ロシア南部の北カフカス地方が不安定化している。

​ 約140人もの犠牲者を出したモスクワ郊外でのイスラム国(IS)テロは、一見盤石そうに見えたプーチンの足下を揺るがせた(写真)。​

 


テロや抗議デモが多発する北カフカス地方​

 このテロについては、発生3日前にアメリカからプーチン政権に差し迫った危険を警告されていたにもかかわらず、側近の「大丈夫です」という甘言の前にプーチンは事前に手を打つこともせず、マンマとテロを実行させてしまった。

​ 実は、大きく報道されることはないが、イスラム教徒の多い南ロシアの北カフカス地方(地図)で、このところテロや政権への抗議デモが多発している。アメリカ議会の共和党保守派のサボタージュの恩恵で、ウクライナに傘にかかっていたテロ国家ロシアの足下は、意外に脆弱のようなのだ。​

 


北カフカスでテロ相次ぐ​​

 北カフカスでジョージアと国境を接するカルチャイ・チェルケス共和国で4月22日、過激派との関与を疑われるテロリストが警察車両を襲撃し、警察官2人を射殺し、武器を奪って逃走した。

 隣接するカバルジノ・バルカル共和国では4月11日にテロ未遂事件が起こった。その前の3月には、イングーシ共和国でイスラム国の戦闘員とみられるテロリストと治安部隊が衝突した。


ダゲスタン共和国出身兵士が危険な最前線に送られ、高い死亡率​

 北カフカス地方は、19世紀の帝政ロシアの南下政策に最後まで抵抗した歴史を持つ。

 ロシアの辺境だから、ソ連崩壊で中央からの援助金が途絶えると、経済は低迷し、貧困率や失業率は高止まりしている。

 低所得のイスラム系住民にとって、中央政府のウクライナ侵略要員としての徴募は応じやすい。それを良いことに、プーチンはザカフカスで徴募した契約兵を死地に送り出している。

 少し古いが、2022年8月12日に独立系ニュースサイト「メディアゾーナ」やイギリスBBCが自治体発表などを基に、死亡を確認したロシア派遣軍兵5507人の出身地で、最も多かったのは、約9割がイスラム教徒のダゲスタン共和国で267人もいた。モンゴル系ブリヤート人が人口の約3割を占めるシベリアのブリヤート共和国が235人で続いた。他方でモスクワは14人だった。ダゲスタンの人口は約315万人で、モスクワ(約1264万人)の4分の1だが、死者数は19倍もあった。


北カフカスの人々には独立を図る好機だ​

​ この状況は続いているようで、ダゲスタンではたびたび動員に反対する市民による抗議デモが起こっている(写真)。一部のウクライナ派遣兵士は、戦闘を拒否して前線から帰還しているという。​

 

 

 

 今、北カフカス地方のイスラム教徒にとって、ウクライナの侵略戦争に忙殺されるプーチン政権に対し、自分たちの共和国が独立を図る絶好の機会になっている。

 かつて第1次世界大戦に際し、帝政ロシア軍に動員され、戦争に駆り出される農民・労働者たちに、ボルシェヴィキのレーニンは「帝国主義戦争を内乱に転化せよ」とプロパガンダを展開した。

 今はプーチンのロシアに対して「ウクライナ侵略戦争を内乱に転化せよ」というスローガンとなる。


昨年の今日の日記:「またもアメリカの有力地銀FRC(ファースト・リパブリック・バンク)が破綻:JPモルガンが救済買収」

 今から7300年前、鹿児島沖の海底火山が大爆発し、そこから発した火砕流(幸屋火砕流)は海を越えて種子島、屋久島、薩摩半島南部及び大隅半島南部を襲った。また噴出した火山灰などの火山噴出物は、南九州一帯を分厚く覆った。


東北地方南部までの日本列島を火山灰が覆った大爆発​

 当時、鹿児島などで栄えていた縄文早期集落は壊滅し、南九州は数百年間も無人の地となった。南九州では火山灰の影響により600年~900年間は照葉樹林が復活しなかった。

​ その火山灰の積もった厚い地層は血を流したように赤く、宮崎県の農家の間で「アカホヤ」と呼ばれていた(写真)。​

 

 ちなみにアカホヤ火山灰は西日本一帯はもちろん遠く東北地方南部まで降下し(地図)、考古学ではこの火山灰の上下にある縄文文化の年代をうかがう重要な鍵層(キー・テフラ)になっている。​

 

 

