【WAR→P】あるお話【二次創作】 | もものすけの気ままなブログ

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千葉県木更津のご当地ヒーロー『鳳神ヤツルギ』のエンディングダンスが、大好きな人達が集まって作った【ヤツルギダンス部】の部長だったり、ご当地ヒーローに会いたかったりするおなごのブログです。

こんにちば。もものすけです。
WAR→Pの公演が終わってから、あの感覚を空気をどうしたら伝えられるのか。
ワクワクする気持ちをどう表現したらいいのか。
自分の中のWAR→Pをどう消化したらいいのか。
考えた結果、二次創作でお話を作りました。
最後まで読んでいただけたら、嬉しいです。


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『異世界の王国に夜明けを取り戻す勇者募集。
 魔王により夜に閉ざされた王国を救いたい。
 異世界での冒険に臆する事の無い勇気ある者を待つ。
 我こそと思う者は、次の安息日、太陽が空の一番高いところで輝く時。
 キョウ国アッサムブラーシュ広場に来られたし。
 報酬は、1,000,000,000 Pなり。』

 酒場や掲示板に貼られた依頼は、瞬く間に冒険者達の噂になった。未知の世界での冒険という好奇心をこれでもかとくすぐられる内容に、目が飛び出てしまうような報酬の金額。
 誰もが、魔王を倒し世界を救う勇者となる未来を夢想し、心を躍らせた。危険など、彼等にとっては当たり前の事で髪の毛の先ほども気にならない物なのだ。
 その証拠に、安息日を迎えた広場は、冒険者達で埋め尽くされた。
「うっわぁ、いっぱいだぁ」
 シファは、思いきり背伸びをして隙間から前を覗こうとするが、見えるのはたくましい背中ばかりだ。後からやってきた二人もその多さに驚き、目を丸くした。
「本当だ、こんなにいたら僕達が依頼を達成するなんて無理だろうな……」
 情けない顔で弱音を吐き出すウィルの肩を、大きな掌が叩く。
「何事もやってみなくちゃ、わからない」
 ウィルが見上げると、ヒーロの燃えるような赤い瞳が自分を見つめていた。
「だろ?」
 真剣な声に、ウィルは小さく笑って頷く。
「ヒーロ、肩貸してっ!」
 背伸びをしても無駄だとあきらめたのか、シファはヒーロの答えも聞かずに正面から肩をめがけて飛び上がる。
 ヒーロも心得たもので、よろける事もなくシファの足を肩で受け止める。シファは器用にくるりと向きを変えると、広場を見渡した。
 自分達の入ってきた入り口の反対側には、白い石造りの立派な噴水があり、その傍に見慣れた髭面の大男を見つけた。豪快な笑顔で談笑している様子に、シファは頬を膨らませる。
「あーあ、やっぱりバルデス達も来てるよ」
 途中で自分達を追い越して行った、あのにやけた髭面を思い浮かべ、シファはどんどんと足を踏み鳴らした。
「あの髭野郎が邪魔しなきゃ、もっと早く着いたのにぃぃい!!!」
「まぁ、順番などたわいもない事だ」
 ヒーロは肩を踏みつけられているにもかかわらず平気な顔でのんびりと言った。
「これだけの冒険者が集まっていても、本当に依頼を達成できるかどうかは分らないからな」
「え、うそ!!そうなの?」
 先ほどヒーロの言葉に励まされて意気込んでいたウィルは、驚いてヒーロの顔を見上げた。
「だって、さっき、やってみなくちゃって!」
「そうだ。何ごとも最後までわからぬ。だから、私達はやれる事を精一杯やらねばならぬのだ」
 ヒーロは、にっこりと笑っていつものセリフを吐き出した。
「この美しい世界の為に」
 ウィルの表情が一瞬で凍りつく。嫌な予感がした。
「ヒーロ、確認なんだけど……」
 恐る恐るウィルは、ヒーロに尋ねる。
「この依頼の報酬を貰えたら、どうするつもり?」
「ウィル、報酬など受け取れなかろう」
 ヒーロは、厳しい顔で首を横に振った。
「夜明けのこなかった間に、国はきっと荒れてるはずだ。報酬など受け取る事は出来ない」
 きっぱりと言い切ったヒーロをみて、ウィルは目眩を覚えた。今の今まで高額報酬の依頼に浮かれ、ヒーロの金銭に関する価値観を忘れていた自分が情けない。
 いや、むしろなぜ自分は気づかなかったのだろうか。やっと借金返済の為に動いてくれたと思ってしまったのだろうか。どうしてヒーロの頭の中に報酬を受け取るという選択肢があると思い込んでしまったのだろうか。
 頭を抱えたウィルの上から、シファの声が降ってくる。
「ウィル、ヒーロにとっちゃ報酬なんてオマケのオマケみたいなもんだって言ったでしょ~?」
 肩の上でしゃがんで、シファは半分言い聞かせるように言った。
「だいたいこれだけの人数もいるんだし、報酬には期待しないのが、一番だよ」
 ウィルのひっそりとたてていた計画は、がらがらと音をたてて崩れ落ちていく。借金返済も、新しい杖も、大きすぎるローブの仕立て直しも、夢のまた夢だ。
