オオガキの大冒険 stage2-1 | マビノギっぽい小説置き場

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マビノギ的な内容の小説を書いてるかもよ。
マビノギ知らない人も楽しめるように書きたいのかもよ。


荷馬車が行く。
乗るのは二人。(と更に二人なのは秘密だ)
時刻は昼前、彼らはダンバートンを北上し、ティルコネイルへ向かっている。
そこで起きることを彼らはまだ知らず。
故に、束の間の休息を手に入れる。


オオガキの大冒険 stage2


「へー、マリーはティルコネイル出身なのか。里帰りだな」
オオガキが言う。
「うん、村長のお家でお世話になってたんだー。しばらく帰ってないから心配してるかも…」
こたえるのはマリー、小柄な少女だ。
(思ったより面白い会話がないよ、兄さん)
(うむ、オオガキのヤツめ、女と二人きりなのになんて雰囲気のない)
そして荷物に紛れてコソコソ会話しているこの二人は、黒髪赤眼でオオガキの妹分の少女、ウェリアム。
そして、オオガキの知り合いでウェリアムからは兄さんと慕われている、銀髪ボサボサ髮の二十代半ばの男、ケイゴだ。

オオガキは思う、聞き出すタイミングが掴めねー、と。
というのは、少女にあった出来事のことだ。
傷だらけで、森の中に倒れていた少女、マリー。
それを助けたオオガキは、何があったのかを知っておくべきだ。
モンスターにやられて倒れていたのならともかく、彼女の傷は恐らく、人間につけられたものなのだから。

オオガキは、避けられる話題だと承知で質問する。
「なあ、マリー。なんで、あんな森の中にいたんだ?」
倒れていた理由には、あえて触れない。
「わかんないんだ、それが。全然別の場所にいたはずなのに、気付いたらあの森で倒れてたみたい」
オオガキは、ほお?、と顔を傾けて、
「それまでは何処にいたんだ?」
核心に触れようとするが、
「ごめん、それは言えない」
やはり、断固として突き放される。
「ふーん。ところでその弓、使えるのか?」
オオガキは興味のない風を装って、話題を変更する。
「あ、これ?使えるよー、あんまり…強くはないけど…」
「へえ、どれ、あの丸太に当てられるか?」
「余裕余裕」
言ったマリーは狙いを引き絞り、
ビュッ、という音で射出された矢は、丸太の年輪の中央に突き立った。
「うお、なかなかやるなあ!」
オオガキは、マリー予想外の腕に驚くが、マリーはあまり得意気な表情ではない。
「全然ダメだよ、こんなんじゃ…」
何も守れない。マリーは、そう心の中で呟いた。
マリーの表情の陰りに気付いたオオガキは、提案した。
「ちょっと寄り道しないか」
「あたしはいいけど、どこに?」
マリーが訝し気に答える。
「通り道の森で、きのこ狩り対決といこうぜ、村長さんへの土産にもなる」
「えっと…あの…」
マリーからしてみれば、いくら命を助けられたとはいえ、男と二人で森の中に入るのは不安があるのだろう。
それを察していたオオガキは、
「大丈夫、後ろの荷台に潜入したアホ共も一緒だから」
ガタガタッ、と、荷物の動く音がした。



「よーし、じゃあ30分後にここで落ち合おう」
オオガキ達は、ティルコネイルへ向かう道中の森へ来ていた。荷物は、近くの広場の信頼できる木こりに預けてある。
「よーし、絶対勝つよ、マリーちゃん!」
言ったのはウェリアムだ。
「うん!」
マリーも元気に返事をして、二人は駆け出して行った。
「流石ウェリ、仲良くなるのが早い早い」
残されたケイゴが、横のオオガキに言う。
「ま、それを見越してお前らが乗ったのスルーしてたんだけどな」
「え、そうなの」
オオガキの一言にケイゴがちょっと驚き、余計な一言を言う。
「なんでそんな気が利くのに彼女いないんだ、お前」
「うるせーよ、俺達もいくぞ」
言って、二人も森の中へと歩き出す。

