新型コロナウイルス GoToを目の敵にする前に、、 | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

陽性者の増加を受けて、日本医師会長が陽性者増はGoToトラベルのせいだと根拠のない発言をし、

同調したように東京都医師会長もGoToの停止を訴えています。

 

それらとはまた違った生産性のある提言として私は捉えていますが、

分科会からもGoTo見直しや一部制限についての提言が昨日でました。

 

まず、昨今の陽性者増がGoToトラベルのせいだとする意見について考えてみたいと思います。

私は、短絡的に陽性者が増加したことをGoToトラベルのせいにするのはみそもくそも一緒にするようなものです。

 

何故か?

GoToキャンペーンは何もこの数週間前に始まったものではなく、

夏からずっと続いているものだからです。

 

観光客が増えているのはこの時期に限った話ではなく、夏からずっと増えていました。

現に私も夏に沖縄にいったときにはホテルはにぎわっていたし、

知人の話では10月や11月でも沖縄のリゾートホテルはにぎわっていたようです。

北海道についても同様で、冬にかけて観光客が急増したはずがありません。

 

そうすると、夏からずっと観光による人の移動はあったにも関わらず、

陽性者は冬場にかけて急増してきたということになります。

 

つまり、GoToが悪い、旅行が悪い、という要素よりもはるかに、

冬場の気温低下、乾燥という影響が大きいと考えた方が自然です。

気温が下がれば換気も減りますし、室内に多くの人が密集しがちになる。

また、環境が厳しくなることで免疫が落ち、ウイルスに感染して症状が出る人も多くなります。

乾燥によって咳や唾液からのウイルスの飛散なども増えるでしょう。

 

前回も書きましたが、

冬場で風邪が流行るという、ごく当然の結果なのです。

その結果として感染が拡大しているので、GoToなども一部感染拡大地域では制限を加えて柔軟に対応しましょうという分科会の提言は、現状に応じた至極全うな対応だと思います。

 

一方で、この時期に合わせたかのように、

「GoToがきっかけになった」 などど、これまでの政策を目の敵にするのは、冬の環境変化という最も大きな影響をあえて脇に置いた上での政府批判のための政治色が強い発言のように思えます。

 

私はこの日本医師会長の発言はミスリードだと思います。

ちなみに、日本医師会長というと日本の医師全ての代表だと勘違いしている方が多いと思いますが、

医師会というのはその大部分が開業医の医師の集まりです。

 

なぜそうなるかというと、開業する際には地域の医師会への加入が様々な理由で必要となってくるからです。

一方、たとえば新型コロナ診療や、救急の拠点となるような大病院に所属している勤務医の多くは、日本医師会に加入しておりません。

 

かくいう私も現在は所属する病院の方針で地域の医師会に加入しておりますが、大学病院や、国公立病院に勤務しているころは医師会に加入していませんでした。

個人で加入するにしてもおよそ年5万程程度の会費がかかる一方で、あまりメリットもないからです。

ちなみに、クリニックなどの単位で加入するには数百万の入会金がかかります。

 

医師会というのは医師全てが加入する会ではなく、個人開業したクリニックの医師が中心の会なのです。

大病院で一線で働いている医師の多くは加入していません。

さらに、私は医師会の会員ですが、現在の医師会長を選ぶ選挙に直接的に投票などはできていません。

日本医師会長は地方の一会員も含めた全会員の選挙で選ばれているわけでもないのです。

 

その日本医師会長が根拠に乏しい政治色の強い発言をすることは正直、疑問です。

GoToを利用して政権批判をする暇があったら、各地の重症用ベッドを増やすなどの生産的な活動をしたほうがいいでしょう。

 

少し話が医師会にそれましたが、

この時期に陽性者数が増えていることのほとんどは冬場の環境要因なのです。

 

その根拠として、寒さが厳しくなっている寒冷地で、

且つ、人口密度が高い地域を筆頭として、冬になるにつれて全国的に陽性者数が増えていることが挙げられます。

その代表が北海道、札幌でしょう。

 

同じく、GoToの観光客でにぎわっていた沖縄県はどうかというと、そんなに増えているかというと、

1日40人程度です。

 

