前回は飲食店のマネジメントに関する経営者側の観点の内容でしたが、今回は原価率高騰に対する全体的な考察をしてみたいと思います。
原材料の高騰というのは今に始まったことではなく、実際にこの数十年の間、ずっと上がり続けていると思います。
食材だけでなく電気、ガス、石油なども上がっていますし、食材を作るためのコストも上がっているわけで、原材料の高騰が続くのは当たり前ですよね。
前回の記事で自分は
今後の飲食店の原価率の高騰は避けられない
と書きました。
これには原材料自体の高騰だけでなく、様々な理由があると思っています。
また、原価率を抑えようとしても商品自体の値上げだけでは厳しい状況になっていき、原価率が高騰した状況のまま、「企業努力」という都合のいい言葉でその高騰した状態で飲食店は事業をしていかなければならないと思っています。
ではなぜ原価率の高騰を避けられないのかという点について、今回は考察してみようと思います。
①原材料や光熱費の高騰の割合に対する食品、料理の値上げの価値観が追い付かない
これは飲食店だけでなく「食」を扱う事業の方全てに当てはまるかもしれません。
今年に入って多くのメーカーが食品類の値上げを実施することは多くの方が知っていると思います。
ラーメン店はもちろん、今年に入ってから値上げの実施をした飲食店も多くあると思います。
しかし、実際にその値上げ幅は原材料自体の高騰、電気、ガス、水道、ガソリン、送料、消耗品などの高騰などを考慮すると、その値上げ幅では対応出来ないぐらいの状況になっています。
ラーメンに関する食材費や光熱費だけでいえば、20年前から比べるとざっと1.5倍以上にはなっています。それ以外の経費コストも色々上がっています。
ラーメン1杯の価値観も20年前に比べれば上がってはいますが、もし当時の価値観が1杯700円だとしたら、1.5倍にした場合1杯1050円の価値観になってないといけないのです。
しかし、ラーメン1杯1000円の時代がまだまだ来るとは思えません。
なので現実的に一気に100円以上の値上げが出来るお店もほとんどありません。
もちろん、他の料理、食品についても同じです。いきなり1.5倍の値上げが出来るわけがありません。
ただ普通に考えたら当たり前なんです。原材料は上がっていても給与所得が日本はほとんど上がっていないわけですから…
要は本来の食材費や光熱費などの高騰に対する値上げ幅は企業努力で事業者側が我慢している状況です。これは食を扱う事業者のほとんどがそういう状況ではないでしょうか。
よって事業者の利益も少なくなる。そのために給与所得を増やしたくても増やせない…という負のサイクルが続いてしまうわけですね…
そして、この状況がすぐに変わるとは思えません。なので、食を提供する事業者は今後も原価率の高騰には企業努力という無理を強いられていかなければならないわけです。
②美味しい食品、料理が増えたことで多くの人が「本物」を知ってしまった
これも自分は原材料の高騰に追いつけない一つの理由だと思っています。
20年前と今では飲食店で提供される料理はもちろん、コンビニやスーパーで買える惣菜、冷凍食品、レトルト食品などのクオリティは格段に上がりました。
それにより、以前に比べると多くの人の「舌が肥えた」と思います。
今はSNSはもちろん、食に関する情報が多くあり、美味しいモノを知って、食べに行くことが容易に出来ます。
さらに大手チェーン店などの商品クオリティも格段に上がり、現在では手作り、手仕込みの個人店の味のクオリティとも変わらないチェーン店が世の中に溢れています。
これはもちろん食に関わる事業者が努力、研鑽してきた結果であり、少しでも美味しいモノを提供しようという日本人の誇るべき形だと自分は思っています。気軽に美味しいモノが食べられるようになったわけですから。
自身が20代のときに食べていた「食」も、今と変わらぬクオリティの商品は沢山ありましたが、そういう商品を作る、食べるためにはお金、時間、手間などがかかりました。
日本の「食」という文化は当時から世界一だと思いますし、食に魅了された一人の人間として、日本の料理人の凄さをずっと体感しています。
しかし、20代の学生が毎日美味しいモノを食べるには金銭的にも世の中的には厳しい時代でした。
ですが、今では安価に美味しいモノを気軽に食すことが出来ます。スマホがあれば美味しいお店を簡単に探すことも出来ます。
そして、チェーン店、コンビニ、レトルト食品なども含めて当時の商品と今の商品では雲泥の差があるぐらいに自分は思っています。
それぐらい日本の「食」は進化したし、当時は「食」に対して「これでいい」ぐらいに感じていた人も多かったはず
そう、現在は老若男女問わず多くの人が「美味しい」と感じる「本物」の「食」を普段から食べることが出来るわけで、その舌も肥えていくのは必然です。
