第133回「貧乏音大生の記録…先生は神様です」 | 打楽器奏者・嶋崎雄斗のプレイヤー日記~折れない心と折れていくスティック~

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【これまでのあらすじ】

打楽器の技術を磨くべく音大に入学した嶋崎少年(当時10代)は、都内の家賃23000円(風呂なし4畳半)の家でネズミや腰痛との戦いを繰り広げていた。

頑張れ嶋崎少年!

負けるな嶋崎少年!

貧乏生活から抜け出せる、その日まで…!!(詳しくは過去の同シリーズをどうぞ。)











プロを目指すために音楽大学へ入学するという選択肢。その最大のメリットは何かと問われれば、個人的には「人間関係」だと答えるだろう。

同じ目標を持つ友達たちは、モチベーションを上げるための競争相手であると同時に、悩みを共有し励まし合う仲間となる。

先輩や後輩は、教え、教わり、模範となり、反面教師となり、様々な生き方や考え方がある事を認識させられる。

そして「音楽」を形成するにあたって一番影響の高い人間が、音楽大学には必ずいる…そう、師匠である。




大学で自分が師事した高橋美智子先生。

日本を代表するマリンバの巨匠としてはもちろん、ドラマーとしても活動をされていたという経歴を持つ先生には、もうお世話になり過ぎて頭が1ミリも上がらない(卒業後、本当に土下座をして挨拶に伺った時には大爆笑された)。

今回はそんな先生の、優しさ溢れる思い出話に花を咲かせたい。














唐突だが、風邪をひいた。

あれは確か2年生の後半…季節としては冬の頃である。

まあ、風邪くらいなんだ、と思うかもしれないが、これが貧乏学生にとっては一大事!



病院に行くか!

寝たまま待つか!



当然、寝たまま待つ。だって病院に行くお金がもったいないじゃないの…(これが腰痛の時に後悔するのだが、まだ先の話)。

しかし、暖房設備の一切ない中で布団に埋もれ続けるだけの治療法。どう考えても全然良くならない。

更に今思えばご飯をちゃんと食べていなかったのだろう。というか、ちゃんとしたご飯を食べていなかったのだろう、大学に行けるまで復活するのに1週間ほどかかってしまった。



「よっしゃあぁぁぁぁ!!治ったあぁぁぁぁぁ!!」

と練習を始めるも束の間。





今度はインフルエンザになった。

頭痛がひどく(死ぬかと思った!)さすがに病院へ行き、約1週間の自宅謹慎を強要される。

さて、この時点で大学に2週間以上行けていない。


もちろん治ったが…なんと!









すぐにまた風邪をひいた。

もうほぼ1ヵ月の寝たきり状態…という事は週に1度のレッスンに、4回も顔を出していないという事になる。


もちろん同級生などから先生に「体調不良で休みます」という事は伝えてもらっているのだが、4回も連続で病欠する生徒を先生はどう思うだろうか…!



サボっていると思われないだろうか!!

僕の事、嫌いになったりしないだろうか!!

もうあの笑顔で話しかけてくれる事はないのではないだろうかぁぁぁぁぁぁぁうわぁぁぁぁぁん!!!
・°・(ノД`)・°・







そんな風邪プラス被害妄想と闘いながら、布団を汗と涙で濡らしていたところに、同級生で同じ高橋先生門下のSくんが訪ねて来た。

S「ゆーとさん(俺の事ね)、大丈夫っすかwこれ、お見舞いです!(彼は同級生だけど歳が1つ下で未だに俺に敬語を使う)


飲み物や栄養ドリンクを買ってきてくれたSくん!

持つべきものは友達だぁ!!。゚(T^T)゚。


S「あと、これ、高橋先生から渡して来てくれって…」

なに!先生だとぅ!


Sくんから渡された封筒を開けると、そこには!











まさかの現金が入っていた!!!(◎_◎;)

いやもちろん大金ではない、念のため…。




S「これで少しは栄養のあるもの食べなさい、だそうです」

おおぉぉ!

なんという優しさ!

先生疑ってごめんなさい!

でも…

俺「でもさぁ、これさすがに…」













2人『使えないよねぇ!w』









そんなわけで、しばらくの間は家の壁に、先生からいただいた封筒を飾っておいた。

まるで神様が宿ったかのような、不思議な神々しさが4畳半を満たしてくれた事は言うまでもない。

先生、おかげさまで僕は元気に演奏家をしています(;´Д`A



さて、この話を思い出すと今でも頭の片隅に浮かぶ懸念がある。














あの時のお金、そろそろ出世払いでお返しした方が良いだろうか…?



つづく。