 これが、「鬼界カルデラ」という海底火山の大爆発であった。


海上に顔を出したカルデラ外輪山の一部が薩摩硫黄島​

 この先史時代の火山大爆発をずっと研究してきた神戸大学のグルーブが、このほど7300年前のこの大爆発が、完新世(1万1700年前~現在)で世界最大の大火山噴火だったことが分かったと発表した。海底に堆積した噴出物の量を船で詳しく調べるなどして、判明した。

​ 鬼界カルデラは鹿児島市の南約100キロにあり、長さ25~15キロの楕円形だ()。先史時代に何度も大噴火を起こしたうちの直近の巨大噴火がアカホヤ火山灰を積もらせた噴火だ。​

 

​ 鬼界カルデラの縁の外輪山の一部は海面上に顔を出し、薩摩硫黄島はその1つだ(写真)。​

 

 

 アカホヤ噴火は大きな被害を生んだが、詳しい規模や噴出物の量などは分かっていなかった。巨大カルデラ火山の巨大噴火は現代文明が未経験で、ひとたび起これば深刻な被害が生じるだけに、解明が重要と考えられた。

 研究グループは鬼界カルデラ周辺一帯で、船から海底へ音波を出し、反射してくる波を手がかりに地下構造を調べる「反射法」により、堆積物の分布を調べた。海底から採取された堆積物も参照し、アカホヤ噴火の噴出物の量の推定などを試みた。


噴出物の総計は300立方キロを超える​

 その結果、堆積物の最も上の層がアカホヤ噴火の噴出物であると特定した。噴出した火山灰や石などが火砕流となって海水と混ざり、40キロ以上もの長距離を移動しながら海底に堆積し、山梨県の面積に匹敵する4500平方キロ以上に広がっていたことが判明した。堆積層は、鬼界カルデラからの距離に応じて薄くなっており、海底の噴出物は少なくとも計71立方キロに及んだと結論づけた。反射法では厚さ3メートル未満だと検出が難しいことから、正確には71立方キロをはるかに上回るとみられる。

 別の研究での、空から広がった火山灰の見積もりと合わせると、噴出物は計332~457立方キロ以上にもなるという。完新世の既知の噴火では陸上、海底を通じアカホヤ噴火が世界最大であることが分かった。


姶良カルデラ大爆発(2.9~2.6万年前)はアカホヤ噴火をも上回った​

 なお後期更新世末の姶良カルデラの大爆発は、この規模をも上回っていた。

 姶良カルデラは、旧石器時代の2万9000~2万6000年前に鹿児島湾奥を形成したカルデラで、この巨大爆発で噴出した、旧石器時代の重要な鍵層になっている火山灰が「姶良Tn(丹沢)火山灰」である。


昨年の今日の日記:「またもアメリカの有力地銀FRC(ファースト・リパブリック・バンク)が破綻:JPモルガンが救済買収」

 SNSを通じての投資詐欺が、社会的問題になっている。しかも多くが人生で多くの経験を積んだ高齢者が被害に遭っている。高齢者に金融資産が偏るという日本型資産構成を表す一側面でもある。


7億円も騙し取られた70歳女性​

 ただ金融リテラシーの高い人なら誰でも見破れる投資詐欺に、簡単にひっかかる方もどうかしている、と思う。被害話を聞いても、「気の毒に」という同情心がどうにも湧いてこない。

 特にこの4月に判明した去年11月に茨城県南部に住む70歳の高齢女性が詐欺に遭った件は、その額の大きさから驚く以上に呆れてしまった。

​ この70歳女性は、ネット広告で経済アナリストの森永卓郎氏を語るLINEに誘導され(写真)、それに勧められるままに金の投資資金を振り込んだという。そうした諸々の振り込み金額は、約7億円!​

 

 

 さらに現金に換えるためという手数料を稼ぐために別の投資詐欺にひっかかり、さらに1000万円を取られた。


安直に儲けられる話など無い​

 かくも安易に、7億円も振り込むというこの安直さに呆れてしまう。7億円など、普通の投資家でも稼げない大金だ。ましてサラリーパースンなら夢で見るしかない金額でもある。

 世の中には投資だけで1億円の資産を築いた「億り人」はいるが、そうした人たちは自ら経済分析を重ね、損失を繰り返しながら(時には眠れない夜を過ごしつつ)も何とかそこまでたどり着いたのだ。安直に儲ける道など存在しない。

 いくら有名人だからといって、本人かどうか定かでない者の言いなりに巨額のカネを送金するなど、本人にも問題がある。

 また70歳女性がひっかかった森永卓郎氏は、そんな投資指南などする人物でないことは、ちょっと経済知識があれば容易に見分けられる。


絶対の儲け話を他人に教える人などいるはずもないのに​

​​ しかし、その種の安易な行為で投資詐欺にひっかかる連中は、後を絶たない(写真)。それどころか激増中だ(=2023年中のSNS型投資詐欺の認知件数と被害額)。​​

