CDの魔法 | QOOLAND タカギ皓平 オフィシャルブログ

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この漫画がめちゃ好きだ。

本当に好きなアーティストがCDを出すことを知った時のキタ!って瞬間から、それを手に入れるまで。日常が日常じゃないようなあのワクワクを凄く的確に表してくれている。

CD以外にも、誕生日に買ってもらったゲームソフト、初めて行ったUSJ、好きなバンドのライブ。僕にも楽しみでソワソワして浮き足立った経験が沢山ある。

きっと忘れちゃいけない思い出達で、その気持ちをこの漫画が鮮明に蘇らせてくれる。




ところで今、世は音楽データ流通時代。
元を辿ればmp3プレイヤーの出現で、後にiTunesでの音楽販売が『CD』という媒体を『前時代のもの』にした。
今や音楽のデータ購入、ストリーミングで聴き放題という文化が根付きだしていて、いつでもどこでもスマートフォンがあれば聴きたい音楽が手に入る便利な時代だ。


しかし、先日それを覆す出来事が起きた。
Hi-STANDARDが16年ぶりに新譜をリリースした。それも予告は一切なく、急遽全国のCD店舗に顔を表した。更にネット上での配信はなく、店舗に足を運ばないとそれを聞くことは出来ないという。

今の時代と真逆を行くスタイル。
音楽配信が可能な時代にわざわざ不便な媒体のみを彼らは選択した。

しかし、現実に世間はこの一件に沸きに沸き、皆がCDショップへ駆け込んだ。
そして僕達は見事に最初の漫画のごとく、かつての少年時代へと逆戻りさせられたのだ。

これはもちろん、ハイスタという伝説のバンドだからこそなせる業だと思うし、彼らがやるからカッコいいというのもある。

けど、この一件を僕達アーティストは見過ごしてはいけない。



ネット記事を見ると『音楽配信へのアンチテーゼ!』みたいなことが書かれているものが幾つかあった。
けど、僕は違うと思う。

あくまで憶測の域だが、音楽配信では得ることの出来ない感動がCDには存在するからハイスタは敢えて配信を選択しなかったのだろう。


ここからはよくよくイメージして欲しいのだが、CD以外にも『実際に店舗へ足を運び購入したもの』って愛着が湧くと思う。
それらを購入する際、自ら『店舗へ足を運び』、金銭を『現金で支払い』、自らの手で『家に持って帰る』。
通販にはない作業が顧客側に課せられる。

一方通販はネット上で商品を選択し、クレジットカード情報や自宅の情報を打ち込み、購入ボタンを選択する。(振り込みのパターンもあるけど)
前者に比べると簡素で楽だ。何より家から出なくていい。

しかしこの2つ、リアリティという面では大きく差がある。リアリティとは購入した実感ということだ。


手に入れるまでの苦労が大きければ大きい程、手に入れた喜びは大きい。
極端な話、よく分かんないけどポーンと手に入った100万と、コツコツ働いて働いて働いてようやく貯まった100万円では当人の中での価値はまるで違う。そして何より後者は100万円をどのように使うかをイメージして貯蓄してきたはずだ。
それが現実になる瞬間を迎えたのは大きな喜びだろう。

CDを店舗で購入するからこそ得れる感動というのは上記のフィーリングがとても近い気がする。
配信で気軽に聞けるものは、便利な反面人間の心をドライにさせる。


これは別に音楽配信や通販を否定したいわけではない。むしろ顧客に選択の余地が増えたことは豊かになっていることでもあるので、素晴らしいことだ。


けど、ハイスタがそうはしなかったのは、CDを店舗で買って持って帰る『あの』ワクワクの魔法をリスナーに与えたかったからだと僕は思っている。そして、それを与えたかったのは他ならぬハイスタ本人がその魔法の素晴らしさを知っているからだろう。


音楽配信は決して悪ではないが、音楽がインスタントな消費財になっている現実は揺るぎない。
勿論それを上手く利用するアーティストもいるのだけど、『時代がそうなってるから』という理由で配信を余儀なくされているなら、その選択はあまりにしょうもないと思う。

アーティスト側が、リスナーに作品をどう届けて何を受け取って欲しいのかが明確であるなら、時代を逆行してでも作品にそぐう媒体を選択するべきだ。そのこだわり抜いた意思はきっとリスナーに届くと信じたい。


今回、ハイスタ自身が何を意図してたか本当のところは分からないけれど、彼らのリリースから僕は大切なものを学ばさせられた。やっぱり彼らは僕のヒーローだなあと改めて思った。