ダルデンヌ兄弟を彷彿「夜明けまでバス停で」2022(16) | Mの映画カフェ♪

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映画の感想など



2022年 日本
監督 高橋伴明
脚本 梶原阿貴
主演 板谷由夏(未知子)、大西礼芳(店長)、三浦貴大(マネージャー)、ルビー・モレノ、筒井真理子、根岸季衣、柄本明、下元
史郎、松浦祐也 他

2020年に渋谷区幡ヶ谷のバス停で起きた事件に基づく、
フィクションです。

事件が他人事とは思えなかったのと、
板谷由夏さんが主演ということで観ました。

重い作品と覚悟していましたが
話は淡々と着々と進み、ちょっと笑えるところもあり
観る人によって響くポイントは色々ありそう。
何より、主張が強すぎず自己満足に終わっていないところが、映画として良かった。

事件は未知子に起きたかも知れないし、私に起きたかも知れない

自分だけは安全な場所にいるという思い込みは、脆い。

ちょっとダルデンヌ兄弟を彷彿とさせる脚本が良いですね
監督と主演が決まっていたところに、事件現場にも足を運んだ脚本の梶原阿貴さんが提案して作られた作品だそうです。

新しい働き方、自由な働き方として導入された派遣社員、契約社員といったさまざまな非正規雇用
実際は雇用の調整弁であり企業にとっては都合の良い存在。いらなくなったら切る前提です

騙されないように損をしないように
強気で自分を売り込むことができなければ転落する、嫌な社会になりました。学歴や職歴も絶対ではない

この映画でも「店長」は「社員様」だから、とパート(アルバイト?)の間で囁やきあう場面があります。

それでも未知子の存在を気にかけてくれる人がいたことが、救い。

実際の事件では加害者も保釈中に亡くなったんですよね。被害者も加害者も、どちらも助けることは出来なかったのか

時折挟まれるニュース映像が、時の流れを感じさせ
自助、共助、公助という言葉が冷たく聞こえる。
福祉を後回しにする日本はやはり二流三流の国家でしょう。

最悪なマネージャーを演じた三浦貴大さん
父親と同じく、味のある脇役になりそう。もっと活躍して欲しいですね

板谷由夏さんは「家庭教師のトラコ」でなぜか食堂のおばちゃんがハマリ役で
この人こんなに上手いんだとビックリした。そのあと雑誌eclatで美女オーラがすごいモデル姿を見て、さらに好きになりました。


(2022年10月13日 新宿 K"s cinema)