「ユーティシア、君は本当に、」
君の優しい微笑みに、言葉が止まる。
「いいのよ。これで、いいの」
嘘だと感じた。直感だ。それは、自分に言い聞かせる言葉。
俺は、この城にきてからずっと。ずっと君だけを見てきたんだ。
だから、わかる。
「フォルローグの、みんなの幸せのためですもの」
違うよ、ユーティシア。それは、絶対に違う。君が、幸せでないのなら、誰も幸せじゃない。
少なくとも俺だけは、はっきりと言いきれる。君のいない世界なんて、幸せなんかじゃない。
幸せなんかじゃないんだよ、ユーティシア。
「カーツ、ありがとう」
ユーティシアのあたたかい手が、固く握られた俺の手をやさしく撫でた。
「私の代わりに泣いてくれて」
ユーティシア、謝らないで。
無力な僕が君の為に出来る事なんて、これくらいだから。
だから、もう少しだけ。この涙が乾いてしまうまでは、どうか傍にいてよ。
「ありがとう」
鐘の音が、無情にも朝を告げる。
「さぁ、支度をしなきゃ」
「ユーティシア!」
彼女は、もう振り返らなかった。
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ユーティシアは、強い姫です。
国の運命を受け入れる事の出来る姫です。
でも、どこかで自分の未来をあきらめている気がします。
神託が下った日に全てをあきらめて、自分の感情すら、
捨ててしまったのかもしれません。
カーツは、弱い庭師です。
本質を隠したくて、強がったり見栄を張ったりします。
でも、自分の信念だけは曲げません。
大好きなユーティシアの為なら、命だって喜んで差し出すでしょう。
その行為が、ユーティシアを悲しませるとわかっているから、実行はしませんが。
私が城を観た時、神託の日と言いながら城のみんなが妙に落ち着いている気がして
しかたなかったんですよね。
きっと神託の日から城の皆は、ユーティシアの愛した日常を続ける事に決めてたんじゃないかと
想像します。
でも、その答えに違和感を覚えながら、淡々と仕事なんかできませんよカーツ君は!(多分)
なので、カーツ君は積極的にユーティシアを神託から解放する為に
走り回っていたんじゃないでしょうか?999日間ずっと。
それでも、結局方法が見つからなくて、悔しくて悔しくて仕方なくなって泣けばいい。
と妄想しながら書いた小話でした。
カーツの情けない泣き顔が見たいのは、私だけでしょうか。
参加2回目に、ENDギリギリに姫様に話しかけて「ごめんなさい、もう支度をしなければ」って
言われて泣きたくなった体験をしたからかな。
それでは。