「おやぁ~?」
 突然高くねっとりとした声が聞こえ、一瞬でシファの眉間に山脈ができる。
 声と共に近づいてきた甲高い靴音に視線を向けると、薔薇色の髪をかき上げる細身の男の姿があった。
「これはこれは、自由戦士のヒーロさんではありませんか~」
「おお!キーン殿、お久しぶりですな」
 友好的な笑顔のヒーロとは反対に、シファは思いっきり嫌そうな顔でそっぽを向いた。反対にウィルは、初対面の男の顔をまじまじと観察する。キーンと呼ばれた男は、俳優顔負けの美男で、この場にいるのが少し場違いな印象だ。悲劇の戦士の役でもやれば、さぞ女の子にモテるだろう。
「こちらは?」
「魔法使いのウィルだ。種蒔きの季節から一緒に旅をしている」
 キーンの品定めをするような目つきに、ウィルの背筋に緊張が走る。
「あ、はっ、はじめまして!」
「初めまして」
 にっこりと微笑み、キーンは左手を差し出した。それに合わせてウィルも手を出した瞬間、ナイフが二人の間を飛んだ。
「え……?」
 一瞬の出来事に、ウィルの動きが止まる。
 ナイフは、キーンの爪先を掠め、石畳の隙間に突き刺さった。だが、キーンは顔色一つ変えずナイフを取り上げる。
「ねぇ、やめてくんない?」
 いつもまんまるなシファの茶色の瞳が、鋭くキーンを睨みつける。
「アンタのそういうとこが、大っ嫌いなんだよね」
「さすが盗賊ですね~、目敏い事で」
 キーンは、ニヤニヤと嫌味な笑顔を浮かべ、ウィルに見える様に左手を開いて見せた。
 見せられた左手の中で、小さな針がキラリと光った。
 ようやくシファのナイフの意味を理解して、ウィルの背筋にゾクリと悪寒が走る。
「こんなのはただの痺れ薬ですから、死にはしませんよ」
「ど、どうして……?」
「ライバルは少ない方がいいでしょう?」
 ウィルの疑問にあっさりとそう言い残して、キーンは三人に背を向ける。
「では、また」
 颯爽と人混みの中に消える背中から、ウィルは目が離せなかった。
「ヒーロ!!あんな奴に挨拶とか、マジでいらないし!!!ナイフ返さないし!!!」
 短い金色の髪を逆立てて、シファは怒鳴り散らした。その手は、しっかりヒーロの黒髪を握りしめている。
「まぁまぁ、落ち着け、シファ」
 髪をむしられてしまいそうな勢いで引っ張られてもなお、この男は笑っていた。頭上で騒ぐシファをなだめ、ヒーロはやさしくウィルの肩を叩く。
「驚いたろう?すまなかった」
「い、いえ……」
 冒険をする者が、ヒーロみたいな人間ばかりではない事を学んでいたとはいえ、あまりにも直接的な攻撃に動揺が隠せない。この場にいる人間全て、彼のような人間なのかもしれないとウィルの頭の中で嫌な想像が膨らむ。
「彼は、いつもああやって試したがるんだ」
「試す?」
「そうだ。相手の力量を知っていれば、協力すべき相手かどうか見分けやすくなるからな」
 シファは、怒鳴ってすっきりしたのか、溜息を吐き出した。
「ま、それもそうなんだけどさ~」
 確かによく考えれば、三人でどうにかなりそうな依頼内容ではない。場合によっては、他の冒険者達と協力が必要になるだろうし、他の冒険者達だってそのつもりだろう。
 協力が必要になった時、事前に相手の力量がわかっていれば、誰と協力すればいいかわかりやすい。そう考えてみれば、彼のやり方は少し問題はあるが、判断力や観察力を試すには効果的とも言える。
「あ、そろそろ始まるみたいだよ」
 シファは、また立ち上がり噴水の方に視線を向ける。
 冒険者達の影が北の方向に長く伸びて、太陽が一番高いところへ来た事を告げる。
 約束の時間だ。
「諸君!!」
 声が広場にこだまする。
 キーーンという甲高いノイズの混ざった声は、どこか満足そうだ。
「よく集まってくれた。感謝する」
 噴水にある彫像の上に立つその人物は、真紅のベールで顔を隠し、白い円錐の筒を口に当てて喋っている。
「君達にこれから行ってもらうのは、フォルローグ王国」
 少年にも少女にも聞こえる不思議な声を、冒険者達は黙って聞いていた。
「私からの依頼は、王国に下った神託の本当の意味を解き、夜明けを取り戻す事」
 突然、噴水が赤く光り始めた。一気に緊張感と期待が高まる。何か強大なものに飲み込まれるような感覚に、冒険者達は息を呑んだ。
「覚悟の無い人達は、今のうちに広場から出て欲しい」
 依頼主の言葉を聞いても、誰も動こうとしなかった。その様子を見て、赤いベールの人物は嬉しそうな笑顔になる。
「それでは、早速ゲートを開こうか」
 赤い水は、じわじわと這う様にして噴水の後ろの壁面を真っ赤に染めた。
「ゲート、オープン!!」
 赤いベールの人物の声に合わせて真っ赤な壁が動き出し、あっという声をあげる間もなく、次々と冒険者達を飲み込んでいった。そして、広場にいた全員を飲み込んでしまうと、跡形もなく消えた。
 ひしめき合っていた冒険者達の姿は、もう広場のどこにも無い。
 全てを見ていた屋根の上の猫は、眠そうにニャアと鳴いた。