 

 

 滋賀県の60代女性がネットでの投資詐欺で6700万円取られただの、兵庫県西宮市の自営業の男性(69歳)が村上世彰氏を語る人物から6600万円を騙し取られるなど、だ。

 額も数十万円などでなく、億に近い巨額だ。これなら詐欺師にとって止められないだろう。

 そもそも世の中に、絶対儲かる儲け話を赤の他人に教えてくれる人などいるはずがない。確実な儲け口があるなら、誰だってこっそりと自分だけでそれをするだろう。

 そんな基本中のキ、常識中のジョも忘れて、いい歳をして巨額のカネを騙し取られるなど、信じられない。いったいその年齢までどんな仕事・経験を積んできたのだろうか。


昨年の今日の日記:「函館の旅(3):西欧風城郭の五稜郭は幕末のペリー来航に刺激されて造られた、タワーから眺めた函館山」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202305020000/​

 

 間もなくアメリカの東部から中西部にかけて、素数ゼミの大発生シーズンとなる。


1803年の「ルイジアナ買収」以来​

​ 今年は、特に超大発生となりそうだ。というのは、13年ごとに地上に現れ羽化する「13年ゼミ」と17年ごとの「17年ゼミ」(写真)が、この最小公倍数である221年に当たる今年、それぞれのグループが同時に地上に姿を現すと考えられているからだ。​

 

 

 

 13年ゼミも17年ゼミも、出現する年が異なる多くのグループがある(「プルード」という)。13年ゼミは3プルード、17年ゼミは12プルードもいる。だから両方とも、異なるプルードがアメリカのどこかで姿を現すことはある。

 しかし13年ゼミと17年ゼミのそれぞれのプルードが一斉に発生するのは、実に221年ぶりとなる。今年は、アメリカがフランスから同地の広大な植民地210万平方キロをフランスから1500万ドルで買収した「ルイジアナ買収」の1803年から221年目だから、その時以来となる。


13年ゼミと17年ゼミの一斉羽化なら1兆匹も​

 羽化が始まるのは4月の終わり頃から6月頃までだから、すでに東部から中西部にかけて羽化が始まっているかもしれない。

 幼虫は前脚を使って地面の穴からはい出てきて、最後の脱皮(羽化)を済ますと、オスは数日後にはメスを求めて鳴き始める。鳴き声は次第に強くなり、合唱状態になると、飛行機の騒音より大きくなる。

 

 

​ 上の図に示したように、13年ゼミと17年ゼミの発生の重なるイリノイ州スプリングフィールド付近では、最大限の大音量になるかもしれない。​

​ 何しろ発生の数は半端ではない。両方合わせれば1兆匹にもなる可能性がある(写真=大発生した素数ゼミ)。0.4ヘクタールの公園で100万~150万匹も現れるかもしれないという。​

 

 

 

 1兆匹のセミと言ってもピンとこないが、例えば1匹のセミの体長は、1インチ(約2.54センチ)を少し超えるぐらいで、1匹ずつ縦に並べると、長さは実に約2540万キロにもなる。地球と月との間を33回も往復できる距離だ。

 セミの「被害」大音声だけではない。大量の死骸が積み重なると悪臭を発するし、車がセミを挽くと大量の脂分に滑ってスリップ事故も起こる。


氷河期と寒冷地への適応​

 13年も17年も地下で暮らすセミたちは、地上に現れると羽化し、あわただしく交尾して子孫を残して命を終える。地上での暮らしはたった4~6週間だ。地下で暮らす時間と比べてもあまりにも短い。

 日本に分布するセミの幼虫の地中生活はずっと短い。ツクツクボウシで1~2年、アブラゼミで3〜4年、クマゼミで4〜5年くらいだ。

 13年ゼミ、17年ゼミは、どうしてこんな特殊な生活サイクルを持つに至ったのか。

 そしてなぜ13年、17年と素数年での羽化で、12年、16年でないのかについては、文末に掲げた過去の日記で述べているので、素数年の謎解きについてはそちらを参照していただきたい。

 日本に分布するセミよりも地中生活が非常に長いのは、氷河期の影響があったのではないかと考える。1万年前くらいまで、上掲図で記した17年ゼミの発生地域は、氷河期の五大湖南方までローレンタイド氷床で広く覆われた。後氷期になっても、冬季は氷点下30℃くらいにまで下がる。幼虫が木の根から樹液を吸う期間も量も限られる。だから長い幼虫期の地下暮らしとなるのだ。

