなんともないだろう。ここに運んできたウェリアム君にも感謝しておけよ」
「おう…本当にな…」
あの場にウェリアムがいなければ、トロールをなんとか倒したとしても眠りに落ちて、そのまま毒で死んでいただろう。
ダレンとかいったか、なんて狡猾な奴だ…。
オオガキが思い返していると、マヌスが話だした。
「とりあえず、捕まった奴のことはどうでもいいんだ、それより頼みがあってな」
「うん?なんだよ?」
あのマヌスが、病人に頼みとは珍しい。
マヌスは、
「病人にそう難しいことはさせん、安心しろ」
と、前置きして、
「ティルコネイルまで、医療品を届けて貰いたい」
そう言った。
「そんなの、俺じゃなくてもいいんじゃないのか?」
「いやな、ついでと言うのもなんだが、一人連れて行ってほしい子がいてな。おーい、入ってきてくれ」
「子?」
と、オオガキが呟いたと同時、小さな影が入ってくる。
「えと、初めまして、ですよね。一応」
14歳程度の少女を見て、オオガキは、
「はじめましてー…あれ?俺がおととい連れて来た子?」
「そ、その節はありがとうございましたっ!」
頭を下げる少女の横でマヌスが言う。
「昨日の夜に目覚めてな。伝えに行こうと思えば、今度はお前が倒れてきた。明日は誰が担ぎ込まれるんだかな」
「ヒーラーが縁起悪いこと言うなよ。あー、あと君、えっと」
「あ、マリーです!」
「おう、マリーちゃん。助けたのは偶然だから気にすんなー」
オオガキが微笑みながら言うと、マリーの緊張が少しやわらいだようだ。
「それで、この子とティルコネイルまで行って、荷物を届けてくりゃいいんだっけ?」
「そういうことだ。まだ調子が悪いなら明日でも構わんが……」
マヌスが言い終わる前に、オオガキが遮る。
「いや、今日行く。一日中寝てるなんて耐えらんねーし」
「フ、お前ならそう言うと思ったさ。荷物の準備はしてある。まあ、とりあえず飯は食っていけ。マリー君、一階からとってきて貰えるか?」
言われたマリーが返事をしようとするが、オオガキが先に口を開いた。
「いいよ、自分でいくって」
だが、
「待て、お前と少し話があるんだよ、馬鹿。マリー君、頼む」
今度こそ言われたマリーは返事をして、階段を降りて行った。

マリーの足音が消えてから、オオガキがマヌスへ問う。
「あんな子に飯運ばせてまで話すことってのは、そんな重要なことなんだろうな?」
「あの子、マリー君に関わることだ」
マヌスがそう言うと、オオガキも少し真剣な顔になる。
「彼女が起きてから何度か、怪我をどこで負ったのか、何があったのかを聞いてみたが、」
マヌスは一呼吸置いて、
「彼女は、答えられない、と言った。わかるか?覚えてない、でも、言いたくない、でもない。答えられないと言った」
オオガキも、マヌスの言わんとしていることを悟る。
「言って、それを俺たちが知ったら、何かヤバイもんに巻き込まれるとか、そういうことか」
「だろうな」
マヌスが頷く。
「無理にとは言わんが、できれば同行中に聞き出してくれ。あれほどのダメージを与えられる敵など、そこらのモンスターではないはずだからな」
「オーケー、了解。さっさと飯食って出発するとすっかな」
「ウェリアム君には言わずに行くのか?今回は助けて貰ったんだ、それはどうかと思うが」
「そうだな、出るまでには一声かけていくよ。さっき見舞いにきた知り合いにもな」
言って、オオガキはベッドから出て、準備運動なのか、体を動かし始めた。


昼食を食べ終えた後、マリーに断ってからウェリアムとケイゴに挨拶をしに行き、女の子と二人旅ですかーうひょーと、見事二人に同じ冷やかし方をされて、マヌス宅の前の荷物置き場に戻ってくる。
マヌスの自費なのか経費なのかわからないが、荷物を運ぶのは荷馬車だ。ありがたい。
オオガキは装備を整えるとヒーラーの家のドアから顔を覗かせて、
「おーいマリーちゃん、いくぜー」
中から出てきたマリーは、
「ちゃん付けはなんか変な感じなんで、呼び捨てでお願いしますよー」
「了解。そっちも呼び捨てで、敬語もやめていいぜ?」
「わかりまし…わ、わかった!」
「うん、それでよし。じゃあいこうか」
二人揃って家を出て、荷馬車に乗り込む。
「出発進行!」
楽しげに言ったマリー、そして横にいるオオガキは、まだ知らなかった。
荷台に二人の侵入者がいることに……。



「しめしめ、忍び込んだのバレてないよ、兄さん」
「くっくっく、こんな面白い話聞いて、俺たちが首突っ込まないわけないのにな。なぁウェリよ」

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どこでstage1を終わらせればいいんだ…!
マリオよろしく8で区切るか…!