7.トガリネズミ | 手稲山・発寒川からの手紙

手稲山・発寒川からの手紙

北海道の野生動物や自然の状況についてなど手書きの絵などによって詳しくお伝えします。

 本州に分布しているモグラは北海道には生息していません。そのかわり、モグラと近縁で生活型の似たトガリネズミの4種がすんでいます。それは、エゾトガリ・オオアシトガリ・ヒメトガリ・チビトガリです。トガリネズミは、“ネズミ”と呼ばれていますがネズミの仲間ではありません。体型は似ていますが、口先が尖った食虫目に属する国内で最も小型の哺乳動物です。これらトガリネズミは、地中にトンネルを掘って暮らし、ミミズやムカデなどの土壌動物や昆虫を捕食しており、昼間は地上に姿を見せません。

 北海道に生息する4種のうち体が一番大きいのはオオアシトガリで15gほどの体重がありますが、希少種のチビトガリはハガキの重さほどの2gほどしかありません。エゾトガリを除く3種のトガリネズミは、北海道以北の千島列島・サハリン・朝鮮半島・ロシアにも分布しています。

 10年ほど前に、私は十勝平野のカラマツ防風林で、“幻のトガリネズミ”といわれているチビトガリ2頭を生きたまま、地面に埋めた紙コップに落ちる昆虫を調べているときに発見して、専門家に見てもらいました。その研究者は「チビトガリは、本州にはすんでいないのにむかしは“トウキョウトガリネズミ”と呼ばれていた。これは、イギリスの自然史博物館に、イギリス人のハワードが北海道で100年ほど前に採集した本種の標本が保管されているが、このラベルに採集地を(蝦夷=えぞ)と記されている。この英語の綴り(EZO)が(EDO)に誤記されて伝えられたため(東京トガリネズミ)の和名登録がなされたのではないか」と。



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