 

捕食者対策にもなる​

 捕食者対策にも有効だ。13年ごと、17年ごとの発生となると、同時期にたくさんの成虫が現れる。捕食者にとって、鳥や小動物などの捕食者に食われる一匹ごとの確率は極小になる。

 豊富な餌を前にして捕食者が腹いっぱいになり、それだけ繁殖に成功して個体数を増やしても、セミはその後長期にわたって地上に現れないので、捕食者の子孫は食に困って個体数は調整される。13年ゼミも17年ゼミもそれぞれいっせいに地上に現れても、捕食者だらけに遭うことはない。

 一斉に成虫になれば、繁殖相手に困ることもない。


やがては17年ゼミは13年ゼミに​

 こうして生物としては異例に長い幼虫の地中生活だが、これが近年の温暖化で17年ゼミが4年も早く羽化する現象が現れた。温暖化で幼虫の栄養が良くなると、早くに生長が進みやすいからだ。

 この傾向が続けば、4年早く羽化する17年ゼミが増え、すべて13年ゼミになるかもしれないという。そうなると、同時・大量の羽化というメリットは薄れる。

 そもそも13年ゼミと17年ゼミは、50万年前頃に同一祖先のセミから別れた。おそらく13年ゼミから17年ゼミが別れたのは、氷河時代のの寒さへの適応だったろう。それが元に戻りつつあり、人為的だとしたら、これもまた人類の自然への介入に1つの例となる。

 

▽これまでの素数ゼミの日記​

・21年5月30日付日記:「アメリカ北東部、17年ゼミの一斉羽化の年;『素数ゼミ』の謎」

・13年6月14日付日記:「メキシコ周遊:17年ゼミとサボテンに寄生するカイガラムシ」


昨年の今日の日記:「電気自動車EV、『グリーン・ボッチング』の恐れは」

 もし現代にこんなサケが生きていたら、釣り上げようとした釣り人は逆に食われたかもしれない。現在、生きていなかったのは幸いかもしれないが、逆にこんな巨大なサケを養殖できたら、美味いサケを安く、たっぷり食べられたかもしれない。

 

生体の体長は2.5メートル前後​

​ このサケ、オンコリンクス・ラストロススは絶滅種ながら巨大で、成体の体長は2.4~2.7メートルもあった。サケ科史上最大の種と推定される(のAはラストロスス、比較のためのBは現生のキングサーモン、釣り人Cと比較されたい)。​

 

 

​ 北太平洋や周辺の河川に数百万年前まで生息していたこの巨大サケ、ラストロススは、なんと上顎の先端から左右の牙が横向きに突き出ていた(写真)。アメリカ、オレゴン大などの研究チームが4月24日付けのアメリカのネット科学誌『プロスワン』に発表した。

 

 オレゴン州で発見された化石が1970年代前半に報告された際は、牙のように発達した歯の特徴から「剣歯ザケ」と呼ばれる。この時点では、ラストロススは絶滅したサーベルタイガー(剣歯虎)のように牙が下を向いていると考えられていた。

 

生息年代は1200万~500万年前​

​ 新たに見つかった化石を含め、研究チームがコンピューター断層撮影(CT)などで詳細に調べた結果、雌雄とも牙が横向きに突き出ていたことが判明した(想像図)。​

 

 

 牙以外の特徴は現代のベニザケに近く、主にプランクトンを食べていたとみられる。このため、牙はサメなどの天敵から身を守ったり、同種間で争ったりする他、産卵前に川底を掘るのに使ったと考えられるという。

 生息年代は、新第三紀中新世後期から同鮮新世前期(1200万~500万年前)で、辛うじてアフリカでやっと初期猿人が出現した頃に重なる。ただこの頃、北米は無人の地だったから、人類が巨大サケの恩恵に浴すことはなかった。

 

日本にもいたラストロスス​

 この絶滅種の化石は、日本でも見つかっている。群馬県立自然史博物館によると、同県安中市の碓氷川の川岸で1999年に上顎骨の先端と牙1本が発見され、年代は約1100万年前と推定された。

 日本の旧石器人や縄文人も、ラストロススを味わう機会はなかった。
 

昨年の今日の日記:「函館の旅(2):五稜郭公園では桜は満開、タワーに登って星形の五稜郭を一望、土方歳三像も観る」

​ 28日投開票された衆院補選で唯一、自公が候補を立てた島根1区で完敗した(写真=当選を確実にして花束を受け取る亀井亜紀子氏)。ここは故細田博之氏がずっと勝ち続けた選挙区で、したがって候補を立てた自民は負けたことがなかった。そこで、立憲民主党に完敗した。この痛手は、自民には大きい。