「しかしきのこ狩り勝負とは。また珍しいこと考えつくもんだなー」
感心するケイゴに対してオオガキは、
「チーム別に別れて勝負すると、チームメイトと仲良くなるだろ?同性なら特に」
キノコを狩り取りながら応える。
「土産にもなるし、いい案だ。流石俺の弟分だな」
「誰が弟分だ……あ、ケイゴそれ毒キノコだぞ、持ってったら減点だ」
「うげ、まじかよ危ねえ」
ケイゴが持っていたキノコを慌てて捨てて、冗談混じりに言う。
「しっかし伊達に冒険してねーな、よく見分けられるもんだ。キノコ鑑定士の称号をやろう」
「いるか、そんなもん」
オオガキは突っぱねる。
ケイゴは別の話題を思い出した様に、
「そういや、今回はどこまでいけたんだ?お前の大冒険」
「冒険ってほどのことはしてねーんだけどなー。今回もエルフの村には到達できなかった」
聞いたケイゴは笑って、
「今回は死にかけの女の子を拾ったからかー、前回は砂漠で砂嵐に巻き込まれて逃げ帰ってきたっけ」
オオガキは思い出すのも嫌そうな表情で話を続ける。
「ああ…その前は橋が崩れて川に落ちた…」
「ははは、お前呪われてるんじゃねーの!」
「う、うるせい。いつか絶対世界の果てまで見てやらあ」
「はは、まー今のうちに頑張れよ」
「ケイゴはエルフの村まで行ったことあるんだったか?やるなあ」
ケイゴはオオガキの賛辞に、平然とした顔で応える。
「エルフの村はなー、暑いけどいいとこなん…」
「わーまてまて言うな、俺が自分で行って確かめるんだよ」
オオガキに言葉を無理矢理遮られたケイゴは、それでも愉快そうに微笑んで、
(お前の運さえ悪くなけりゃ、とっくに行けてる場所だけどな…)
心の中で、密かに呟いた。



マリーとウェリアムは、森の中の切り株に座って、かごに入ったきのこを眺めていた。
「結構取れたねー」
ウェリアムが言う。
「でもまだ時間あるし、もう一回りしよー」
「あはは、マリーちゃん流石若いね!元気だね!」
「なにオバサンみたいなこと言ってるのよ、ほらいくよー、ウェリ!」
「私はもうオバサンでございますよ、よっこいせ」
ウェリアムがわざとらしく年寄りの様に立ち上がるので、マリーは笑ってしまう。
「あはは、……あれ?」
前を見て歩き出そうとしたマリーが、何かを見つける。
「なんか見つけたの?マリーちゃん」
数歩遅れて歩いてきたウェリアムの問いに、マリーは振り向いて、興奮気味に応える。
「お、黄金きのこだよっ、おーごんきのこ!」
聞いたウェリアムもテンションをあげて、
「な、なんだってっ!あの超高級食品の黄金きのこ!?どこどこっ」
「あそこっ!」
マリーが、きのこの見えた位置を指差すか、
「あれ?」
黄金きのこが、ない。
「あれー?」
周りも見回してみるが、やはりない。
「気のせいだったんじゃない?」
後ろのウェリアムが、一緒に辺りを見ながら言う。
「うーん、そうだったのかな…」
マリーが納得しかねながらも言ったとき、少し離れた木陰から、ガサガサと音がした。
マリーはビクッとして、
「な、なにかいる…?」
「く、熊とかはいないから大丈夫なはずだけど…」
大丈夫と自分で言ったウェリアムも、一歩引いている。
「そ、そういえばこの森、夜には幽霊が出るとか出ないとか聞いたような…」
「ええっ…!?ま、まだお昼だから大丈夫だよね、ね、マリーちゃん!」
話ながらも二人は何歩か下がって、
「「と、とりあえず逃げよう!」」
知り合ったばかりとは思えない意見の一致で、森の外へとかけだした。

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ついにほのぼのファンタジーライフになった気がする!