 壁の向こう側は、真っ白な場所だった。太陽の光もランプもないのに、とても明るい。
 自分達が本当に異世界に連れていかれる実感がやっと湧いてきたのか、冒険者達の心が不安に揺れる。
「ゲートをくぐる間に、フォルローグ王国の話をしよう」
 赤いベールの人物は、噴水の上にいた時と同じ場所に座っている。いや、浮いているというのが正しいのかもしれない。
「あ、先に自己紹介しよっか。私の名前は、ネルメル。よろしくね」
 明るい声と単調な喋り方で、ネルメルは続けた。
「じゃあ、早速本題。フォルローグ王国は、魔王復活の予兆で夜明けが来なくなってしまった」
 部屋が急に暗くなる。
「夜明けが来なくなってからしばらくして、フォルローグへ神託が降る」
 闇の中に、二人の少女のシルエットが白く浮かび上がる。
「千日後の月喰いの夜、姫を魔王の花嫁とすべし。さすれば夜明けの鍵は開かれる」
 二人の少女が交錯し、姿を鍵へと変化させた。高度な幻灯だと、ヒーロは感心しきりだ。
「神託の言葉の本当の意味が解らないまま、フォルローグ王国の夜明けの為に姫は魔王に嫁ごうとしている」
 鍵が光へと姿を変え、部屋は元の明るさに戻る。
「月喰いの夜まで時間がない。君達には、その神託の本当の意味を見つけて欲しい。そうすれば、きっと王国の夜明けは取り戻せる」
「ネルメルさんよぉ、話は解った。そんで報酬は神託の本当に意味を見つけた奴が総取りって事でいいのか?」
 野太い声に、ネルメルは頷く。冒険者達の間から、おおぉと感嘆の声が響いた。
「複数いれば、公平に分けさせてもらうからね」
 ネルメルが指を鳴らすと、白い空間にドアが二つ現れる。
「一つは、城に続く扉。もう一つは、街に続く扉。好きな方から進んでくれ」
 冒険者達は、それぞれのドアの前に歩き出す。
「ヒーロとウィルは、お城でそのお姫様の話とか聴いてきてよ」
 シファは、ヒーロの肩から降りて準備運動を始めた。
「シファは?」
「僕は、街で色々調べる」
 お城って苦手だしと笑うシファの瞳は、好奇心でキラキラと輝いていた。
「それにヒーロは、まずお姫様にご挨拶しないと気がすまないでしょ?」
「もちろんだ」
 少し偉そうに言い切るヒーロを見て、ウィルとシファは顔を見合わせて笑った。想像通りだ。
「そういう事だから、ウィル、ヒーロのこと頼むよ」
 ウィルは、大きく頷き、腰ひもを縛り直した。
「さぁ、扉を開くよ」
 ネルメルの声に合わせて、ゆっくりと重たくきしんだ音をさせながら、扉が開く。
「WAR→P!!」
 扉の向こうに広がる世界に、冒険者達は吸い込まれていった。


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これからヒーロ達は、フォルローグ王国を冒険をするでしょう。
彼等が、どのエンディングに辿り着くかは、わかりません。
「何事もやってみなくちゃわからない」のですから。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

それでは。