(ネタバレあり)シン・ゴジラ感想 | ムッシュ速報(Theムッシュビ♂ト公式ブログ)

*本テキストは、友人(文中「◯◯◯」)から送られた感想テキストに呼応して殴り書きしたものを転載しています。

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見終わった後、僕は一緒に観に行った友人と無言で握手し、その直後どちらともなく「ありがとう庵野秀明」と言葉に出した。

幼少期に「ゴジラ」「ガメラ」「ウルトラシリーズ」と、怪獣特撮の洗礼を受けた僕だが、その後、成人以降僕を心から満足させてくれる怪獣特撮には出会えなかった。

同じ庵野監督の「エヴァンゲリオン」シリーズは勿論大好きだ。が、「エヴァ」には巨大特撮のエッセンスはしっかりあるがアニメ作品だし、「ゴジラ・ファイナルウォーズ」は「惜しい!」と思ったし(怪獣より人間アクションが多いとか、ヘドラが一瞬しか出てないとか)、「クローバーフィールド」「パシフィック・リム」「ゴジラ(2014)」は日本の作品ではない。

というか、2014年のレジェンダリー版ゴジラを観た後、2015年の「ウルトラマンn/a」や「Evangelion Another Impact」を観てある種の暗澹とした気分に襲われた。「日本では、ハリウッドのハイクオリティVFX映画は作れない。作る技術はあっても予算がないから、数分のデモ映像が限界なんだ」と。

しかし、シン・ゴジラは、僕らが待望した、「怪獣が日本の街並みに、現実にいる」絵を長編映画で見せてくれた。しかも、キング・オブ・モンスター「ゴジラ」で。

怪獣が好きとは言えもういい大人であり、怪獣を怖いと思うことはなくなっていたが、シン・ゴジラは本当に心底怖いと思ったし、心底絶望した。この「絶望感」については◯◯◯氏の感想に詳しいのだが、それを裏付ける映像のリアリティが凄まじいのだ。そしてそのリアルな映像で、ゴジラは東京を完膚なきまでに焼き尽くす。あの絶望感は凄まじかった。レジェンダリー版ゴジラですら比較にならないくらい、「もうダメだ」と思った。

上映が終わってから思い返す。もしかしたら、僕らは1954年に初のゴジラを観たときのお客さんの気分を味わえているのではないか。「怖かった」「とんでもないものを見た」「見たことないものを見た」と。

追記だが、個人的に印象に残ったのが「ゴジラ第2形態」。背ビレ以外全然ゴジラに見えないし、「あれ?新怪獣?」と一瞬思ったのだが、この形態のデザインの頼りなさ、生理的な不快感、映像はリアルなのに動きがギニョールのように辿々しい。そこに一瞬だけ、自主特撮のテイストも感じたのだが、それだけに、「自主特撮のテイストも、ハリウッドも凌駕するスケール感も両方内包する」って凄いことだし、庵野監督、樋口監督が自主特撮出身ということもあって妙な感慨深さも感じたというか。

あと、無人新幹線爆弾と無人在来線爆弾。徹底的にリアリティを追求したところでこういうのが真剣極まりない山場で出てくる!ギャグにも取られ兼ねないほどの大胆な演出を真剣な場面で出すのは庵野作品ではお馴染み(エヴァ破の「緊急コース形成」とかね)なんだけど、ここでもやっぱり!と思って嬉しくて笑ってた。あと、タンクローリー群とかさ、ヒーローなんだよ。「あり物でなんとかしてる」んだって。この映画には血液凝固剤以外には人間側にオーバーテクノロジーは出てこない。自衛隊や米軍の兵器も実在するものだし、電車もクレーン車もタンクローリーも僕らのヒーローだ。いや、それどころか、コピー機が並ぶところ、カップラーメン、パイプ椅子、、、ただの仮設オフィスが人類最後の砦って良いよなって思うんだ。

あー、まとまらない。思想的なところとかゴジラが日本人のトラウマのメタファっていうのは◯◯◯さんと思うところが同じなので割愛。

あと良かったところは、ゴジラを倒したあと、万歳も大はしゃぎもしない。ゴジラの死に慎重だとも言えるけど、僕は、犠牲になった人たちを悼む気持ちが先に出てるんじゃないかと思った。多分ハリウッド映画なら、怪獣を倒したら拍手喝采だろうけどそうじゃない。

それと、この映画には悪い人やダメな人がいなかった。演出的なスケープゴートがいなかった。頼りないように見えた首相代理もフランスに頭を下げに行ってた。みんなそれぞれの立場で責任と役割を果たしていた。一人一人がヒーローだった。

賛辞しかありません。