 

 東京15区と長崎3区は、候補を立てることすらできず不戦敗。ここでもそこそこ組織力のある立憲民主党は勝った。つまり自民は3戦全敗ということである。

 今の不人気岸田グズ眼鏡を裏付けるような結果だった。


いいことばかり並べるけれど誠実さを欠く岸田グズ眼鏡​

 弁が立ち、いいことばかりを並べるけれど、どこか誠実さを欠き、うさんくさい――多くの有権者たちは、岸田グズ眼鏡をそう見ているに違いない。

 例えば「激変緩和」として一時的に導入したはずのガソリン補助金を、激変がとうに過ぎたのにズルズルと延長し、その出口すら見えない。大型の子育て対策では「国民に実質的な負担は生じない」と強弁しながら、社会保険料から1人500円から1000円を召し上げる。知り合いの非正規で働く独身中年女性が怒っていた。彼女には何の恩恵も無いのに負担だけがのしかかってくるのだ。世論調査では6割以上が否定的な姿勢を示し、何のためなのか全く目的が分からない所得税減税を6月に強行する。


力にするはずの変化に臆病な守旧派には動揺​

​ 27日の連合主催のメーデーで、「今年、物価上昇を上回る賃上げを実現させた。来年以降も物価上昇を上回る賃上げを必ず実現させる」と触れ回った(写真)。賃上げは、労組と企業の問題であり、政府が介入すべきことではない。岸田グズ眼鏡の言っているのは、かつてのソ連のような社会主義独裁者と同じことなのだ。​

 

 

 「変化を力にする」と言いながら、変化に臆病な守旧派の声の前に動揺する。

 こんなだから世論調査のたびに、岸田グズ眼鏡の支持率は縮小し、不支持率は拡大していく。


僕は岸田を総裁に選んだことで自民を見限った​

 これでは今の国会会期末の6月解散なんて、とうていできないだろう。世論の声をバックに珍しく強気に旧安倍派の重鎮を追放して「岸田一強」を実現したはいいけれど、である。

 支持率の漸減が続けば、岸田では選挙に勝てないという自民党内の声が高まり、9月の総裁選も不戦敗に終わるだろう。

 僕は、岸田グズ眼鏡が首相に選出された時から不支持だった。こんな苦労知らずで巧言だけのリベラルお坊ちゃんを総裁に選んだ自民党にも失望し、以来、日本維新の会への支持に転向した。

 ともあれ岸田を担ぎ続けることは、保守としての自民の「死」を意味するから(代替政党として維新がちゃんと控えている)、早急に本来の保守を総裁に就けるべきだ。


筋を通す保守派の野田氏を担げ​

​ 首相候補としての重みが足りなければ、自民は、いっそ立民の元首相、野田佳彦氏を立民から引き抜いて担いだらどうか(写真)。野田氏の安保感は、自民の保守派と同じで、しかも筋を通す。​

 

 

 かつて民主党最後の首相として、負けるのを百も承知で安倍氏の自民党に国会で堂々と解散を宣言し、国会を解散した。しかも安倍氏と公明とのの3党合意で、選挙にマイナスを百も承知で消費税の増税を決めた。閉塞した政治環境を一新しようという思いのみなぎったその姿勢は、さわやかな印象を残した。

 僕は、当時の民主党も今の立憲民主党も嫌いだが、野田氏は、唯一、敬意を抱ける民主党・立憲民主党の政治家だと思う。


昨年の今日の日記:「衆参5補選で自民4勝1敗も内実は対立陣営の立民が拙劣で弱すぎたから、真の勝者は和歌山1区で勝利した維新」

​ 木星の第1衛星「イオ」は、全球を覆うほどの活発な火山活動で知られるが、イオの火山活動に関する研究は半世紀前の1979年に始まった。この年、NASAの探査機ボイジャー1号が木星系を通過し、この時撮られた写真にイオ表面から噴き上げる巨大な火山噴出物(写真)に研究者が初めて気がついたのだ。​

 


地球の都市域よりも広大な溶岩の海​

​ その後のNASAの様々な探査機で、イオの活発な火山活動が明らかになった(写真=イオの北極域の火山と流れ出た溶岩〔2023年10月15日、NASAの探査機「ジュノー」によって撮影された〕と全球での火山活動)。​

 

 

 

​ イオは、全球が降り注いだ硫黄と火山噴出物で褐色に染まっている(写真)。​

 

 

 太陽系の衛星でもイオほどの活発な火山活動は知られていない。表面のあちこちに地球の都市域よりも広大な溶岩の海が広がり、空には火山が吐き出す噴煙が地獄の傘のように広がっている。

