昨日も書いたのだけど、稽古を外で行っている。
その稽古前。
五街道の起点である都内某所のビルの一室で、稽古に出向く準備をしていた。
準備も整い、いざ外へ向かおうとしたその瞬間。
(……さん。……さん。……まさん。……ぬまさん。)
耳元で僕を呼ぶ女性の声が聞こえた、ような気がした。
だけど、この座組で僕のことをあだ名で呼ぶ女性はいない。
では、一体誰が…??
これは、ひょっとして、
(……聞こえますか……??……今、あなたの脳内に語りかけています……。)
という、テレパシー的なやつではなかろうか。
いやいや、そんなことは起こり得ない。
あるいは。
天からのお迎えではなかろうか。
いやいや、まだまだ生きていたい。
まったく私ったら、疲れているのかしら。
そんなことを思っていたら、すぐ真横に一人の女性が僕を見て立っていた。
座組の人ではない。
はて???
一瞬の疑問の後に、瞳孔が開いた。
「あぁー!あ、あぁー!!愛ちゃん!?」
遡ること、ちょうど10年前。
シアタートラムで上演された、innerchildの『星合(ほしあい)』という作品に出演した。(今や【シンデレラおじさん】となった小手伸也さんの劇団です。)
その時の共演者の田口愛ちゃんが、そこにいた。
何故、愛ちゃんがここに??
ここは関係者しか入れない場所なのでは??
「えー!?なんでここにいるの!?」
お互いにその言葉の応酬だ。
まさかの再会に、キャーキャー言いながら手のひらをパチパチし合う。
40に片足を突っ込んでいるおじさんにもなって、キャーキャー言いながら手のひらをパチパチし合う反応が咄嗟に出てしまう自分にかなりの痛さを感じるが、出てしまったものは仕方ない。
聞けば、隣のスペースでナレーションの仕事をしているとのこと。
10年振りの再会なのに、よく気付いたなぁ。
あの頃に比べると、僕は確実に老けた。
起床時やお風呂上がりに鏡を直視できない昨今だ。
そんな自分に気付いて声をかけてくれたことが嬉しい。
いや。
何よりも嬉しいのは、変わりなく元気そうだったことだ。
僅か1分ほどの再会だったけれども、とても感慨深かった。
生きていれば、どこかでまた巡り会えるということはあるものですね。