今日は、大好きなバリトン歌手加耒徹さんのリサイタルを聴きに、浜離宮朝日ホールに行ってきました。
小規模のサロンコンサートで聴く歌曲ももちろん好きだけど、ホールで聴く歌曲やオペラアリアも素晴らしいなぁ。
空間を味方にした艶やかな響きの歌声や、自然に身体が役に入り込んで表情や演技が加わったり、くるくると表情豊かに歌う加耒さんに、耳も目も釘付けでした。
ピアノの河野紘子さんの演奏は、高原の綺麗な空気のような心地良さで歌の世界の背景を支えて下さっていて素敵なことこの上なし。
プログラムは画像にも載せましたが、とにかく好きなもの聴きたいものがたくさん!CDに入っているマーラーのさすらう若人の歌が全曲聴けたのはものすごく嬉しかったな。
生演奏の魅力って、歌う表情や佇まいも体感出来ること。好きな人が結婚してしまう切なさを、憂いを湛えた眼差しで少し上を見上げつつ、歌うその姿たるや…まるで彫刻のように美しいのですよ。
(自由席でしたから、当然最前列で堪能させて頂きましたよ!あ、ちょっとサイドですけどね😎)
後半に歌われた「啄木短歌集(髙田三郎)」
これはいつか聴いたことあったな、また聴けて嬉しいなと思って調べてみたら、2017年のすみだトリフォニー小ホールでのリサイタルで聴いていました。
いのちなき砂のかなしさよさらさらと
握れば指のあいだより落つ
啄木の短歌ではこれが好きなんですが、歌としては清瀬保ニ作曲、波多野睦美さん演奏で聴き馴染んでいて、この曲はひたすら哀しい透明感が印象的です。
ところが髙田三郎作曲のこちらは、「かなしさをうたうおと」がそれほどかなしくないのですね。そこに捉えようのないかなしみが映し出される。
かなしさよ という言葉から紡がれた音楽の奥深さが、今日の演奏でより一層際立っていたと感じました。
そして啄木短歌集からもうひとつ
不来方のお城の草に寝転びて
空に吸われし十五の心
加耒さんの表情と声が、儚く揺れ動く十五の心を見事に伝えてくれて。悲しいとか感動とか単純な言葉では表せない感情に包まれて、涙が知らぬ間に押し出されてきた…。
髙田三郎作品は、先月加耒さんソロ目当てで聴きに行った「東京コールフェライン」という合唱団が「水のいのち」を演奏していて、髙田ワールドに浸ったばかりだったので、このタイミングで啄木短歌集を聴けて良かったです。
オペラアリアでは、もはや十八番?!のヘンデル「リナルド」から。コロラトゥーラバリトン(!!)健在!!
そしてマスネーの「エロディアード」からのアリア、アンコール闘牛士の歌はフランス語がなんとも色気のある響きで美しくて、最後までドキドキしっぱなしでした。
加耒さん、河野さん、お疲れ様でした。素晴らしい演奏をありがとうございました!
さて、会場に向かう前に…
お気に入りのカフェでワンボウルライスランチしてきました。サーモンといくら丼、こればっかり頼んでしまう…!!アボカドも乗ってて美味しいんですよー。
#なんだか泣けてくる のは単純に悲しみを悲しく表現された時ばかりじゃないんだな。
涙の出る瞬間って、不意に襲ってきたりするものなのね。