 では、イオはいつからこのような天体になったのだろうか。

 

イオの外側の2大衛星による軌道共鳴​

 科学者たちはこれまで、イオがたどってきた歴史についてはほとんど何も知らなかったが、アメリカの科学誌『サイエンス』2024年4月18日号に発表された論文で、イオは何十億年も、ことによると太陽系が誕生して間もない45億年前からずっとこのような大規模噴火を繰り返してきたらしいと推定された。近年の研究で、土星の環が形成されたのはわずか数億年前だと示された。しかしイオの活発な火山活動は、太陽が輝き始めた頃からずっと続いてきたのだ。

 この予測は、イオと、木星の第2衛星エウロパと第3衛星ガニメデの奇妙な軌道運動から導き出された。ガニメデが木星の周りを1周するたびに、エウロパは2周し、イオは4周する。「軌道共鳴」として知られるこのリズムは、イオの公転軌道を変化させ、円ではなく楕円の軌道をとらせている。

 

楕円軌道で100メートルも球体が動いて生じる大きな潮汐過熱​

 楕円軌道をめぐるイオが木星から受ける引力は、木星に近い所ではさらに強くなり、遠い所ではやや弱くなる。そのためイオは周期的に変形していて、軌道を1周する間にその表面は約100メートルも上下している。

 この変形により大きな摩擦が生じ、恐ろしいほどの熱が発生する。「潮汐加熱」と呼ばれる現象だ。イオの内部では、この熱が大量の岩石を溶かし、おそらくマグマの海を作り出している。それにより、イオの地表で激しい噴火が起こり、地球の多くの川よりも長い溶岩の川が流れ、硫黄を多く含む溶岩が空高く噴き上げられ、地下世界への入り口のような火口が出来ていると考えられている。

 

イオから毎秒3トンもの物質が宇宙空間に逃げ出す​

 では、イオの潮汐加熱がいつ始まったのだろうか。表面からはうかがえない。イオの火山活動は非常に活発だから、表面は溶岩流で繰り返し更新されているため、古代の地質学的過程の証拠は埋もれてしまっている。

 では、科学者たちはどうしたか。カリフォルニア工科大学の惑星科学者で、今回論文の筆頭著者キャサリン・デ・クレア准教授らは、イオの大気中に含まれる火山噴出物に注目した。

 イオの火山から噴出した物質の多くは、薄い大気を通り抜けて宇宙空間に逃げ出す。失われる大気も合わせると、イオからは毎秒3トンもの物質が宇宙空間に放出されていると見積もられている。

 

硫黄の同位体比を推定​

 その結果、イオの大気中に含まれる火山噴出物は、重い同位体が多くなっているはずだ。なぜなら、大気の上層部にある軽い同位体は宇宙空間に逃げ出しやすいからだ。

 そこで、現在の大気中の火山噴出物と、原初の状態を保っている物質でそれぞれの同位体の比率を測定できれば、現在のような状態になるまでにどのくらいの時間がかかるかを計算できる。

 デ・クレア准教授らのチームは、チリのアルマ望遠鏡を使って、イオの大気中のガス、特に硫黄を含む物質を観測した。研究者らはまた、太陽系が誕生した当初の平均的な化学組成を保存している古い隕石などを利用して、イオの「本来」の同位体比も推定した。

 

本来の硫黄の95%前後が失われ、45億年かかった​

 その結果、イオは本来持っていた硫黄の94~99%を失っていることが分かった。イオを含む木星の内側の衛星の進化に関する既存のモデルと合うように、この数字を説明するには、イオの噴火がおそらく45億年前からずっと続いていると解釈するしかないという結果になった。

 同様に潮汐作用を受ける第2衛星エウロパの海も同じくらい古い可能性が考えられるという。もしエウロパの海の起源がこれほど古ければ、海中での生命進化に十分な時間があったかもしれず、今後のエウロパでの生命探査活動に期待される。


昨年の今日の日記:「函館の旅(1):北海道新幹線終着の新函館北斗駅で考えたこと」

 ウクライナ支援などの予算がアメリカ上院で23日、やっと可決されたが、「やっと」というもう1つの新法案が同日、上院で可決された。すでに下院で通過しているから、翌24日にバイデン大統領が署名して成立した。

​​ TikTok(ティックトック=下の写真の上)規制法である。この法律で、TikTokを運営するバイトダンス(字節跳動=下の写真の下)はアメリカ事業を廃止するか売却を義務づけられた。​​

 

 