今後も寒さが厳しくなるにつれ、人口密度の高い地域ではさらに陽性者数は増えるでしょう。

それは、風邪が冬場にはやるのは当然のごとく、GoToのあるなしに限らず増えると思います。

ただ、いくら陽性者数が増えても重症者数が抑え込まれていればよいと私は思っております。

20日時点での全国重症者数は291名となっており、冬場にしてはまだ低い水準と思います。

 

陽性者数のカウント自体は参考値程度の意味しかありません。

なぜなら、私もここ数か月で地方の診療所で100人を優に超える風邪症状患者を診ていますが、

そのうちでPCR検査を希望して受けた人は数人しかいません。

 

熱が続いたらPCRを受けようかなとおっしゃる人はいるのですが、

実際には自宅で経過を診ているだけで軽快し、その間は自己隔離をしている、というような人がほとんどです。

 

ほぼ全ての人が特に重症化することもなく数日で軽快していますが、

PCRを行っていないこれら大多数の人の中には新型コロナの人が紛れていても全然おかしくないからです。

 

つまり、

そもそも日々発表されている陽性者数自体が、実際の感染者数の一部しか表していないということです。

その数字を見て一喜一憂しても仕方がないと思いますし、

重症化リスクの高い高齢者の方々などに感染を波及させないことが最も重要ということは変わりません。

 

さて、GoToの話に戻りますが、

GoToを目の敵にして、そればかり批判している人は感染者が増える原因の本質を見落としていると思います。

 

それは彼らが実際に現在の繁華街の居酒屋や、観光地に行って現地を見ていないからだろうと思います。

家に閉じこもり、メディアの報道や同じ意見を持つSNSの投稿などばかりを見て、短絡的にGoToにばかり矛先を向けている人が多いのではないでしょうか。

 

私は学会でここ数日、紅葉で賑わう京都に出張で出かけてきました。

脳血管内治療学会の総会が同地であったからです。

自宅から電車、新幹線、地下鉄などを乗り継いで移動し、ホテルに宿泊しました。

紅葉の寺院の観光もしましたし、情報交換に、知人の医師などと少人数のみでの静かな会食もいたしました。

 

その旅を振り返ってみたときに、

感染リスクが高いと感じたのは京都での混雑時のバス移動、地下鉄移動でした。

しかし、一部人気観光地へのバスなどを除けば、そのほとんどは観光客でごった返しているからというわけではなく、

東京都内と特に変わらない公共交通機関の日常の混雑によるものです。

 

特に旅行や少人数会食そのもので大した感染リスクを感じる場面は実際にはなく、

体調を崩すこともなく無事に出張を終えています。

 

今の日本では旅行にいくのは罪悪感を感じるという雰囲気が蔓延しています。

しかし、現実には非感染者が旅行にいくことはその地域の観光業や飲食業には大きな経済的貢献がありますし、

GoToによって旅行者側も恩恵を得られるというwin-winのものです。感染せずに帰ってくれば誰に文句を言われるようなことでもありません。

 

少人数、密を避ける、といったことに配慮された旅行や会食には大したリスクはないのです。

 

一方、心配なこともありました。

繁華街を夜歩いていて、空いているところを探して何件かの居酒屋を覗きましたが、

繁盛している店では仕事帰りのスーツやシャツを着た方々を中心に賑わっていて、20人以上の職場の飲み会が開かれているような光景も見ました。

お酒が入り、密な環境で大声で皆がしゃべっているため、隣の人の声も聞こえないくらいの熱気に包まれていました。

 

実際、感染が広がるとしたらこういう場面で広がるのだろうと、誰でも容易にわかるような状況です。

こういった、配慮された旅行や会食よりも遥かに感染リスクが高い場面が日常にあるにもかかわらず、

GoToが悪いと必死に訴える人達は、視野が狭いうえに現状を把握していないのだと思います。

 

医師会長も野党議員も、それに共鳴するネット上の人々も、

GoToうんぬん言う前に、密を避けるという基本に立ち返った啓蒙活動をされた方がいいでしょう。

 

嘘だと思うなら、金曜や土曜のよるに繁華街の居酒屋やワインバーでも覗いてみればいいと思います。

 

GoToを目の敵にして全面的に停止すれば、感染リスクを伴わないように配慮した安全な旅行を楽しみたいという多くの人々の観光業や飲食業への経済的貢献に影響を与えてしまいます。

その前に、もっとあからさまに感染を拡大しうる密な飲み会が観光などとは無関係に繁華街では行われていることに目を向けるべきではないでしょうか。

 

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