しかし、その「本物」を作るためには「お金」「時間」「手間」がかかります。
そう、現在はそれらの「商品クオリティ」を落として原価率を下げることは出来ないし、絶対的な「美味しい」と感じさせる基準を落とすことは出来ないのです。
要は
一般ユーザーに「美味しい」と感じてもらうためには「原価」をかけなければならない
という時代になっているわけです。
食材の品質、食材の量などコストカットした商品で飲食店は営業していくことは困難な時代です。小手先の商品はもう通用しません。
もちろん、一部の業態、ジャンル、料理人の技術などでクオリティを落とすことなく安い原価率で提供し続けることが出来る場合もあります。
しかし、多くの事業者は美味しいモノを作り続けるためにまだまだ努力していかなければならないわけです。
もちろん、これは食を愛する人間としては嬉しいことですが、事業者側としてはその「美味しい」商品を作るために企業努力している分を上乗せ出来ないという状況になっているわけですね。
「美味しい」と思わせるための商品づくりに現在は様々な要素が必要になっていて、それはまだまだ進行中ということです。
③「味」「満足度」の差別化による集客が出来るようになった
飲食店の販売戦略として、以前は「味」よりも別のポイントに重点を置くことが多かったと思います。
コンセプト、ファサード、広告、ネーミング、ブランディング…
様々な「味以外」での要素やマーケティングに力を入れることで、差別化をすることが出来ましたし、それによって売上アップや繁盛に繋げることが出来ました。
ほとんどの飲食店コンサルが「売るために必要なのは味ではない」なんて言ってた時代があったと思います…
ただ、これらの要素は今も絶対的に必要な要素ですし、軽視なんてできないし、販売戦略においてとても重要です。
しかし、飲食店の集客、販売戦略においてここ最近は
商品力
そのものの強さが非常に大きくなっています。
昔と違うのはSNS、口コミサイトなどの浸透によって「商品力」の強さが広がるスピードやそれによる差別化できるようになり、極端に言えば
味と満足度だけで集客出来る
時代にもなっています。
前述のように現代のユーザーは美味しい、本物の料理を多くの人が体感する機会が増えたことで、その中でも「味」「満足度」「話題性」の高い商品は、それだけで話題になります。
もちろん、それだけで集客出来るわけではないですし、美味しいモノを作っただけで人気店になれるとは限りません。
何を言いたいかというと
「美味しい」「満足度の高い」商品を提供しなければお客様は来ない
ということです。
以前はある程度の商品力でも差別化出来たことが、現代においては商品力は常に高水準でなければ、飲食店経営のスタートラインにも立てないというわけです。
ということは、今後飲食店を経営していくために商品力のクオリティは落とせないし、むしろ向上させていかなければならないわけで、原価率を落とすことはほぼ出来ないとなるわけですね。
今までの飲食店の「美味しいは当たり前」という基準値がさらに上がっている、今後も上がり続けていくということです。
美味しく満足度の高い商品を作るにはコストをかけなければならない。それ以外の販売戦略的な小手先よりも、まず商品ありきの時代になってきているというわけです。
特にその商品クオリティだけで差別化出来ていた個人経営のお店などは今後さらに厳しくなっていくのではないでしょうか。
今回はネガティブな内容ばかりになっていますが、この状況から脱却するには食に携わる事業者の企業努力しかありませんし、厳しい時代は目の前にあります。
前回書いたような原価率高騰に対応していくための対策や準備は必要になると思います。原価率高騰は避けられないわけですから、別の視点でコストを抑えていかないとなりません。
しかし、これは今までの日本の「食」という文化が異常だったのかもしれません。
あの手間暇をかけたラーメンを700円やそこらで食べれていたんだなあ…と作っているからこそわかるし、今までの飲食店の数も多すぎたのかもしれないし、安く気軽に食べられるお店が多すぎたのかもしれません。
ユーザー側から事業者側の立場になって色々と考えることはあります。このコロナ禍になって色々な状況変化もあります。
それでもやっぱり日本の「食」は世界一だし、日本のラーメンは世界一の麺料理だし、まだまだ進化しているわけで、美味しいモノが増えていくことは「食」に魅了された一人の人間として嬉しい状況なのかもしれません。
その中で事業者側の立場になってサポート出来ること、少しでも変えていけることがあればを今後もやり続けていければと思っています。
原価率高騰でお悩みの方はいつでもご相談ください♪
…という、いつもの営業的な挨拶で今回のコラム終わりw
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