規制案たびたび、そのつど生き延びてきたTikTok​

 ネットの国家支配を認めるスターリニスト中国のバイトダンスの運営するTikTokの規制については、過去何度も、本日記で書いた(23年3月20日付日記:「今度こそアウト! 動画投稿サイトTikTok、アメリカ各界からの包囲網狭まる:FBIも捜査」、22年12月27日付日記:「TikTok(ティックトック)、ユーザーの記者の個人情報を不正入手の危険:米政府機関で禁止、米国内から追放の声高まる」、20年8月20日付日記:「TikTok以前に政府から売却を命じられていたトンデモないネット企業」、及び20年8月5日付日記:「ユーザー6500万人の動画投稿サイトTikTok(ティックトック)ついにアメリカで頓挫」を参照)。

 そのタイトルを一覧しただけでも、「なぜ、また?」と思えるが、アメリカ政界の巧みなロビー活動や法廷活動で、そのつど生き延びてきた。しかし、ついに年貢の納め時がきた。


偏向した投稿内容、スターリニスト中国の意を受けてか?​

 TikTokはアメリカのみならず世界の若者に利用されているが(アメリカのTikTokユーザー数は今年1月時点で約1億5000万人)、これはスターリニスト中国の影響を受けてか、かなり偏向している。

​ ある研究者が調べたところ、ガザ戦争開始以来、イスラエルを支持する投稿より数十倍もハマス支持・イスラエル批判の投稿が多かった。スターリニスト中国を批判する香港やウイグルなどの人権問題を取り上げた投稿はほとんどなかったという。スターリニスト中国にデータが筒抜けになり、不都合な投稿は目に触れられないようにされている可能性が強い(写真=バイトダンス創業者の張一鳴)。

 

 さらに最近は、青少年のTikTok中毒が、欧米諸国でも問題視されている。EUも、青少年の過剰利用が問題視され、バイトダンスは一部のアプリの利用停止に追い込まれた。


売却かさもなければ禁止​

 成立したTikTokの新たな規制法では、何よりも運営がスターリニスト中国のバイトダンスにあることが問題視され、1年以内にバイトダンスはTikTokをスターリニスト中国以外の外部資本に売却するか、さもない場合は禁止される。

 売却せず法に違反した状態が続けば、ユーザー数に最大5000ドルをかけた額の制裁金を課される。1年という期限内に間に合わなかった場合も、最大500ドルを乗じた額の制裁金がかかる。バイトダンスがスルズルとTikTokを運営できないようにした。


法廷に訴えて規制逃れか​

 これで万歳かと言えば、バイトダンス側は言論の自由を盾に法廷に訴えて、規制法律を無効化する動きもある。あらゆる自由を抑圧するスターリニスト中国に居ながら、言論の自由もないものだが、合衆国憲法に照らすと予断はできないともされる。

 自由世界は、スターリニスト中国によるネット支配という厄介な問題を抱え込んだものだが、速やかにTikTokの「死」が実現することを願っている。


昨年の今日の日記:休載​

 

​​ アメリカ連邦議会上院は23日、ウクライナなどを支援する緊急予算案を79対19の圧倒的多数の賛成で可決した(写真)。

 


 すでに下院は20日、支援法案を可決しており、バイデン大統領が24日、法案に署名して成立した。同法は、イスラエルや台湾への軍事支援と一体で、うちウクライナ支援分は608億ドル(約9.4兆円)に及ぶ(写真=緊急支援法案成立に喜ぶ人たち)。​​

 


共和党の反対で長い間店ざらし​

 やっと、である。地面のぬかるみの終わった5月下旬にも、テロ国家ロシアはウクライナに大攻勢をかけると予測され、これに対してアメリカからの武器弾薬支援の枯渇したウクライナは、ろくに応戦できなかった。

 現状では戦力比は、テロ国家ロシアの5に対してウクライナは1という状況だった。このままでは、ウクライナの第2の都市ハルキウやその他の東部が危ないばかりか、キーウでも親ロシア派の政変で親ロ的な政権ができかねない、と危惧されていた(4月20日付日記:「今年、もしロシアがウクライナに勝ったら――想像もしたくない世界の終わりの始まりだ」を参照)。

 アメリカの支援法案が長い間店ざらしになっていたのは、トランプと共和党保守派が反対していたからだ。孤立主義の傾向が強い彼らは、テロ国家ロシアのヨーロッパ蹂躙より自国優先なのである。


トランプと共和党保守派の心変わりが事態を打開​

 だがこの支援サボタージュは前掲日記で述べたように極めて危険で、バイデン大統領が何度も共和党に対して法案の速やかな成立を呼びかけていた。

 さすがに世論の批判を受け、トランプは支援予算の一部の経済分野を返済義務のある「融資」に切り替えて共和党保守派に納得させた。

​ この3月、訪米した親ロシア派の強権的なハンガリー大統領オルバンと会談した際(写真)、トランプは「ウクライナとのロシアとの戦争に1銭も出さない」と発言して世界を憂慮させたが、心変わりをしたことは喜ばしい。​

 

 

 こうした姿勢は、下院多数派の共和党のジョンソン議長も変身させた。かつてはウクライナ支援予算に党内多数派に抗して反対票を投じたが、今回は下院共和党を支援予算賛成にまとめた。


ウクライナ防衛の装備は大幅強化へ、もはやロシアの進撃は無し​

 ともあれこの支援予算で、ウクライナは祖国防衛のために、これまで2年間、アメリカから受け取った軍事援助よりずっと多い額の支援を受け取る。

​ 早ければ週内にも、ドイツとポーランドに待機していた武器がウクライナに送られる。ウクライナはすでに撃ち尽くした携帯型の対戦車ミサイル「ジャベリン」や地対空ミサイル「スティンガー」、射程300キロの長射程地対地ミサイル「ATACMS」(写真)は少し遅れる。​

 

 

 しかしこれらがウクライナに到着すれば、テロ国家ロシアの進撃は大きく阻害される。特にATACMSの配備で、ロシアの黒海艦隊は機能停止に追い込まれるだろう。

 アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、ロシアのこれ以上の進撃は困難になったと見ている。


昨年の今日の日記:休載​

 

​ 22日、かねてより予約した熱海に行く。江戸時代の1806年創業という古屋旅館(写真)に宿を取っていたが、あいにく天気に恵まれず、アウトドアは諦めた。​

 


世界救世教教祖にして芸術家の岡田茂吉の開いた美術館​

 昔、高度成長期は熱海は東京からの社員旅行のメッカで、今も温泉浴場以外、ほとんど楽しめるものがない。箱根なら金時山を登れるし、湯河原なら幕山や南郷山がある。

 その代わりになるエンタテインメントが、MOA美術館だ。

 熱海駅に着くと、すぐタクシーに乗り、駅からも遠望できるMOA美術館に行く。この美術館にはいつか行きたいと思っていながら、今まで果たせなかった。

 世界救世教の教祖にして芸術家の岡田茂吉が創設した。

​ 着くと、相模湾が一望できる所にエントランスがある(写真)。美術館は山の中腹に掘り抜かれて設計されているようだ。​

 


館内デザインは粋​

​​ チケットを買って中に入ると、正面に上に行く、青い幻想的な光で満ちた長いエスカレーターがある(下の写真の上)。すぐに行き着くと思ったら、さらにまたエスカレーター。それを5、6段上る。途中、天上を様々な色彩図案を投影する円形ホールが設けられている(下の写真の下)。​​

 

 

 

 それで行き着いた先に展示場があり、そこまでのデザインはなかなか粋である。


『富嶽三十六景』全46図を初めて観る​

​ ちょうど葛飾北斎の『富嶽三十六景』の展示をしていた(写真)。​

 

 

​​ 版画とはいえ、全46図を観るのは初めて。それどころか有名な『神奈川沖浪裏』も『凱風快晴』だって、ナマの版画は見たことがない。大いに興味を惹かれて鑑賞した(写真から『神奈川沖浪裏』、『凱風快晴』、『東海道程ケ谷』)。​​

 

 

 

 

 展示品を遮るガラスは、まるで無いがごとくで全く曇りがない。うっかりするとおでこをぶつけそうだ。しかも明るくて広い。人の肩越しに観ることは全くなかった。しかも撮影は禁止されていない。

 アメリカの美術館は、通常、ガラス壁が無い。そんな感じで、ほとんど違和感がなく、鑑賞できた。

 その他の日本画も、焼き物も、ほとんど大家の作品ばかりで、収集した岡田茂吉の熱意が並々ならぬことを実感できる。


ロビーからの眺めは絶景​

​ 途中のロビーから、ガラス窓を通して相模湾が展望できた(写真)。あいにく曇天だったが、うっすらと初島も望める。見通しが良いと、房総半島まで望めるらしい。​

 

 

​ 1階からは外に出て、茶の庭も散策できる(写真)。ここで、庭園を観ながら抹茶と甘味をいただいた。​

 

 

 

 

 私設美術館だけに入館料は公設美術館の倍近いが、清潔で広々としていて、開館して以来、半世紀近くたつのに古さを感じさせない。

 ゆったりと楽しめる美術館で、再訪をしたいと思える所だった。


昨年の今日の日記:休載​